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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
56/86

54. 精霊?

《評価》《ブックマーク登録》ありがとうございます!

とても励みになります!


これからも、大賢者をよろしくお願いいたします。


 はぁぁ、美味しかったぁ。


 ごちそうさまでした。


 食べ終わったお皿とフォークに『清潔(クリーン)』を掛けて鞄に仕舞った。


「ごちそうさま。とても美味しかったよ」


 アルとカイさんとライの食器はライが『清潔』を掛けて渡してくれた。その時にライは頭をがしがし掻きながら、旨かったぞ、とぼそりと呟いた。やっぱり食べてたんだ、と目をぱちくりしていたら、アルがクスリと微笑んだ。


 スイのタルトだもん、美味しいのは当然だよね。


 ミナちゃんの分のお皿はジェドさんが『清潔』を掛けて渡してくれた。


「美味しかったよ。すっごく美味しかった!」


 興奮気味のミナちゃんは絶賛が止まらない。うちのお店でも出せないかなあ?、と真剣に悩んでいる。


 あの味が夕飯で食べられたら……、うん。いいなぁ……。


 ちょっとよだれが垂れそう。


「はぁ、美味しかったわ。少し量が多いかと思ったけど、ぺろりと食べてしまったわ。しかも何故か疲れが取れている気がするけど」


 メアリさんも『清潔』を掛けて渡してくれた。ちなみにシアはタルトが乗っていた大皿とシアの食べ終わったお皿は『清潔』も掛けずにそのまま空間収納へ仕舞っていた。記念かな。腐らないといいけど。


「主様のタルトには栄養補給と疲労回復の効果があります。リリー様がお目覚めになると空腹と疲労で動けなくなりますので」

「あら?その口調だと、よくあることなのかしら?リリーちゃんが何日も寝るのは」

「はい。一月に三日程寝ますね」

「そんなに頻繁に?それはハイエルフ特有のものかしら」

「いえ。リリー様はハーフハイエルフですので特殊かと」

「そうなのね。ハイエルフもハーフとなると色々違うのかしら」

「そうですね。リリー様は少し特殊ですので」


 特殊?ただのハーフハイエルフだよね?


「リリー様の特殊性からハーフハイエルフとしても理解できない事が多すぎますのであの方……リリー様の錬金術の師匠様が調べましたところリリー様はただのハーフハイエルフではないことが判明しました」


 はい?


「リリー様は人間の冒険者とハイエルフとの間に産まれたハーフハイエルフと思われていましたが、どうやら人間の冒険者とは上位精霊が姿を変えていたことがわかりました」

「えと……私は人とハイエルフのハーフだよね?」


 そう設定したよ?エンが。だって私は大賢者。ハイエルフでもハーフハイエルフでもない。そもそも私に両親はいない。強いて言えば、世界と神様が私を創った。……どっちがお父さんかな?


「あの方によりますと、それでは色々説明がつかない、とのことです」


 ……ああ、そういうことか。エンの設定に神様がダメ出しをしたんだね。上位精霊ね。………今の上位精霊って、精霊王と精霊女王だけだよね?お父さんが精霊なら、この場合の上位精霊って精霊王?…………誰かな?遺伝的にいえば、青い瞳は水の精霊王だけど……。…………え?あれ?あれなの?


 ふと脳裏に水草や海草に頬擦りする……もとい、水草や海草をこよなく愛でる青い髪に青い瞳の精霊王が蘇った。昔、スイと精霊湖の奥底にある精霊王の館に遊びに行った事があって。水の精霊王は水草や海草を館の至る所で育てていて、しかも自慢が止まらなかった。出された海草茶はドロドロした粘り気のある黒い液体で、とても苦かった。それを美味しそうに飲んでいたんだよ、水の精霊王は。スイも飲めなかったんだから変なのは水の精霊王だよね?


 いくら設定でも、あれがお父さんとか……さすがに遠慮したいなぁ。


 ついつい遠い目をしてしまう私なのだった。


「リリー様は精霊とも親和性が高く、自然はリリー様と共にあります。ハイエルフといえどそれは有り得ません。そこから調べたところリリー様は精霊とハイエルフのハーフであると判明したのです」

「わあ!お伽噺だね!」


 ミナちゃんが手を叩いてぴょんぴょん跳ねた。


「お伽噺?」

「そうだよ!知らない?人の世界に遊びに来た精霊が人の姿になって、魔物に襲われそうになったところを助けてくれた男の子と恋をして結婚する話。その子供がエルフの始まりって言われているんだよ」

「ああ、似た話は僕も幼い頃に読んだよ。森でクモの巣に引っ掛かった蝶を助けたら、実は精霊で、恩返しに来るんだ。そのまま一緒に暮らして最後は結婚する話だよ。真似してクモの巣に引っ掛かった蝶を助けたりしたな」


