きれいなお姉さんと病院で(全部ほんとうのこと)
5さいの時、
「大変です、おしっこがまるで血のようになっていて・・」と
幼稚園の先生が母に電話をした。
すぐ母と父が迎えに来て病院に連れていかれた、
腎臓病だった。
完全看護だったけどお母さんはおうちに帰らなかった。
1か月位入院が続いて
「一度家に帰ってお風呂に入ってくるね」とお母さんが言った。
代わりにきれいなお姉さんが病院に来てくれた。
初めて言葉を交わした。
「退屈だね・・」
「うん、退屈・・」
「探検に行こうか!」
「うん!」
2人で小児病棟を抜け出した。
誰にも捕まらないように2人で足早に廊下を歩いた。
病院の廊下は迷路の様だった。
どんどん歩いた
突然景色が変わった
とても古い病棟にでた
廊下には出前で頼んだどんぶりがあちらこちらにあった。
病室をこわごわ覗くと
おじいさんやおばあさんがぴくりとも動かずに寝ていた。
物があふれていて変なにおいがした。
すごく長く入院しているんだな・・と思った。
お姉さんが振り返って
「もう戻ろうか?」と言った
ちょっと怖くなっていた私は「うん」と言って
お姉さんの後ろについて小児病棟に戻った。
約束したわけではないけれど
私もお姉さんもこのことはひみつにした。
お母さんは帰ってきて「ありがとうね、」とお姉さんにお礼を言った。
お姉さんはすごく優しい顔をして私を見た。