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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
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58. 報告…?


 と、思っていたのに。


 何故か腕を組んで渋面のギルマス(怖さ三割増し)と、頭を抱えたメアリさんがお説教モードになってる。


 何で?


 事の起こりは数十分程遡る。


「では、サブマスの件はこれで終わりね」


 メアリさんはとても爽やかな笑顔でパンッ、と手を叩いた。ギルマスがじろりと片眉を上げた。うわっ、怖っ。


「それでいいのかよ」

「被害者のリリーちゃんがいいというのならこれ以上の議論は無用よ」


 もう済んだことだもん。


「いいよー」

「ほら、リリーちゃんもそう言ってるし、後はサブマスが直接土下座して足蹴にしてもらえばいいのよ」


 しないよ?足蹴なんて。


「だな。よし、これで一先ず終わったな」


 ギルマスは両腕を伸ばして首をこきこきと鳴らした。


 怖いんだけど?


 座ってるとかったりぃんだよ、て、さあひと狩り行こうか、的な顔で言わないでぇ。何でリラックスが凶悪さ五割増しなの??


 メアリさんは全く気にせずに、にこにこ笑顔のままで話を続けた。ここに勇者がいた!んー?やっぱり猛獣使いかな?


「ええと。後は報告が有ると言っていたけれど」

「うん。依頼終わったよー」

「あら。全部完了したのかしら?」

「うん。採取依頼もオークの討伐も終わったよ」

「凄いわね。それなら少し待ってて」


 メアリさんは部屋を出て、直ぐに戻ってきた。両手であの水晶の付いた銀盤を抱えてる。


「それ!持ち運びが出来るんだね!」

「そうなの。重いけど便利でしょ?」

「うん!」


 凄いなぁ!どんな術式なのかなぁ。分解したいなぁ……。私にも再現できるかなぁ。


「な、何かしら。リリーちゃんから好奇心という名の破壊衝動を感じるわ。これって危機的状況なのかしら」


 メアリさんはぶつぶつ言いながら机に銀盤を置いて水晶に魔力を流す。あれって使用者登録かな?登録した使用者が銀盤を使えるのかな?


「さ、リリーちゃん。ギルド証貸して?」


 はっ。そうだった。今報告中だった。……終わったら貸してくれないかなぁ。あの銀盤。


 何かを悟ったのかメアリさんは駄目よ、貸せないわ、と拒否してきた。ふぬぅ。


「ほっぺ膨らませても駄目。さ、早くギルド証出して。報告出来ないわよ」


 急かされてしぶしぶギルド証を出す。ついでに採取依頼の鉱石や薬草なども机に置いた。


 メアリさんは徐に胸の谷間に手を突っ込んで依頼書を取り出した。凄い!あそこは物入れになるのね。


 ふと自分のまっ平らな胸を見下ろす。


 ………大きくなったら私にも出来るかな?


「ええと、これとこれとこれと……凄いわね。死蔵依頼が完了しているわ…。流石ね」


 銀盤にギルド証をセットして読み取る間に、メアリさんは依頼書と照らし合わせて確認していく。


「はい。確かに受領しました」


 メアリさんは依頼書にペタンペタンと完了印を押していく。


 えっ???今、襟から判子出したよね??何処から?ええ??


 メアリさんの首もとを観察していたら、ギルマスが、はぁぁ、とため息を吐いた。


「いくら観察しても分からねえぞ。メアリの収納はギルドの七不思議の一つだ」

「人聞きの悪い。ただギルド内は雑然としていて物が見つかりにくいから、必要な物を身に付けているだけ。不思議でも何でもないわ」


 七不思議!何それ!面白そう!


「ギルマス、ギルマス。後の六個は?どんな不思議??」

「うわぁ、リリーちゃんの瞳がキラキラに輝いてる」

「秘密だ。んなもん、いちいち覚えてるかよ」


 ギルマスが言い出したのにぃ。


 苦笑したメアリさんが指折り数えて教えてくれた。


「私の知る限りでは、魔法の効かないギルマス、ギルマスの部屋の怪音、夜な夜な調理室から消えるパン、真夜中に徘徊する足音、姿を見たことがないサブマス、でも決裁されるサブマスの受理印、とまあ、ギルマス以外はサブマスが引き起こしていることで、不思議でも何でもないわね」


 なぁんだ、そっかー。んー、サブマス?誰だっけ??


「それよりも、討伐依頼の確認するわね。……オーク八体か。凄いわね。全部持ち帰ったのかしら?」

「うん。ちゃんと弓で一撃で倒したからお肉に欠損はないよ」

「あら、優秀ね。それなら完品で高く買い取れるわよ」


 ふふん。やったぁ!串焼きが買えるね!