 ……ジェドさん。恩返しが欲しかったの?メアリさんとミナちゃんがジト目で見てるよ。


「ま、ハイエルフにしても精霊にしてもお伽噺の存在には違いないな。希少生物か、伝説上の生き物だな、お前は」


 ライの考察もどうかと思う。私は実在してるし、お伽噺の存在ではない。そんな風に言われると幻か何かみたいじゃない。やだなぁ。


 言葉は刃だ。そう意図していなくても、受け取り方で簡単に心を抉る。ライに悪意はない。思ったことを言っただけ。でもハーフハイエルフの時も、今回も、お伽噺だと言われる度に変な気分になる。そんな特別なものじゃない。私は確かに存在して、生きている。大賢者だって、この世界の一部だ。人と同じ存在なのに。


 ふむ、と何やら考え込んでいたアルが頷いた。


「それでは今後もリリーは何日か眠ることがあるわけだね?」

「うん。そうだね」


 お仕事あるし、確実に眠るね。……アルは気にならないのかな?精霊とかお伽噺のこと。まあ、全部設定で、本当は違うけど。


「では、今後、何日か眠るときは城に来ると良いよ。森は確かにリリーにとって安心の場所かもしれないが、天気の急変や期間が延びることに僕らは不安になる。城の僕の塔なら騎士に守られて安全だし、安否もわかる。錬金術師もいるし、何よりも蔦がいる。もちろんシア殿も一緒で構わないし、不在にするときもこちらで世話を引き受けよう。どうだろうか」


 うーん……。どうかな?


 ミナちゃんはうんうん、と頷いてるし、ジェドさんは、城?、と少し引きつっている。メアリさんは何故か、とってもにこにこしていて、何だか怖い。カイさんは無表情でわからないけど微かに頷いたような気がするし、ライは守りは任せとけ、と得意顔だ。シアは……。


 見上げたシアは優しく微笑んでいる。


『どうすればいいかな?』

『大賢者様のお好きなように。私はいつでもお側におりますよ』

『そっかぁ。シアが一緒なら、どこでも変わらないね。……うん。シアにおつかいも頼めるし』


 でも。


 私、そんなに長くこっちにいるかなぁ?私のおつかいが終わってないってことだよね?それはそれで問題かも。むむむ。


「駄目かい?リリー」


 少し寂しそうなアルの目に、嫌とは言えないよね。別にお仕事できれば、どこでもいいし。


 うん。決めた。


「いいよ、アル。今度寝るときはアルに頼むね」

「……ああ!受けてくれてありがとう」

「……アルは気にならないの?私は人じゃないんだって」

「??何を言っているかわからないな。リリーはハーフハイエルフだろう?元々人族ではなかったと思うが」


 あ、うん。確かにハーフハイエルフは人族ではない。でも、そうじゃなくて。そういうことを聞きたいんじゃなくて……。


「リリーはリリーだろう?君が僕をアルだと言ってくれたように、君はリリーだ。魔法が凄くて、難しい錬金術を簡単に扱えて、とても素直で可愛らしいお人形のような女の子。五歳の姿なのに百年生きてて、時々沢山寝るようだけど、肉が好きで、甘い飲み物が好きで弓が上手。これが僕の知る真実だよ。種族とかお伽噺とか関係ない。目の前の真実が全てだ」


 ぱぁ!と目の前が明るくなった気がした。


 アルの優しさが嬉しい。胸の真ん中がじんわりと温かい。むずむずして、少し恥ずかしいような、そんな仄かな温かさ。でも確実に体を心を温めて解かす。


 言葉は実体がないけれど、刃にもなるし、こうして温めてもくれる。扱いは難しいね。でも。私も誰かを温められるような言葉を使えるようになりたいな。


 アルにありがとう、と微笑み返した。


 その時。


 ガツンっ!と頭痛が酷くなった。とうとう我慢出来ないレベルになってきた。


 対処しなきゃ。


「ミナちゃん。ありがとう。今日はちゃんと帰って夕飯食べるからね。先に帰ってて」

「一緒に帰らないの?」

「まだギルドで精算してないし、用事が残ってるの」

「待つよ?」

「うーん、でも魔獣の死骸とか納品するし、ミナちゃんは見ない方がいいと思う」

「うっ……し、死骸……」

「ね?ちゃんと帰るから」

「……わかった。でも、本当にちゃんと帰って来てね。絶対だよ?」

「うん、絶対。約束する。ジェドさん、ミナちゃん送ってって」


 ジェドさんは胸を叩いて、任せて、と頷いた。ミナちゃんは少し頬を膨らませる。


「一人で帰れるよ」

「駄目だよ。また人攫いに会ったらどうするの?」

「人攫い?」


 ライが反応した。


 アルも、そうか、金髪緑の瞳…、と呟いている。


 何だろ?はてな?


「それはミナが拐われかけたってことか?」


 ライはじろりと私を睨んだ。


「うん、そう。初めてミナちゃんに会ったのは拐われかけている時だよ」

「リリーちゃんが助けてくれたの!凄かったよ!魔法でバァーンて弾き飛ばしたの!」


 ミナちゃんは身振り手振りで説明する。


「そいつらはどうした?」

「捕まえて自警団に引き渡したよ」


 アルとライとカイさんは頷き合った。


「なるほど。では、カイ。ミナを宿に送ってくれ。ライは僕と城に戻る。ポーションの件をどうするか、国の方針を決めなければ」

「殿下。ギルドではどのように対応すれば…」

「ふむ。冒険者にポーションがないのは困るか……」


 アルがチラリと私を見た。


 ん?


