表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/70

第二章 運命は浅葱色の鱗粉とともに(7)

 ──翌朝。

 クラリスを連れて馬車で外出するフィルル。

 馬車は昨日の見合いの相手、ドグ・ラッシュの邸宅前で停まる。

 馬車のドアが開き、普段のドレス姿のフィルルと、メイド服ではなく正装のドレスに身を包んだクラリスが、馬車から降りる。


「それではクラリス、よろしく頼みますわ」


「ええぇ……。本当にわたし一人で、謝罪に行くんですかぁ?」


「謝罪が目的ではありません。わたくしが頼んだ情報を、しっかり得てくるのです。ドグはまったく好かぬ男でしたが、ラッシュ家は全国に販路を持つ豪商。わたくしが欲する情報は、とりあえずはそこにしかないのです」


「お見合いをむちゃくちゃにした謝罪を、当人抜きの使用人だけで……。その上、商売上の情報を聞き出してこいだなんて……。無茶ぶりですよぉ、お嬢様ぁ!」


「大丈夫。きょうのあなたはメイドではなく、正式なわたくしの代理人。そしてその弦の糸目は、この地では美女の証。軽く色仕掛けをすればあの男のこと、すぐに食いついてくるでしょう。うまいこと食われれば、むしろ玉の輿……クスッ♥」


「クスッ♥ じゃないですよぉ! いくら相手がイケメン金持ちでも、結婚の相手は自分で選びたいですぅ!」


「いいから行きなさいな。わたくしはわたくしで、大事な用があるのです」


「ズィルマ中うろついて、あの虫男と《《偶然》》会うつもりですね! わかってますよ!」


「偶然を必然に変える女、それがわたくし……クスッ。わたくしはこちらのルートで移動しますから、情報を得次第、馬車で追いかけてきなさい。いいですわね」


 フィルルはズィルマの中心部を記した地図を、クラリスへと手渡す。

 森林部に沿った、馬車が通れる幅の道に、フィルルの移動経路が赤いインクで引かれている。

 受け取ったクラリスは、溜め息をつきながらそれを四つ折りにし、懐に忍ばせた。


「……ちゃんと情報引き出せたら、約束通りこのドレス、わたしにくださいね!」


「このフィルル・フォーフルール、約束をたがえたことはありません。では……」


 身を翻し、森林沿いの道へと靴先を向けるフィルル。

 その腰の両脇では、鋼鉄の剣を収めた鈍色にびいろの鞘が、午前の日光を受けて輝いていた──。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