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【完結】幼馴染と異世界転生ライフ! ~幼馴染はヤンデレ女神で、俺は女神専用の最強ペットで~  作者: 茉莉多 真遊人


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9. 広がる領土と現れる行商人(前編)

 あれから2週間。つまり、俺とマイがこの世界に転生して約1か月経つ。


「プレゼント、何がいいかなあ……ギガスタンプ!」


「GISYAAAAA!」


 緑地化した場所から少し出た荒野側で吹き荒ぶ風に煽られながら、俺は猛り狂うワイルドワームの方をほぼ見ないようにして、足を車よりも太く大きくして遥か上空からワイルドワームを踏みつけるように急降下した。


 ワイルドワームはほかの個体と変わらない悲鳴を上げて緑の血だまりを作る。


 ワイルドワームにはどうやら縄張りがあるようで、一度に数体も現れず、別の個体の縄張りまで移動するか、個体がいないことに気付いた別個体が縄張りを広げに来ない限り出くわすことがない。


 まあ、それに気付いてからは個体の縄張りを割とすぐに緑地化していくため、突如現れることも少なくなった。


 いや、ワイルドワームの生態をそんなに知りたいわけじゃないが……。


 俺は足に付いた血をぶんぶんと足を振って払いつつ、ワイルドワームの死がいを適当なところへ放る。


「あー、プレゼント、何がいいかなあ……」


 俺は次に荒野の乾燥した土を掘り起こして、そこにスライムや苔などの保水力を上げる材料を加えてから、思いきり土を混ぜ混ぜする。


 ぼーっと、混ぜ混ぜする。とにかく、作業のことを考えずに混ぜ混ぜする。


 若干、上の空の理由、俺の目下の悩み、それはマイへのプレゼントだ。


 女の子は記念日が好きだから、転生1か月記念に何かプレゼントしてあげたいな、と思いつつ、黙々と「無心でワイルドワーム討伐」と「保水力UPで荒野の土壌改善」と「【豊穣を約束する両足(ブレスドソール)】による荒野の緑地化」の3工程を延々と繰り返していた。


 前の世界では、延々とルーチンワークをこなしていた時期もあったから、これくらいの工程を回すくらいなら達成感もあるので何の苦もない。


 そう、達成感。荒野の緑地化については、当初の予定の半分ほどまで進めて順調も順調。つまり、荒野の1/4が既に緑地化できていることになる。


 ワイルドワームも想定どおり、緑地化した場所にはやはり近づいてこないようなので、徐々に移住者も増えて、簡易的な住居が開拓最前線近くまで並ぶようになってきた。


 さらに嬉しい変化は、肉食獣人もここにきて「畜産をしよう」という機運が高まってきていることだ。草食動物も若干増えている上に、草食獣人との交流も以前よりも増えたことがきっかけだと思っている。


 そこで、畜産などはヒト族や魔人族が得意であることから、肉食獣人がヒト族に教えを請うようになってきて、交流内容も以前の「ただの交易品のやり取り」から変わってきているようだ。


 やはり、コミュニケーションは進歩や進化を促してくれる。異文化コミュニケーション万歳である。


 もちろん、マイや俺から、ヒト族への要請として交渉をしたこともある。だから、ヒト族にも今度何かお返しをしないといけないな。こうやって、俺とマイは世界と徐々に関わりつつあった。


「カイ様!」

「カイ様!」


 土を混ぜ終えて、【豊穣を約束する両足(ブレスドソール)】を使う前に少し休憩していると、緑地化した場所の遠くの方から声が聞こえてきた。


「ん?」


 そちらを見てみると草食獣人のかわいらしい子どもたちが手を振って近寄ってきてくれている。


 最初は大人も子どもも俺の異形の姿に怯えている様子もあったが、大人獣人たちと話したりワイルドワームを一撃で粉砕したりしたこともあって、最近だと「話せる強い人」という認識を持ってくれたようだ。


 若干、尊敬してくれている感があるのも嬉しい。


 ウサギの獣人の子どもとリスの獣人の子どもがキャイキャイと高めの声でキャッキャしながら近寄ってくれるとアニマルセラピー的な癒しを受けているように感じる。


 純粋にかわいいなあ。動物っぽいのって、やっぱいいよなあ。


 ……まあ、マイには俺がその役目を持っているんだけどな。


 昨夜はソファで寝転がっていると真っ白なメインクーンにさせられて、仕方なく猫っぽくツンとした表情でマイに近寄ったり離れたりしたら、マイから「カイセイ、こっち来て! あぁ、来てくれない! ちょっとワガママな猫ちゃんカイセイも好きーっ!」と感激された。


 どういう心境だ? と思っていたら、最後には捕まったし、さらには元の姿に強制的に戻されてベッドでイチャイチャし始めた。


 まあ、猫ってツンデレ感あるよな。マイってギャップ萌えとかするのかな?


