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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
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64. ポーションのルーツ

今回は少し長めです。


 フオッ、フオッ、フオッ、と笑いながら室長はさてさて、と髭を撫でた。


「雑談はこれくらいにして、本題と参りましょうかなぁ」


 一瞬半眼で室長を見たアルフレッド王子は、ふっと息を吐くとにこやかな笑顔を作った。


「そうだね。話はどこまで?」

「大体の事は宰相から聞きましたなぁ。毒入りだったとは驚きました。さりとて、合点がいくこともありますな。ポーションの材料である薬草を食べて具合が悪くなる理由が不明でしたからなぁ」


 うむうむと宰相は頷く。


「全くですな。ポーションや薬草は古来より伝わるものでしたから、疑いもしませんでしたよ」

「ポーションの魔方陣はいつからあるのかな」

「詳しいことは伝わっておりませんが、廃墟の神殿跡の庭で碑文が見つかり、それがポーションの魔方陣であったと。遥か古のことです」

「廃墟の神殿か……」

「その碑文ですが、我らの先祖がその神殿跡に赴き、全文写しとりましたので、我が家には代々伝わっております。しかしながらその使われている文字は現存するどの古代文字とも違い解読は出来ておりません」


 アルフレッド王子はふむ、と拳を顎に当てた。良くわからないな、と首をかしげる。


「解読できないのによくポーションを作れたね」

「碑文には術式と思われる式と薬草の絵とそれをポーションにするまでの手順の絵が描かれていて、魔方陣もあったのです」

「なるほど」

「もともとポーションは神殿で販売されていたと聞いています。それを古の錬金術師が広く民に渡すために権利を神殿から買い取り、誰でも作れる今の形にしたのだそうです」

「なるほど。ポーションは教会でも販売をしているね。神殿から伝わったとすると、手作業かな?」

「いえ、教会のお抱え錬金術師でしょう。手作業でも作れはしますが、錬金術の方が簡単ですからな」


 そうか、とアルフレッド王子は思案する。事はポーションの販売だけでは済まなくなりそうだ。教会絡みは手続きだけでも面倒極まりない。だが、今ここには前宰相と現宰相が揃っている。これ以上の味方はないとアルフレッド王子は対面の二人を見た。

 

「今後はどうしたらいいだろうか。これほど広く伝わっているものを毒入りだと公表すれば色々と面倒なことになるかもしれない」

「そうですなぁ……」


 室長は少し思案げに魔方陣を見つめたが、顔を上げた時にはとてもにこやかに微笑んだ。


「では、公表なさらなければよろしいのでは?難癖をつけたと教会の反発は強いでしょうからなぁ。まぁ、教会が毒入りポーションを広めたと公表しても私は構わないのですがなぁ」


 宰相は少し呆れたように隣の父親を見た。


「そういえば、父上は教会と一悶着ありましたね。まだ根に持っているのですか……」


 昔のことは忘れたなぁ、と室長は良い笑顔で答える。その様子にアルフレッド王子は苦笑して流した。


 室長が宰相をしていた時のことだ。とある領地の教会と貴族が癒着しお布施をその貴族に流していた。その教会の司教は貴族の支援で領地内に次々と教会を建て、住民に高額なお布施を科した。その豊富な資金で王都の教会の上層部を抱き込み、教会本部の枢機卿になろうと画策していたのだ。あらゆる手をつくして貴族と教会の腐敗の証拠を掴んだ宰相(現室長)はそれを糾弾。教会本部を巻き込んだ大事件となった。その結果、貴族は資産没収の上国外追放処分となったが、司教は降格処分で済んだ。宰相は教会本部に不服を申し立てたが、教会本部は元司教を他国の教会へ移動させて幕を引いた。それ以来、王城と教会はあまり仲が良くなかった。


