FIRABELFIA (エピローグ)
「本当に完成したんだね。」
「まあ、考えてみれば当たり前じゃない。誰かがワープ装置を過去に送らないといけないんだから、私達が作ったっておかしくないでしょ。」
「まあ、そうかもしれないな。こいつが生まれた瞬間に、そうなるとは分かっていたけれども……。」
一茶はそう言って、吋の頭に手を置いた。吋は嫌がって、一茶の手を払った。私はタイムマシンの操作をしながら、その2人をニヤニヤと見つめていた。
「もう、なんだよ。いきなり呼び出されたかと思ったら、タイムマシンの実験体だなんて。
実の息子を何だと思っているんだ?
俺は切り刻んで捨てられるモルモットか?」
「まあ、そう言うな。
……お前は賢いな。そして、強い。なんでもできる。
お父さんとお母さんのいい所をこれでもかともらっている。まあ、お父さんの遺伝子の比率は少ないってことだけどな…。
だから、失敗なんてしたことがないだろう。自分が世界の中心だなんて思っていないか?
だがな、お前は絶対に失敗している。
そのことに気が付いていないんだ。一番の失敗って言うのは、自分が間違っていない、失敗していないと勘違いしていることだ。
失敗などしない人間はいない。
でもな、失敗に気が付かない。失敗に気が付かないふりをしている人がほとんどだ。
失敗に目を向けることは、辛くて、楽しいことじゃない。それでも、目を向けなきゃいけない日が来る。それは突然だ。その突然来る日までに、失敗の惰性を切らなきゃいけない。
……きっと、今言ったことは今のお前には分からないだろう。
……いや、分からない。
だから、モルモットになって、タイムマシンに乗ってくれ。」
「……分かったけど、失敗しないよ。」
一茶は普段は厳しくしかることのない父親だ。何か少し抜けているような父親。だからこそ、突然真剣な話をされて、吋はその迫力に怖気づいたのだろう。まだ吋の天狗の鼻は折れていないが、素直な返事をした。
一茶は過去に行った後にすることのリストを書いたリストを渡す。過去でワープを行う時間やC3の対処法、
そして、吋が未来人または、ワープ装置の秘密を知っていると過去の人間に悟られれば、その人間を殺していいことなどだ。
「この紙の通りに必ず従ってくれ。過去改変の心配は考えなくていいぞ。
もちろん、親殺しのパラドックスに挑んでみてもいい。
だが、2つ覚えていてくれ。10月28日19時43分という時間とゴミ箱の中に可能性はあるという言葉だ。
お前が失敗という言葉の意味を分かった時、その2つをお前に失敗を与えた人間に伝えてくれ。」
吋は不服そうな顔をしていたが、ゆっくりとタイムマシンの方へ向かっていった。結局、タイムマシンは、巨大な洗濯機になってしまった。吋を過去に送り込んだ後、ワープ装置を2つ送り込む。これで、過去に矛盾が生じないはずだ。
ワープ装置2つには、過去に見た通り、「FIRABELFIA」と書き込んでおいた。今考えれば、簡単に理解できることだ。
「FIRABELFIA」とは、僕たちのイニシャルを並び替えて、作ったものなのだ。まあ、洗濯所連盟を入れた所に、強引さはあることは否めないが……。
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F 古畑 FURUHATA
I 一茶 ISSA
R 冷子 REIKO
A 飴井 AMAI
B 泡 BUBBLE
E 越前 ETIZEN
L 洗濯所 LAUNDRY
F 連盟 FEDERATION
I 吋 INCH
A 天晶 AMAAKI
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「やるなら早くしてくれよー!」
そう急かす吋の声が聞こえてきた。
「一緒に押そうよ。」
「そうね。」
私と一茶はタイムマシンの作動ボタンに手を乗せる。そして、2人でボタンを押した。
_______私達の間違い続けて、諦め続けた惰性の日々の終わりが始まった。




