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【完結】幼馴染と異世界転生ライフ! ~幼馴染はヤンデレ女神で、俺は女神専用の最強ペットで~  作者: 茉莉多 真遊人


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15. 命ずる最強ペットと遂行するゴーレム(後編)

 俺のシンプルな命令に、3人の顔がさらに眩しく明るい笑顔になる。


 嬉しそうで何より。


「御意」

「御意!」

「御意♪」


 その言葉とともに3人が頭を垂れ、再び頭を上げた瞬間、3人からゾクリとする雰囲気が立ち込めてきた。


 笑みが消え、真顔で舌なめずりをする3人からは、狩人(かりゅうど)のような威圧感を覚える。


 3人が散る。


 いつもはエベナとラピスがペアで動くのだが、今回はそれぞれが敵へと向かっていく。


「殺さないように戦棍だっ! おらああああっ!」


 まず先行したのは、破壊のエベナだ。いつもの両手持ちの戦斧ではなく、刃のない片手持ちの戦棍をどこからか2本取り出して、左右両方の手に持って振り回し始める。狙うは防御力が高くて遠距離攻撃を防ぎきるフルプレートで全身を覆っている戦士たちだ。


 エベナは3人ほどを相手に大立ち回りを披露する。


 フルプレートに大盾は重量的にきつかったのか、戦士たちは少し大きめのラウンドシールドを左手に装備して、右手にはショートソードを持っていた。


 戦士たちはエベナの振り回してきた戦棍をラウンドシールドでしっかりと受け止める。


「くっ……なんてパワーだ」


「しかし、自ら囲まれに来るとはな!」


「女の格好で油断させようとしても無駄だ!」


 戦士たちがそれぞれ右手に持つショートソードを振るが、エベナはまるで舞を踊るかのように前後左右から迫る斬撃を(かわ)していく。


 そのお返しとばかりに、エベナは戦士たちの右手を目掛けて戦棍を振って、ショートソードを叩き落としていく。戦士たちがとっさに拾おうとするも、エベナの戦棍がそれを許さず、戦士たちは盾を使って猛攻を防ぐことで精一杯になっていた。


「この姿は敵を油断させるためじゃない! おらああああっ!」


 エベナのポニーテイルが楽しそうに激しく揺れ、エベナ自身もこの大立ち回りを楽しんでいるようで先ほどの真顔から再び笑みをこぼしていた。


「ぐっ! ぐっ! ぐっ!」


「なんてパワーだ」


 エベナが敵の鎧にどんどんと戦棍を打ちつけていく。刃物ではなく鈍器のため、その衝撃は鎧をも通り、相手の身体を徐々に戦闘不能へと仕上げる。


「強度もパワーも足りないなあ! その重い鎧、着こなせてないぞ! ボアインパクト!」


 エベナが大きく踏み込んで、2本の戦棍をフルプレートの鎧目掛けて素早く突き出す。技の名前の通り、まるでイノシシが突っ込んでいくような様相だ。


「ぐうっ!」


 エベナのボアインパクトに捉えられた戦士はその威力を受けきることができずに「く」の字に身体を曲げ始める。


「はあああああはっはっはっはっ! 吹っ飛べえええええっ!」


「がふっ!」


 ボアインパクトを受けた戦士の1人とそれに巻き込まれたもう1人の戦士が吹き飛ばされて、木に激しく打ちつけられた。


 よくよく見ると、ボアインパクトを受けた鎧は穴が空く直前じゃないかと思うくらいに凹んでいる。


 さすがは破壊のエベナだ。


 ところで、相手の戦士はたしかに死んではいないようだが……あれ、後で脱げるのか?


 技を受けずに残った戦士はフルプレートでその顔を隠しているものの、エベナの恐ろしさに顔面蒼白になっているに違いなかった。


「この姿はそこにいらっしゃるカイ様の好みだ! それ以上でもそれ以下でもない! この身体はカイ様のものだ!」


 まだ倒していない残りの戦士に向かって高らかに宣言する。


 うん、高らかに敵にそれを言うの、やめて? 結構シリアス寄りだったと思うんだけど、なんか急に雰囲気変わるから。俺が腕を組んでまじまじとエベナの戦いっぷりを見ていた理由が変わる感じもするし。


 ふと、その近くで立ち回っていたラピスに気付いて、そちらへと視線を移した。ラピスの方は軽装鎧姿の戦士を2人相手に立ち回っている。


 戦士たちの戦棍がラピスを力任せに叩いており、先ほどのエベナと逆の立場である。


 しかし、ラピスは戦棍の衝撃を受け流すように盾を駆使しており、特に疲れたり衝撃に痺れたりしている様子もない。


「ははは! 小柄で武器も持たず、防御しているだけで勝てると思っているのか?」


 そう、敵が言うようにラピスは武器を持っていない防御重視のゴーレムだ。いくら受け流すことに長けていたとしても、ただひたすら守っているだけだと埒が明かないのではないかと心配になってしまう。