「だが、このままでは……」


 毒入りポーションが作成販売され続けることになる。事実を知って隠蔽することは出来ない、とアルフレッド王子は眉を潜めた。


 そうですなぁ、と室長は穏やかに微笑んだ。


「国としては民のためにも公表したいが、表だって教会に喧嘩を売るわけにも参りませんなぁ……」


 ふむふむ、さてさて。どうするかですが……、と室長は髭を撫で思案する。アルフレッド王子も宰相も各々思考を巡らせたが良い案は浮かばなかった。室長はそうですなぁ、と魔方陣を眺めた。


「……それならば、いっそ毒入りの公表はせずに、新しいポーションの魔方陣の開発に成功したと公表するのはどうですかなぁ?交換期間を設ければ周知も早いかと」

「……おお!確かに!妙案ですな!それならば悪戯に教会を刺激せずに済みますぞ。開発に成功したとすれば、文句も出ますまい!流石は父上!」


 喜色を浮かべて父親を称える宰相に、アルフレッド王子は、それはどういうことかな?、と宰相に首をかしげた。


「妙案?」

「はい。現在のポーションについては一切触れずに新しいポーションだけを公表するのですよ。今度のポーションは掛けても良し飲んでも良しの優れものだと。販売の値段は少し高めになるが、交換期間内に手持ちのポーションを持ってくれば無償で新しいポーションと交換できる。錬金術師は王宮で新型魔方陣の交付を受けることが出来る、とするのです」

「ああ、それは良いね。毒入りポーションを回収出来るし、新たな魔方陣を錬金術師に渡すことが出来る。なるほど、確かに妙案だ。流石だね、室長、宰相」

「「恐れ入ります(なぁ)」」


 一礼する二人に、アルフレッド王子は、だが、と懸念を口にする。


「教会はどうする?交換理由を話す必要はないだろうか?」


 そうですなぁ、と室長は考えるように三つ編みの髭を撫でた。


「いえ、その必要はないですなぁ。王宮から新型魔方陣を開発したと発令すれば、誰もが我々の開発だと思うでしょう。不服があれば直接こちらに言って来るでしょうから、その時対応を考えれば良いと思いますなぁ」

「あえて教会をつつく必要はない、か。だが、教会が何も言わずに従来の魔方陣で作り続けた時はどうする?」

「だとしても、選び買うのは民ですよ、殿下。多少値が高くとも掛けるだけで傷が治るのであれば、利便性から新しいポーションを選ぶ者は多いでしょう。何しろ掛けるだけで良いのなら、今までのように少しの怪我で一本消費しなくて済みますから。検証は必要でしょうが、従来どおりならば薬効成分は一月は持ちますので」

「まぁ、教会でも徐々にこちらの新型ポーションが普及するでしょうなぁ。何しろ魔方陣の公布は無料で受け取れますからなぁ」

「そうか」


 ほっ、と息を吐き出してアルフレッド王子は一先ずの方針が決まり安堵する。まだまだ公布には到らないが大まかな方向は決まった。煮詰めるのは各大臣や補佐官であり、この後のアルフレッド王子の仕事は最後に公布書にサインするだけである。


「ん?」


 アルフレッド王子は、ふと、もう一つ決めなければならないことに気がついた。眉根を寄せて魔方陣を見つめる。


「いかがいたしましたか、殿下」

「……希釈はどうする?ハイポーション、エクストラポーションは全くの別物らしい。ならば従来のように販売するわけにもいかないだろう。リリーが言うには、ポーションとして三種類だそうだ。三倍に薄めた物と、もう少し高い治癒力のものは半分の濃さに、このままのものは医者の処方で販売する方がいいらしい。では名前がハイポーションやエクストラポーションではおかしいだろう」

「なるほど。それはそうですな。ハイエルフ様の仰る通りにするならば新しい名前が必要でしょう」

「それに希釈しない者や、ポーションが希釈出来ると知り悪知恵を働く者がいると厄介だ。このルールが根底から覆る」


 ふむ、と室長は魔方陣を撫でた。僅かに魔力を流して読み取っていく。やがてその手は二つの紋様の上を何度か行き来した。室長は満足そうに頷く。


「ではこういうのはいかがでしょうなぁ。この魔方陣のこの部分とこの部分を変えて、元の三倍で薄めたもの、半分に薄めたもの、このまま、のポーションを作れるように三種類の魔方陣を作ります。この三種類の魔方陣を公布するというのは?作成者が希釈するのではなく、こういうポーションとして周知するのです。一般の錬金術師は三倍のと半分のもの。医師関係の錬金術師には魔法誓約書付でこのままの魔方陣を公布します」 