 ちなみに、マイはその日によって、俺になってほしい動物が変わるらしく、従順な犬の方が若干割合高い感じだ。近くでべったりしているくらいにしたいが、どうも前の世界で犬にペロペロされたい人生だったようで「ワンちゃんカイセイに顔をペロペロされたーい!」と叫ばれることもある。というか、しょっちゅう言われる。


 まあ、根気負けしてペロペロしたよ。


 ものすごい嬉しそうにするから、これ大丈夫かってくらいにものすごくペロペロしちゃうよね。


 でもな、だいたい、ペロペロなら普段の俺が夜に散々マイの全身を……おっと、このモノローグでもこの内容はいけないな。自重。


 うん、普段からベッドの上では、パートナーのような、ペットのような立ち位置だ。


 閑話休題。


「カイ様! こんにちは!」

「カイ様! こんにちは!」


「こんにちは」


 元気でいい挨拶だ。笑顔も満点でかわいらしい。


 よく見てみると、リスの獣人はリスっぽく、ウサギの獣人はヒトっぽかった。


 最近知ったことだが、獣人にも大きく2種類いるのだ。


 1つは動物が2足歩行になったような動物寄りのタイプ「ベスティアファシエス」、もう1つはヒト型に動物の要素が加わったようなヒト寄りのタイプ「フォルマフマナス」だ。


 つまり、ウサギの獣人だと、鳥獣戯画のウサギのようなタイプもいれば、喩えが正しいかはともかくバニーガールのようにヒトにウサ耳やウサしっぽ、場合によってはウサ手足になっているタイプもいる。だから、厳密には2種類ではないし、グラデーション的に違いがあるものの、ざっくりと大別しているわけだ。


 ベスティアファシエスとフォルマフマナスでは、食べ物の嗜好性や魔力や身体能力の違いに若干の差が出るようだが、ほかの種族と比べれば、この2つの差は誤差のようなものだ。


 まあ、それに、この名称や区別に意味は特にないようで、覚えなくてもいいかもしれない。獣人たちよりもほかの種族がそう勝手に分けている節もあるようだからなおさらだ。


 行き過ぎた区別は意図せず差別への引き金になりうる。


 ……俺は細かく区別されすぎた世界があまり好きじゃない。


「カイ様! これをどうぞ!」

「カイ様! これをどうぞ!」


 示し合わせたかのように2人の声はぴったりと重なっている。普段から仲が良さそうな雰囲気でほっこりしてしまう。


 それで、2人の手から差し出されたのはアクセサリだった。


 かっこいい。


 象牙か鹿の角か、動物の何かでできたような加工品が紐に括られて輪っかのようになっていて、長さからして腕輪や足輪というよりも首飾りに近い気がする。


「これは首飾りかな?」


 俺がそう訊ねると、2人はぶんぶんと首を縦に振って朗らかな笑顔で綺麗で大きな前歯を見せてくれる。


 太陽のように眩しい笑顔。


 守らなければいけない未来へと繋がる宝物。


「せーの、私たちのためにがんばってくれてありがとうございます!」

「せーの、私たちのためにがんばってくれてありがとうございます!」


 今まで息ピッタリなのに、お礼はきちんと絶対に合わせる意気込みが強くて、「せーの」でタイミングを合わしている。


 そういうのかわいいよな。


 こんなところで、子ども特有の友だちと一緒にお礼を言うという場面に立ち会えた。


 前の世界だったら、ただの会社員で朝から晩まで会社に籠るような独身には、きっとこんなことはされることもなかっただろう。


 誰かの役に立てているという実感がこんなにも嬉しかったことはない。


「……こちらこそ、素敵なプレゼントをありがとう」


 涙腺が緩くなりそうだ。いや、確実に緩くなっている。


 尊い。子どもが欲しい。


「つけてみてもらってもいいですか?」

「つけてみてもらってもいいですか?」


「あ、あぁ、じゃあ、さっそく」


 俺は言われるがまま首元にもらった首飾りをつけてみた。鋭い部分が丸く削られていて、勾玉(まがたま)のようになった牙や角は等間隔で配置されていて身体へ刺さることもなく、(なめ)らかな肌触りはいつまでも手でいじっていたくなるくらいに気持ちいい。


 ちょっとジャラジャラと音が立つのもなんだかアクセサリを付けている実感ができていいな。


 まあ、首輪じゃなあ……チョーカーと言い換えても、なんかペット感しかないし。


「かっこいい!」

「かっこいい!」


 子どものキラキラした真っ直ぐな目で「かっこいい」と言われると、なんだか大人にそう言われるより気恥ずかしいのはなんでだろうか。おそらく大人だとお世辞だと聞こえるからかもしれないけど、子どもからは素直な感想をもらえていると思えるからかも。


 ……あ、そうだ。


 俺もマイへのプレゼントでこれを作ろう。


「ありがとう。ところで、私もこれをプレゼントしたい人がいるんだ。作り方を教えてくれないか?」


 2人は少し困ったような顔をして互いに見つめ合ってから、少し申し訳なさそうな様子でおずおずと答える。


「いいけど、材料がないよー」

「いいけど、材料がないよー」


 そうか。材料がないか。良い案だと思ったんだけどな。


「そっかあ……」


 というか、じゃあ、この子たちはなけなしの材料を俺へのプレゼントにしてくれたのか。


 ますます尊さを感じるぞ……。この恩は必ず返さないと。


「材料なら揃えられますよ」


 俺がその声にハッと気づいて、子どもたちのさらに奥の方へと目を向けると、自分の2倍以上に大きい茶色のカバンを背負っているヒト族の男がいた。

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