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5. 楽しむ異世界生活と仲間の意外な一面(前編)

 異世界に着いてから1週間。


 俺とマイは自分たちや自分たちの周りのことを知ることに専念した。自分たちの強さや能力、それに迷路になっている場所や拠点となる2人の家はもちろんのこと、大森林の生態系、ゴーレムの強さと種類などもようやく頭に入ってきたところだ。


 ちなみに、俺たちの住む場所に名前がなかったので、「ラビリスアイノス」と名付けた。迷路側をラビリンスから少し短縮して「ラビリス」、拠点側を愛の巣からそのまま「アイノス」と名付けて組み合わせたものだ。


 愛の巣も抑揚なくアイノスと淡々と言えば、恥ずかしくない不思議な感じ。


「んぅ……むにゃむにゃ……」


 俺はマイの寝顔を横目に見ながら、鳥のチュンチュンと鳴く声に気付く。


 もう朝か。


 俺とマイは2人の寝室にあるベッドの中でお互い一糸纏わぬ姿のまま抱き合っており、マイが気持ち良さそうに俺の腕を枕にしてようやく眠ってくれたばかりだ。


「寝顔に見惚れている場合じゃないな。この時間に頭の中の整理をしないと」


 俺は与えられた一人の時間をフル活用するべく、緑を基調とした弓使いのゴーレム、魔弾のリシアから聞いた内容を脳内で反芻する。


 まず、ゴーレムの種類だ。ゴーレムには未開拓の種類がまだあるらしいが、マイの女神としてのレベル、俺の指揮官レベル、ラビリス自体の強さや経験値が関係してくるようでまだ登場しない。加えて、新しい種類のゴーレムが出るときは、それと同時にリシアやエベナ、ラピスのように意志を持ったゴーレムたちが現れるとのことだ。


 その話をリシアから聞いたとき、また意志を持った美人ゴーレムが出てくるのかと期待していたら、マイに思いきり勘づかれて睨まれてしまった。


 マイよ、そのセンサー過敏すぎるんじゃないか。間違ってないけど、感度良すぎない?


「んぅ……むにゃ……私もうダメ、カイセイ……もうこれ以上は……」


「夢の中でも楽しんでいるのか……相当、俺のことを気に入ってくれたようだな」


 マイの寝言にイタズラ心が芽生えるもなんとか抑えて、リシアの説明を思い出す。


 さらにリシアの説明から、ラビリスへの侵入者は大半が魔力を求める魔物だということも分かった。


 魔物は魔力から生まれた実体を持つ概念みたいなものらしく、大量かつ良質な魔力を求めて徘徊するどの種族とも敵対する勢力のようだ。元々は魔力が一か所に集中しないように分散させるためのシステム、そのシステムにある機能の1つだったようだが、ちょっとしたバグで魔力を持つ者から魔力を奪い去る敵対概念になったとマイが女神から聞いた話で補足してくれた。


 なお、魔物の姿はさまざまな種類があり、一般的に鳥や獣などの姿をしていることも多いが、爬虫類や両生類、昆虫類などのバリエーションもある。ただし、ゾワッとするほどに異質すぎるための忌避感からか、はたまた、敵意や殺意をぶつけてくる嫌悪感からか、あらゆる種族が魔物を見れば魔物だと分かるとのこと。


 その魔物たちが女神であるマイの魔力や俺の最強の魔力を嗅ぎつけてラビリス内へと侵入してくるらしい。


 どうしてそのような話になったかというと、ラビリスの経験値は外部からの魔力の吸収量、つまり、ラビリス内で倒れた者の魔力を吸って強くなるらしいからだ。魔物は敵であり、貴重なラビリスの肥料でもある。