「混乱は起きないだろうか?」

「そうですなぁ……ハイエルフ様にお願いして、早急に本物のハイポーションとエクストラポーションを作成する必要がありますが、名前を変えたポーションが従来とは違うと誰でも一目でわかるようにしませんと、多少の混乱は起きるかもしれませんなぁ」

「わかった。それは明日、リリーに相談しよう。何か案があるかもしれない。三倍の魔方陣と半分の魔方陣は今日中に用意出来るか」

「恐らくは。ですがまずはこの魔方陣でポーションが作れるか試してみてもよろしいですかなぁ?」

「ああ、そうだね。頼む」


 では、と室長はローブの袂から薬草三つとガラス瓶に入った液体を取り出した。


「それは?」

「城の裏手に生えている薬草と井戸水を精製した純水ですな。ポーションは井戸水よりもこの純水の方が薬効成分が高いのですなぁ」

「……ああ、そういえば、リリーも言っていたね。ポーションを薄めるなら純水か、煮沸した井戸水にするようにと。井戸水をそのまま使うと薬効成分が下がるそうだ」

「流石はハイエルフ様ですな」


 室長は魔方陣の上に材料を置き、魔方陣に両手を置いて魔力を籠めた。


 ピカー!と魔方陣が強く輝き、材料が光に包まれる。光が収まると魔方陣の上にガラス瓶に入った青い液体が出来ていた。


「成功ですなぁ」


 アルフレッド王子は瓶を受けとると光に翳した。ちゃぷんと液体が揺れる。


「うん。リリーが持っていたものと同じ色に見えるね」


 栓を開け匂いを確かめるが特に何も感じなかった。ほぼ見た目も匂いも従来のポーションと同じだ。


 アルフレッド王子はテーブルに瓶を置くと視線だけで室内を見渡した。執務机、書棚と視線がゆっくり動き、扉の前で警護する騎士で止まる。

 

 ふむ、とアルフレッド王子は扉の騎士に短剣を借りた。そのままスッと手のひらを傷つける。


「っ!」


 鋭い痛みにアルフレッド王子は顔をしかめた。手のひらにじわりと血が滲む。


「「「で、殿下ぁ!?」」」


 騎士が慌てて止血しようと手巾を取り出したが、それをアルフレッド王子は首を振って止めた。


「問題ない」


 痛む手のひらにポーションを少し掛ける。傷口がみるみる塞がり、痛みもなくなった。騎士の手の手巾を受け取り血を拭い、手のひらを眺める。そこには傷一つ無い綺麗な手があった。


「これはすごいな。たったあれだけで元通りだ。痛みもない」


 感心するアルフレッド王子の対面で絶句していた宰相は、蒼白の顔を紅潮させた。


「これはすごいな、ではありませんぞ!殿下!自ら手を傷付けるなど有って成らぬことですぞ!!」

「実証は必要だろう?」

「殿下が為さることではありません!!」


 本気の叱責にアルフレッド王子は悪びれもせずに肩を竦めた。

 

「まあ、そう怒らないでくれ。次からは気を付けるよ」

「次があっては困ります!!」


 叫ぶ宰相を余所にアルフレッド王子は短剣を騎士に渡した。


「ありがとう。少し汚してしまった」

「いえ、それは構いませんが……。次に実証実験するときは我々をご指名下さい」

「それは君の仕事ではないだろう?」

「いいえ、殿下。我々の仕事は殿下を御守りすること。それは殿下御自身からもです」

「そうか……。だが、この件は内密に頼むよ」

「それは出来ません。殿下のお手を煩わせてしまったことは報告する義務があります」

「……そうか」


 報告すれば確実に罰を受けるであろう実直な騎士に、アルフレッド王子はこの騎士の清廉さを嬉しく思った。後で近衛師団長に会わねば、と予定を入れる。自分が勝手にやったことで騎士が処分されてはならない。アルフレッド王子は汚れた手巾を回収する騎士の名前を思い浮かべた。