 しかし、当のラピスは余裕そうだ。大盾を構えて、ぐっと体勢を低くし始める。


「じゃあ、いくよ♪ ラージシールドラッシュ!」


 防戦一方だったラピスが一転、大盾を前に構えて敵へと猛突進をする。


 避けきれなかった軽装鎧の戦士たち2人まとめてどころか、周りにいた数人も併せて巻き込むように突進するラピスを相手に、その全員が大盾に押されながらガリガリガリと足で地面を削っていく。


 その姿はまるで暴走列車だ。


「なっ……なんてパワー……この人数で押し負け……ぬううううっ!」


「踏ん張りが足りないよ! ほらほら、突撃っ!」


「ぐおおおおおっ! がはあっ!」


 持ちこたえようと必死になっていた全員が耐えきれずにまとめて宙へと吹き飛ばされていった。打ち上げられた戦士たちはまともに着地することもできずに地面へと激突して失神する。


 さすがは堅牢のラピスだな。


「盾でも攻撃に転じられるって分かったかな? それと、小柄で童顔なのはカイ様の好みだから♪ この身体はカイ様のものだよ♪」


 うん、人をド直球のロリコンみたいに伝えるのやめてくれる? 違うから……俺、そうじゃないから! キャラクターのバリエーション的な意味で、そういうのがいてもいいなって思っているだけだから!


 ラピスの方も見られなくなったので、俺はリシアを目で探す。


 いた。


「ぎゃっ!」

「ぐっ!」

「がっ!」


 リシアはスリングショットで拳大の石コロを発射し、正確に敵の急所……金的を決めている。


 俺に襲い掛かろうとしていた軽装の戦士や詠唱途中の魔法使いが為すすべなく泡を吹いて倒れてうずくまっていた。つまり、俺の周りに股間に手を当てて倒れている者たちが死屍累々といった様子で存在しているわけだ。


 うわあ……痛そう……これには敵にも同情を禁じ得ない。


 あと、種族の繁栄に支障きたさないだろうか。


 あの衝撃で潰れてないか? 潰れていないとして使えるのだろうか?


「…………」


「リシア!」


 暗殺者風の全身真っ黒な姿の男が無言でリシアの背後から攻撃を仕掛ける。俺が叫ぶよりも前にリシアはその攻撃に気付いていたようで巧く避ける。


 さらに、リシアはくるっと反転して、暗殺者風の男と真正面から対峙する。


 俺の目にはぎょっとする暗殺者風の男の目が見えた。


「ブリッツシュート!」


「がっ!?」


 リシアのかっこいい名前の蹴り技が正確に金的を決めている。


 なんでそんなに金的に拘っているの? なんか男に恨みでもあるの?


 リシア、怖いな。俺も気を付けないと……。


「この身体はカイ様に選んでいただいた至高のもの。故にこの身体に触れていい殿方はカイ様だけです。そして、私たちゴーレムはカイ様が女神さまとできないことをするための愛人たちなのです!」


「ぶふっ!」


 うん、誰もリシアにそんなこと聞いてないよね? その上で誤解を生むからやめてもらえますか?


 俺、マイ一筋だから。誘惑するようなことを言うのはやめてほしい。マイ一筋なんだけど、もし弱っている時にそう言われると流されそうだから本当にやめてほしい。


 その後、見る見るうちに倒れていく敵とともに暴露されていく俺の性癖や誤解を含む表現。


 あれ? 俺、羞恥心を試されているの?


 俺、メンタルは最強じゃないと思うんだよ。


 すべてが終わって、リシア、ラピス、エベナが満面の笑みで俺の前に跪く。


「カイ様、楽しんでいただけたでしょうか?」


「え?」


 え? 楽しむ要素あった?


「あの……カイ様が暴走されないように楽しい雰囲気を、と思ったのですが」


 そうか。リシアたちなりに俺が怒りに染まりきらないようにあえてギャグ風にしてくれていたのか。


 ……リシアにとって、金的ってギャグなのか?


「あぁ、なるほど。だから、か。気を遣わせたようですまない。その気持ちは嬉しいよ。だが、思ってもいないことまで言って笑いを取りにいかなくてもいいぞ?」


「???」

「???」

「???」


 あ、別に思ってもいないことや誇張表現じゃなくて、思っていたことをちょっと面白く言っていたのね。


 うん、ゴーレムが俺に用意された愛人とか俺のためのものとか、マイが許すわけないだろ。


 いろいろと大丈夫か、この世界。


 いや、最初からダメか、この世界。


「……さて、敵は蹴散らせたようだな。先へ進むぞ」


「御意」

「御意!」

「御意♪」


 俺はもうちょっときちんと線引きしないとなと心に誓って、リシアたちとともにマイがいる最奥へと向かうのだった。

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