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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
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5. 装備に大切なことは……


 ステータスも外見も普通になったし。これで冒険者になれるよね?


「よし。次は装備だな」


 まだあった!


「装備というよりお洋服ですわね」


 何故かスイの瞳がキラリと光ったように見えた。うふふふふ、と笑う姿がどこか怖い……。


「これは使えますか?」


 とフウが取り出したのは、古竜のウロコ、皮、爪、牙、角、そしてまつ毛だ。いやなんでまつ毛?フウ。何用で取っておいたの?


「あら。最高級品ですわね」


 スイはまつ毛以外の素材に触れてにんまりした。


「さあ、大賢者様。創造スキルで作って下さいませ」

「は、ハイッ」

「良いですか?コンセプトは『可愛い冒険者』ですの。皮素材の膝丈のワンピースですわ。色は薄い緑で。襟と裾に白色皮で柔らかく鞣してフリルを付けて。腰には幅広のベルトに小さな鞄を着けますわ。袖は膨らみを持たせて肘丈で。手首にはウロコから作った腕輪を着けますの。背中のボタンは牙から作りましょうか。クルミボタンが可愛らしいですわ。膝丈のブーツも要りますわね。茶色のブーツでひもにはまつ……これを」


 まつ毛が使われた!


 言われた通りに創造スキルで作っていく。明確なイメージであればあるほど細やかに造れる。スイは私の服全般を担っているのでイメージを伝えるのは上手だ。


 創造スキルは言ってしまえばイメージを具現化するものだ。創造過程は実態を伴わない光の粒子のようなもの。使う素材も光の粒子となって其々の色や形を形成する。


 造った服(まだ光の粒子)を私に重ねて、今着ている服と交換、具現化。


 お着替え終了!


「とても可愛らしいですわ」

「まあ、可愛らしい。てすがお腹を冷やさないようにタイツを履きませんと」

「そうですわね。このシルクスパイダーの糸でタイツを造って下さいませ」


 糸の束を受けとりぱぱっと造って重ねて装着、完了。


「どお?」 

「「「可愛い(ですわ、ですよ、ぞ)!」」」


 古竜の皮は頑丈だけど柔らかいのが特徴。着心地も抜群。軽いし最高だね!


「可愛いけどさ。冒険者の装備に大切なのは格好良さだろ?」

「いいえ。断然可愛さですわ」

「格好可愛いもありだと思いますが」


 一代目は防御力だと言っていたし、三代目は攻撃力だと言っていたよ。四代目は決め台詞らしいけどそれって装備?冒険者の装備に大切なのは一体…………何だろう?


 ぽんっとスイの加護が飛んできて服やブーツに付与された。


「これで汚れが付かなくなりましたわ。洗濯不要です。機能性もバッチリですわ」

「お、それなら」


 パァンとエンの加護が飛んできて服やブーツに付与された。


「これでどんな気候にも対応可能だぜ。暑さも寒さも通さないぞ」

「あらあらまあまあ」


 ふわりとフウの加護が飛んできて服やブーツに付与された。


「心地好い風が体温を調整してくれます。いつでも常春ですよ」

「わぁ!ありが―――」


 お礼を言おうとしたら、緑色の加護がふよふよ飛んできてじんわりと私を含めて付与された。


「これでぇ、緑たちはぁ道を開けるわぁ」


 戸口に現れたのは大地の精霊女王リョク(略)だ。緑色の巻き毛を腰まで伸ばし、大きな緑の瞳はいつも眠そうに半分閉じている。普段は世界樹のお世話をしてくれている。


「それでぇ?なんでぇ付与大会なのぉ?」


 リョクが眠そうにスイの隣に座るとこてんと首を傾げた。


「違いますわ。大賢者様が地上で冒険者になるというのでそのお手伝いですわ」

「外見、ステータスを変えたから、後は装備だろ?」

「昨年亡くなられた古竜の素材がありましたのでお洋服を造り我々の加護を付与いたしました」

「そっかぁ」


 うんうんと聞いていたリョクはまたもやこてんと首を傾げた。


「大賢者様。眷属はぁ?一人も連れていかないのですかぁ?」


 あー、眷属。眷属ね。眷属か……。


 誰一人として修行から戻ってないな。うん。


「誰も帰って来ないの。90年間一度も」

「「「「…………………」」」」


 うん。分かってた。分かってたけどなんか悔しい。


 生まれて十年経った頃、神様が連れてきた四人の少年逹。主人が一歳児だとわかったときの落胆は凄かった。その後修行が必要だと連れて行かれる時は嬉々としてた。


 だよね。子供の世話は嫌だよね。ちょっと悲しい。


 ―――――くすん。


「あの脳筋どもがっ」


 珍しくフウが悪態を吐いた。


「絶対に楽しんでいたぶってるぞ」

「それでしたら、私の眷属をお連れくださいな」

 

 スイの袖からするすると小さな白い蛇が出てきて、スイの掌でお辞儀した。


 きれいな翡翠の瞳。


「シアレンティルスと申します」

「し、あ………?」

「シアレンティルスです」

「……………シアレ?」

「………シアと申します」

「シアね?」


 シアはしゅるりと私の手を登り袖の上に巻き付いた。服の装飾品みたいに見える。


「この子は擬態を得意としておりますし、この子自身の眷属も多く何かとお役にたてると思いますわ」

「ありがとう!スイ。シア!よろしくね」


 なにやらごそごそ服を探っていたエンがあったあった、と手渡してきたのは大きな赤い石だ。


「アタシからはこれ。サラマンダーの心臓石。近付ければ水はお湯に変わるし氷も融かすぞ」


 それはとても便利だよね?冒険者の必需品では?


「ありがとう!」


 エンに抱き付いたらグリグリと頬擦りされた。HP減少、自動回復、満タン。


「わたくしからはこれを」


 フウが差し出したのは金色の丸い板の絵の施された金属片だ。ツヤツヤして縁には

ギザギザが付いている。


「これは…………お金というもの?」

「そうです。わたくしが地上にいたときに使用した金貨です」

「金貨?」

「これならば二、三日は暮らせるはずです」

「ありがとう、フウ」


 ベルトの鞄に魔法付与して空間収納と繋げた。貰った石とお金はここに仕舞っておく。あと持ち主登録をして私以外には使えないし、離れても戻ってくるようにした。


「私からはぁ、これを」


 数粒の種を貰った!これって!


「ハンモックの種よぉ。大賢者様欲しがってたからぁ、作ってみたわぁ。これで何処でも寝れるわねぇ。火を近づけると種に戻ってしまうから気をつけてねぇ」

「ありがとう!リョク!」

 

 ハンモックの種も鞄にしまう。


 空間収納は無限に広がる透明な引き出しにしまう感じ。一つ一つが別空間になっているから大きさも容量も関係なく入る。便利。便利。


「あ、そうそう。大賢者様は地上に行かれるのですよねぇ?」

「うん」

「では、一つ。おつかいを頼まれてくれませんかぁ?」


 おつかい。


 はてな?






読んでいただき、ありがとうございました。

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