(………………。……………ふむ。後でライルに確認しておこう。間違えては失礼だ)


 騎士から視線を戻したアルフレッド王子は自分を穏やかに見つめる室長と目があった。


「本当に、殿下は陛下に良く似ておられる。ですがなぁ、殿下。殿下の身は一つ。くれぐれも御自愛下さりませなぁ」

「そうしよう」


 簡単に頷くアルフレッド王子に、やれやれ困ったことだ、と宰相が首を振った。その軽い返事からも王子に反省はみられない。次も躊躇なく同じことをするだろう。どう諫めようか、と宰相が思案し始めた時。


 コン、コン。


 扉がノックされた。騎士との短いやり取りの後、ライルが入室してきた。そのまま扉の騎士と入れ替わる。


「遅くなりました」


 騎士服に着替え髪を整えてきたライルはテーブルに付着した血痕に気が付いた。短剣を置いたときに付いた血だ。


「何かありましたか」


 ライルの鋭い視線にアルフレッド王子は何でもないと手を振る。


「ちょっとした実証実験だ。問題ない」

「そうですか。よもや殿下自ら行った実験ではありませんよね?」

「問題ない」


 同じ言葉を繰り返す王子にライルの目が半眼する。だが、呆れたように首を振る宰相と温かく見守る室長に、何が有ったのか正確に理解したライルはビシッと音を立てて敬礼した。


「まだ実証実験は必要でしょうか」

「いや、もう終わったよ」

「では、今後必要なときは私にお声かけ下さい」

「もう終わったんだ」

「お声かけ下さい」

「いや、だから―――」

「お声かけ下さい」

「ライル」

「お声かけ、下さい」

「………………わかった。もうしない」

「了解いたしました!」


 もう一度、ビシッと敬礼するライルにアルフレッド王子はため息を付いた。五才から四年間。護衛として、剣術の師として、冒険者の先輩として、世話役として。アルフレッド王子が間違えた判断をしたときに、ライルはこうした敬礼した状態で正しい言葉を繰り返した。決して叱ったりはしない。何故ならそれが間違っているとアルフレッド王子は解っているからだ。解っていて敢えて行ったときにこの態度になる。


「フォッ、フォッ、フォッ。誠に良い騎士をお持ちですなぁ」

「そうだね。彼等は得難き存在だと思っているよ」

「それはそれは。殿下の騎士に幸あれ、ですなぁ。さてさて、殿下を煩わせたポーションの実証は終わりましたなぁ。有効性もハッキリしました。少量でこの効果は驚きですなぁ。後は希釈状態での実証と二種類の魔方陣の作成ですかなぁ」

