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第二話 ブライダル・ムービー①

 さて、成り行きで結婚した私だけど、一つ大きな問題があった。

 それは例えば倫理的にあーだ、法律的にこーだというのではなく…いや、それもあるにはあるんだけど、もっと身近な問題。

 具体的には、私は今登校中で、ホームルームの開始時刻は十分後に差し迫っているということ。 うーんと頭を傾ける。本来なら適当にこの少年をごまかし、さっさと行ってしまうのが吉なんだろうけど、そうすれば彼がどういう感情のブレを起こすか分かったものじゃない。

 …私が考えていると、彼が何かを言いたそうにしていた。さっきみたいに彼の顔を覗き込むと、彼は唇を動かした。

「学校、行ってしまって大丈夫ですよ。ぼく、寂しがったり泣いたりしませんから」

 …!なんて気遣いのできる子なんだろう。

 それは伴侶と言うより、親の立場からの感動のようだったけど、まぁ感動には変わりない。

「じゃ、またあとで」

 そう言ったけれど、すぐ学校に向かうのもなんだかなぁと思って、私はバッグを開けて手を突っ込んだ。小さいポケットの中に、鋭い物体がある。

 それを出し、ぱっぱっと引っ張って彼の手を開いて渡した。

 彼はそれをじっと見て、「これって」と言う。

「それ、鶴の折り紙ね。七夕で作った余り物だから、よかったら受け取って。…じゃ!」

 私は颯爽と駆け出した。うーん我ながらいいセンスじゃないか?昔見た少女漫画で、モテ女が別れ際のプレゼントを渡すシーンを見た気がする。

 これで私もモテ女だぜっと満足しかけたが、小学生にモテて満足する女子高生ってなんだよと我に返る。

 てかちょっとイタかったかな?いくら寂しがらせないためだって、鶴の折り紙…?

 通学路を走って受ける爽やかな風とは裏腹に、私の気分はどんよりしてきた。

 あーもう!自分のこういうところが嫌い!矛盾してるったらありゃしない!さっきはあんな自信満々に渡したってのにさぁ!

 なかなかひどい自己嫌悪に陥りながら道を走っていると、校門が見えた。まだ閉まってない。

 校門を駆け抜け、校舎のてっぺんに付いている時計を見る。間一髪ってとこか…と思ったら、なんとあれから2分しか経っていない。

 悩める乙女は、どうやら平常時の乙女より1.5倍の速度らしい。焦るどころか、むしろ大分余裕がある。

 はぁとため息をついて、とぼとぼ歩き昇降口に入る。

 余裕がない状況の方が、むしろ悩みについて考える時間がなくていいんだけどな…と、ふと考える。

 そういえば、あの子は学校が休みなんだろうか。ここから一番近い小学校へは、たぶん歩いて20分くらいかかると思うんだけど。

 今日は多くの学校にとって休日でも祝日でも夏休みでもない、普通の登校日では?

 ま、特別振替でもあるんだろうなぁとだけ頭の中で処理し、私は上履きを履いて教室のドアを開けた。教室は一階だし、ホントに急ぐ必要なかったなあと少し後悔。名前の通り、感情がまわりにまわる、まわるちゃんです。

 さて教室に入ると、普段通りの景色が広がっている。

 男子で固まっているグループと女子で固まっているグループ、男女ごちゃまぜのグループ。

 ベン図にできそうな光景なわけだけど、今日はどうやら一際変わった雰囲気が流れていた。

 男女ごちゃまぜのグループ…私が基本入っているグループにいる、クラスで一番目立った存在。 自他ともに認める一軍女子、蓮川みじかがこっちをニヤニヤしながら見ていた。

 何だよやんのかっ、といつもならおどけて返すかもしれない。いつもなら、それにみじかは豪快に笑うだろう。

 けれど、その表情に今日は心当たりがあった。

 あの少年。彼の告白、それを受ける私。

 もし、あれが誰かに見られていたら…?

 私は引きつった笑顔を無理やり直して、「おはよ」とだけみじかに言った。

 …まったく、JKってのはさぁ、これだから怖くて怖くてしょうがないんだ。

 と、一介のJKは思っていた。


更新遅れてスワセンシャッ!

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