「リリー。何かアイデアはないか?」

「ポーションの?」

「ああ」


 ポーションか。それなら。


「ずっと、ずっと、ずうっと昔はね。ポーションは100%だったの。でもその結果、無茶をする人が増えてね。だって怪我をしても病気になっても直ぐに治っちゃうでしょ?薬草も乱獲されて減ったし、その結果、薬草の自衛反応で毒素も強まったの。そこで、普通に販売するポーションは怪我が治る程度に薄められたものになったの。値段はパンと同じくらいかな。もちろん毒素はないからかけるだけでも傷は治るよ。弱毒も治る程度かな?少し高めのポーションは病気が治るもの。これは半分の薄さで、値段はパンが五個買えるくらい。薄めないポーションは医者が処方しないと買えないもので、パンが十個買えるくらいかな」

「なるほど。ハイポーションはなかったのかな」

「ハイポーションはね、作り方が違うよ。本当のハイポーションは怪我や病気、状態異常も治るんだよ。ちなみに本当のエクストラポーションは作るのも材料揃えるのも難しいけど、欠損部分も復元するんだよ」


 今伝わってるハイポーションとエクストラポーションの作り方はただのポーションの解毒を強めただけで薬効成分はポーションの域を出ない。ダメダメだよね?


「そうか、それほどまでに違うのか。ではメアリ。対応は協議を経てからになるが、このまま毒入りを販売するのも、100%ポーションを販売するわけにもいかないだろう。今はリリーの提示した薄めたものを販売するとしよう。リリー、どれくらいの濃さが妥当だ?」

「ポーションなら三倍くらい?今のポーションを解毒して、均等に三本の瓶に移して、純水か、まあ、井戸水煮沸して覚ました水で薄めれば大丈夫。井戸水そのままは駄目だよ。効果が下がるから」

「わかった。しばらくはそれで販売してくれ。近日中には方針を決める」

「かしこまりました」


 頭を下げるメアリさん。少しほっとした表情だ。


「宿のはどうしよう」


 ミナちゃんが困り顔だ。


「じゃあ、私が毒素は分解して薄めてあげるよ」

「ホント?」

「うん!」

「ありがとう!じゃあ、家で待ってるね!絶対、絶対、帰って来てね!」

「うん!絶対、絶対、ぜぇーたい帰るよ!」


 ふふふ、と微笑み合って約束を交わすと、ミナちゃんはジェドさんと手を繋いで出ていった。次いでカイさんも私の頭をひと撫でして出ていく。


「では僕たちも城に戻ろう。リリー、また明日」


 明日?何で?


 にこにこにこ、と微笑むアルに否は言えない。


「う、うん。また?明日……?」


 疑問符付いたけど首傾げたけど、私の返事に満足そうに頷いて、アルはライと、ぱっと転移して行った。


 お、おお?なんか転移し慣れてる?


「で、殿下が消えた?!」


 メアリさんが何度も瞬きしてる。


「私が転移出来るようにしたの。王都とここの行き来大変だから」

「あ、ああ、そうなの。そうなのね」


 びっくりした、とメアリさんは胸を撫で下ろす。


 まあ、それはともかく。


 これで、部外者はいなくなったね。心置きなく出来る。


 ふふふ。


「メアリさん」


 ん?とメアリさんは私を眺めた。


「もう、いいかな?」

「えっ?いいかなって、何が……」

「私、頑張ったよ。耐えたよ。我慢した」

「ち、ちょっと待って、何のこと?」

「メアリさんが出ていった後から、私、ずうっと攻撃されていたんだよ」

「こ、攻撃……?」

「そう、攻撃。この部屋にはミナちゃんやアル達がいたし、黙っていたけど。敵も可視化出来ないように高度な術式で行っていたから誰も、シア以外は誰も気付かなかったようだけど。攻撃されてた」

「リ、リリーちゃん?」

「まあ、私に攻撃魔法は効かないし、状態異常も無効になるけど、やってはいけないことって有ると思うの」

「そ、そうね……」

「もし、私が反射結界張ってたら、この部屋、ううん、ギルドは失くなっていたよ?そうならないように、私は全部の攻撃を受け止めてたの。ねえ、メアリさん。美味しいタルト時間邪魔されて、私が許せると思う?」

「あぁぁぁ……」


 メアリさんは絶望的な顔をした。


「と、いうことで」


 鞄から蔦さんを取り出して空中に投げる。


「捕縛してきて!」


 蔦さんはしゅるしゅると伸びていき、扉の隙間から出ていった。今も絶えることなく続いている攻撃の魔力を辿っていく。


「はぁ……。まあ、仕方ないわね。自業自得だもの」


 メアリさんは呆れたように首を振った。


 一応、ギルドの二階以上に遮音結界を張っておく。


 その時。


「ぎゃあー!!!」


 ドッシーン!!


「何だあ!!!」


 近くの部屋で大きな叫び声と、何かが落ちる音が聞こえた。










読んでいただき、ありがとうございました。

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