「手伝いましょうか、父上」

「お前は公布の手続きとポーションの名前を考える仕事があるだろうて。こちらは我ら錬金研究室に任せなさい。日頃からポーションが必要な者には事欠かないからのぉ」


 作ったポーションの瓶に栓をして袂に仕舞い、魔方陣をくるくると丸めた室長は立ち上がった。


「では殿下。御前を失礼致しますなぁ」

「後はよろしく頼むよ、室長」

「では、私もこれにて」

「ああ、宰相。後は任せたよ」


 一礼する二人に頷いたアルフレッド王子は、扉から一歩脇にずれたライルに思案顔で尋ねた。


「城にはまだ女性騎士は残っているだろうか。リリーの部屋の件で頼みがあるんだが」


 扉に向かい掛けた宰相親子はピタリと足を止めた。


 うーん、とライルは思案する。


「どうでしょうか。女性陣は皆王妃殿下に付き従いましたから残っているかどうか」

「リリーの部屋の準備と警護を頼みたいのだが」

「この塔に、ですよね。ここは基本女性の出入りは禁止していましたし、侍女やメイドには頼めませんからね。後で名簿を確認してみますよ」

「そうだね。頼むよ」


 退出しかけていた宰相親子はさささっと元の位置に戻った。


「どうかしたのかい?」


 首を傾げるアルフレッド王子に、何かを期待するような瞳で宰相は尋ねた。


「こちらにっ、ハイエルフ様がっ、住まわれるのですかっ」

「違うよ」

「で、ですが今、部屋の準備と警護を話されていましたが?」

「あー……うん。そうだね」


 アルフレッド王子は言葉を濁しながら、どう説明しようか、と視線を迷わせた。リリーの件になるとこの親子は面倒臭い。アルフレッド王子は学習した。


「先ずは座ってくれないか。そう大袈裟な話ではないんだ」


 二人は大人しく座ったものの、やや前傾姿勢で目は期待に満ち溢れている。


 多少ゲンナリとした気分になったアルフレッド王子はライルを仰ぎ見たが肩を竦められただけだった。


「リリーは少し特殊らしくてね。一月に三日ほど眠りに就くことがあるらしいんだ。それでその間、警護が厳重なこの塔で眠れば良いと提案して了承してくれた。その為の部屋の準備と部屋の警護を女性騎士に頼もうと思っただけだよ」

「でしたら、部屋の準備には私の孫娘はどうでしょうか」

「お言葉ですが、宰相閣下。この塔は女性の立ち入りは禁止しております」

「だがな、ライル・カトラス。女性と言えども騎士にハイエルフ様の部屋を誂える事など出来るはずがない。ハイエルフ様のことは、錬金術師でなくては。幸い我が孫娘はセンスもあり見習い錬金術師としても腕は確かです。必ずや、ハイエルフ様に満足していただける部屋を用意しますぞ」

「リリーは眠りに来るだけだよ」

「ですが気に入って貰えれば滞在してくれるかもしれませぬぞ」


 宰相の諦めない姿勢にアルフレッド王子は嘆息した。


「知っているとは思うが……、この塔は騎士と官僚、錬金術師以外の人間は立ち入りを禁止している。特に女性や令嬢は十一歳の子供といえども立ち入り出来ない」

「ご安心を、殿下。我が孫娘は錬金術以外に興味はありませんから。殿下の婚約者の座を狙う愚か者どもとは格が違いますからなぁ。ハッハッハッ」


 高らかに笑う宰相に、そう言えばジジバカだった、とアルフレッド王子とライルは思い出した。


「だとしても、例外を作るわけにはいかないよ」

「でしたら、見習い錬金術師として出入りすれば良いですなぁ。ローブを深く羽織れば性別は分かりますまいなぁ」

「室長まで……」

「見習い錬金術師の身分証を仮発行致しましょう」

「宰相……」

「殿下。これも一重にハイエルフ様の為ですぞ。数々の御恩の一端を素晴らしい部屋でおもてなしし、御返しするときです」


 だんだんとアルフレッド王子は面倒になってきた。言い出しが宰相ならば、貴族関係で大事になったときは宰相に丸投げしてしまえば良いか、と思考を放棄する。


「…………わかった。その者に頼もう」

「「御意」」


 親子は満足そうに深々と一礼した。


「それでこの塔の何処に部屋を用意するのですか」

「この下の部屋だ」

「この下ですか?」

「そこがこの塔で二番目に警護が厳重だろう?」

「なるほど。では早速準備に入りましょう」

「いや、リリーは今日目覚めたばかりだ。次に眠りに就くのは恐らく一月後だろう。それまでに準備してくれればいい。間に合わなかったら僕の寝室を提供して、僕はここで寝ればいいから。彼女が快適に眠れるよう準備は怠りなく頼む」

「「お任せを」」


 今度こそ退出していく親子を見送り、アルフレッド王子とライルは深いため息を吐いた。









読んでいただき、ありがとうございました。

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