「まだ何か討伐したのかしら?ええと、ハイオーク三体……?オークジェネラル二体?!オークキング一体ですってぇ?!!!」


 メアリさんの悲鳴が響き渡った。思わず耳塞いじゃったよ。


「おいおい、またかよ」


 ギルマスが呆れたように呟いた。


 と、いうことが数十分の間にあって、最初に戻るんたけど。


 んー、何かなぁ?そんなに驚くこと?オーク討伐しただけなんだけどなぁ。


「確認よ。まずは確認。落ち着くのよ、メアリ」


 メアリさんはぶつぶつと呟いてから、起き上がった。チラリと銀盤を確認して、はぁ、ととても深いため息を吐いた。


「リリーちゃん……確認の為に聴くのだけれど、オークと間違えて討伐したのかしら。それとも解ってて挑んだの?」

「ん?オークだよね?ちょっと色の違うのや体が大きかったり、角生えてたけどオークでしょ?大丈夫。ちゃんとお肉取れるように弓で一撃で倒したよ」

 

 ちゃんとお肉の事や解体の事まで考えて討伐したよ?えへん!


「ゆ、弓で一撃……」

「……なぁ、もうこいつSランクでいんじゃね?でもって、溜まった討伐依頼させようぜ」

「気持ちは解りますが、リリーちゃんはまだ……ひ、百歳の子供ですよ?」

「いや、普通、百歳は子供って言わねぇよ」


 まだ子供だもん!


「成りは子供でもこいつの魔法はえげつないぞ。立派に老齢だ」


 ええ?!百歳は幼児だよ?お婆ちゃんじゃないよ?それに私は不老だし。……あ、人族では百年も生きられないんだっけ。


「いい?リリーちゃん。ランクは何のためにあるのか説明したわよね?倒せるからと言って高ランクに挑んじゃ駄目よ」

「高ランクかどうかわからないよ。それなら出会ったときはどうすればいいの?」

「それは逃げるか、もしくは倒せそうなら倒すのも有りだけれど」

「それなら大丈夫だね。ちゃんと倒せるから倒したよ」


 問題ないよねー。


 コツコツコツ。指で机を三回叩いたメアリさんは銀盤を操作して情報を確認した。ふう、と息を吐いて首を振る。協議が必要だわ、と呟くと、真剣な目で私を見た。


「とりあえず、しばらくはリリーちゃんの討伐依頼の受注は禁止します」


 ええ?!そんなぁ。


「ランク上げの条件が達成できないよぉ」

「今回の件で、条件はクリアしたことにして、リリーちゃんをランクアップさせます。いいですよね?ギルマス」

「だからSに上げようぜ」

「それは協議が必要ですよ」

「ったくよ、めんどくせぇなぁ」


 条件満たしてないのにランク上がっちゃうの?それってズルしたみたいで何かやだなぁ。


「そもそも何故ランクを上げるのに条件つけたのか、説明したと思うけど」

「冒険者のレベル上げ?」

「そう。冒険者を育てるためよ。AランクやSランクの魔獣を一撃で倒せる人に必要な措置ではないわね」

「そんなぁ……。楽しみにしてたのにランク上げ」


 ガックリだよぉ……。


 ガックリ項垂れたら、メアリさんが手を伸ばして頭を撫でてくれた。とても優しい手にじんわりと心も浮上する。見上げたら微笑みを浮かべたメアリさんと目が合った。メアリさんは、ふふふ、と優しい笑みを零した。


「大丈夫よ。いきなりSランクにはしないわ。でもね、リリーちゃんがランクを上げる為にどんな条件を設定したら良いのかわからないのよ。少なくとも成り立ての冒険者と同列には出来ないわ。幸い規定条件をクリアしてDランクまで上げてくれたから、条件設定もランク設定もギルド規定に違反しないし、自由に決められるわ。協議の結果が出るまでは、採取依頼かお手伝いでポイントを貯めて欲しいの」

「ポイントは貯めていいの?」

「もちろん。ポイントが貯まらないと高ランクにはなれないもの。今のリリーちゃんのポイントだとD止まりね。協議の間に沢山ポイントを貯めて欲しいわ」

「でも討伐依頼は駄目なんでしょ?」

「討伐依頼は駄目でも、採取でも高ポイント取れるでしょ?」

「う……ん……………あ、もし魔物に出会ったら?」

「まあ、その時は仕方ないわね」


 倒してもいいんだ。お肉、採ってもいいんだ。それならまた美味しい串焼きが食べられるね。

 

「いや、誰もこいつがSに成ることに反対しねえぞ」

「ギルマス、ご自分が討伐面倒臭いからと言ってこんなに小さな子に肩代わりさせるのは人としてどうかと思いますけど?」

「こいつ、俺より強いぞ、たぶん」

「………………………」


 メアリさんとギルマスに呆れたように見つめられた。


 ん?


 はてな?







読んでいただき、ありがとうございました。

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