 ラビリスの経験値が増えるとゴーレムが増えるから、内心、弱い魔物がたくさんきてくれると安心して経験値稼ぎができるので嬉しい。


 ちなみに、魔が付くから魔人族と仲が良いかと思えば、その逆で魔力豊富な魔人族は魔物からするとごちそうに見えるとのことだ。


 という感じで話を芋づる式に覚えるほかなかった。まるで社会の世界史や地理の勉強だ。


「んふぅ……あれ? 寝ちゃった? もう朝なの?」


 マイがもう起きてしまった。


 俺たちの身体だが、俺もマイも身体の構造が変わってしまったからか、よほどの消耗がなければあまり睡眠を必要としなくなったようだ。


 まあ、相当の消耗を先ほどまで楽しんでいたわけだが。


「もう朝だな。寝ちゃったって、さっきウトウトし始めて寝たばかりだぞ?」


 なお、裸で抱き合って寝ているとおり、この1週間で、自分たちの身体の相性の良さからちょっとした性癖までしっかりと把握した。


「ねえ、まだできそう?」


 マイが妖艶で物欲しそうな表情を浮かべて、ベッドの中で手をもぞもぞと動かし始める。


 マイは四六時中、俺を求めている。初めは単純にそういったことが好きなのかと思ったが、時折俺の顔色を恐る恐るといった様子で窺うあたり、俺に何か思うところがあるようだ。


 だけど、思うところが何なのかはまだ分からない。


「朝になったらおしまいって約束だろ?」


「でも……」


 マイの目が潤み始める。


「でも、じゃない」


 俺はマイへの腕枕を止めた後に、モフモフのゴールデンレトリーバーに変身した。マイの目の色が別の輝きを放ち始める。


「あぁっ! カイセイずるいよ……モフモフになるなんて……ぎゅー」


 ……どこからかツッコミが入ろうと確実に言いたい!


 マイとのイチャイチャはもちろん最高だ!


 だけど、夜の就寝時間いっぱいのノンストップ過ぎて、睡眠時間どころか考える時間もほぼない!


 だから、終了の合図の一つとして、俺はヒト型ではないものに変身する。すると、マイの気持ちがモフモフへの飽くなき欲求へと変わる。


 モフモフへのモフりたい気持ちは性欲に勝るのである。


 そう、決して、獣の姿でマイをどうこうしようって話ではない。


 今後も多分……多分な。


「だって、止まらなくなるだろ? 初夜なんか翌朝どころか昼過ぎまでして、リシアたちに『部屋から出てこない。時折、女神さまの(うめ)き声が聞こえる。何かあったのか』って心配されて、緊急対応として、部屋凸(へやとつ)されたばかりだろ?」


 リシアたちに部屋凸された結果、マイに要求されてマイを多少乱暴に組み敷いていた俺と、呻き声ではなく(あえ)ぎ声を嬉しそうにあげていたマイが思いきり見られてしまった。


 あの時の気まずさは計り知れない。


 というか、ゴーレムも感情があるようで、リシア、エベナ、ラピスの3人が顔を真っ赤にして速攻で退出していった。


 その様子にちょっとだけ興奮してしまったので、俺も大概な性癖のようだと自覚する。


「そうだけど……」


「分かった、分かった。今は終わりだけど、また夜にいろいろと試そうな。さて、起きるぞ」


 いろいろと試す中で、俺の【超変身】が全身じゃなくて、ある程度の部位ごとに組み替えられることも分かった。端的に言えば、キメラとかキマイラと呼ばれるようなさまざまな複合体、合成獣にもなれるようだった。しかも、何にでもなれるというのは間違いないようで、俺が前世で培ったファンタジーの知識でいろいろなものに変身してみた。


 だから、まあ、自尊心のためにも、あそこをちょーっとだけ大きくしたよね。いやいや、結果的に、それでマイが喜んでくれているんだから何の問題もないな。


 あとは、一部をスライムにしてみたり、触手にしてみたり、18禁同人誌のようなこともして、めっちゃ楽しかった。もちろん、マイも喜んでいた。多分、普通のには戻れないんじゃないかな。


「もう……カイセイのバカぁ」


 マイが頬を赤らめつつ納得したと判断して、俺はマイの抱擁(ほうよう)からするりと抜け出す。マイをベッドに寝かせたまま、俺は俺でゴールデンレトリーバー姿のままに部屋の外に出てみた。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 すると、扉近くの壁で聞き耳を立てていたリシア、エベナ、ラピスの3人の目と俺の目がばっちりと合った。

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