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無自覚、という罪に

 次の日──別に、日は変わっていないけど──は、まったく授業に集中できなかった。

 ひたすらぼーっとして、ペンも握るだけでほとんどノートを書かなかった。先生にあてられた時は、適当にやり過ごした。

 そしたら時間はあっという間に過ぎて、気づけば放課後になった。

 まともな思考をしなければ、学校の時間ってこんなにも短いんだな、と少し驚く。いいや、むしろ考えすぎていたから、ということかも知れないけれど───それこそ考えすぎてはいけない議題。

 昇降口に立ち、靴を取る。

 だがそこで、不意に思い出す───内藤先生からの、昨日の呼び出しのことを。

 たしか、近隣住民からのクレームがあったとか。

 これはいけない、と気づいて上靴を履き戻し踵を返す───と、そこでちょうど内藤先生に出くわした。

 …いや、内藤先生かあれ?

 壁に手をつき、汗がだらだら出ている。息も切れ切れで、言葉が「ひょ、うはゃん」といった感じに致命的に崩れていた。

 私が帰ってしまうのではと心配して来たんだろうけど、まさか走ったのだろうか?そう思う程度には疲弊している様子だった。

 仕方ない…ということで、近くにあったベンチに座るよう促した。

 曰く「ひゃいあひょう」とのことだが、よくわからない。

 座ったあとも、ぜえぜえと息を激しくしている……体力なさすぎでは?

 そのうち周囲にヤジが集まり、ちょっとした騒ぎになってしまった。

 だが20分ほど経つと(経ちすぎ?)それも収まって、内藤先生もようやく話せるようになった。

 こほん、としてから彼に曰く。

「近路さん、職員室にいきましょうか」

 ……無理がありすぎる。なんだこの人は────と思ったが、彼の目の下にクマができているのを見つけた。

 よふかしでもしてしまったんだろうか───ただ、彼が意味もなく夜ふかしするような人間でないのはなんとなく察せるところ。

 だから特に追求はせず、彼の言葉に頷いた。

 その後、職員室のデスクにて……私は内藤先生に、1枚の資料を渡された。

「停学手続きについて」────え、停学?

 視線は、自然に彼の目に向かう。

 そこにある表情は、苦笑だった。

「…1日、遅れた生徒には渡す決まりなんだ。ごめん───「どういうことですか、これ」

 顔、引きつってたと思う。言葉をかぶせたし、もう焦燥という言葉では説明できないくらいの、それは────。

 すると彼は目をまん丸にした。

「ごめん、別に停学処分が下ったわけじゃない。ただ、何回も今回みたいなことが起こるとそうなる場合もある…ってだけ」

 半分、主任の悪い趣味が出てるだけだよ─────ってなんじゃそりゃ。

 主任、ヤな奴。ぜったいモテない。

 それだけの話なら、身構えることもないか……でも、ひとつ気になることがあった。

 ”今回みたいなことが何回もあると”という言葉───騒音とか、清掃の問題とかなら、何回あっても停学にはならないのでは?

 私は────何をしでかした?

 そういう疑問を口にする前に、彼から話を展開した。

「あのとき周囲にいた小学生たちが、きみにいじめられたと言っているんだ。6人で遊んでいるときに暴言を言われた、って」

「一応、これ…見覚え、ある?」

 言って、6人の児童の顔がプリントされた紙を差し出してきた。

 受け取って、ひとりひとり見ていく───どれだけ見つめたっていまいちわからなかった。

 けれど一人、なんとなく気にかかった写真があった。

 長い髪でよく見えないけど、ずいぶん顔色が悪い。今どきの小学生ってこんなものなのかな?と思ったけど、どうやらその子だけらしい。

 眉をひそめて見ていると、内藤先生が気づいたのか、コメントをくれた。

「入川くん、というらしい。会って話す機会があったんだけど───家庭の事情かな、とても疲れていそうな少年だった」

 ふうん、と私は適当に返した。


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