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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
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52. 報復しますか?


 空腹にお腹を擦っていたら、ミナちゃんが大丈夫?と気遣ってくれた。


「大丈夫。お腹が空いただけ」

「そっか、ご飯、ずっと食べてなかったんだっけ?」

「うん。寝る前にシアとお昼食べたきりかなぁ」


 あのお肉は硬かったなぁ、と思い出していたら、ミナちゃんが首を傾げた。


「シアさんは?シアさんは一緒じゃなかったの?」

「シア?シアはおつかいで家に帰ってるよ。私が寝てる間は暇でしょ?」

「家ってリリーちゃんのお家?」

「そう、私のお家。目覚めたら連絡することになってるの」


 そう言いながら空中に簡単な召喚魔法陣を描く。発動すると光って、光る小鳥が現れた。私の連絡鳥の神鳥ルルティアだ。


「シアに伝えて。目覚めたよ、って」


 ルルティアはピィーと高くひと鳴きして壁を通り抜けて行った。


「綺麗な鳥さんだぁ……!リリーちゃんの鳥なの?」


 キラキラの目でミナちゃんがルルティアの消えていった方を見た。


「うん。光の魔法でつくった連絡鳥だよ。ルルティアっていうの」

「名前があるの?」

「名前がないと動かないよ?」


 魔法生物は名付けで存在が確定するし。最もこれは高度な魔法で多分人には無理かな。ルルティアも神様の課題で創ったもの。ちょっと大変だったよ?沢山失敗して、エンが笑顔で焼却してた。うにょうにょ動く変な固まりは流石の神様もひきつっていたね。


「相変わらずデタラメだな、お前は」


 呆れた声にそちらを向くと、無表情のカイさんと眉間に皺のライと何故かとてもキラキラした目のアルがいた。カイさんは目が合うと優しく微笑んでくれて嬉しい。ライは……なんだか不機嫌そうだから見なかったことにして。アルは………ミナちゃんと同じ反応みたい。


「あれはルルティアというのかい?素晴らしいな。光の小鳥だ。伝説の神鳥と云うものかな?」


 ありゃ?伝説になってるの??


「そ、そう。神鳥ルルティア。主に連絡用の小鳥だよ」

「ああ!そうか!僕はまた伝説に触れたのだな………」


 どうしよう……。アルが感無量に陥ってる。反対側ではミナちゃんがジェドさんに小鳥を購入したいとすがっていて、ジェドさんは管轄害だよ、と困り顔。


 ええと、ええと?こう言うときは………そうだ!


 鞄から大きめの紙を二枚出して鳥の形に折った。二羽の鳥に少し創造スキルを使って魔力を通した時だけ鳥になるように細工して、ちゃんと持ち主の元に帰るように調整した。


 一つをミナちゃんに差し出して手をのせて魔力登録する。もう一つはアルを登録する。


「はい、紙だけど連絡用の小鳥だよ」


 各々を二人に渡す。


「折り紙の鳥?」


 首を傾げるミナちゃんに魔力を通して?と言ったらアルがキラキラした目で魔力を通して鳥に変身させた。


「これは凄い!」


 ばさり、と羽ばたいてアルの鳥は天井付近を一周した。私も、とミナちゃんも魔力を通して鳥に変身させる。アルの鳥は白、ミナちゃんの鳥は水色だ。二羽は其々主の手に戻りピィと鳴いた。


「短い伝言を託せるよ。送る相手をしっかり念じてね。言葉は出さなくても大丈夫。その時は小鳥とおでこを合わせてね」


 早速二人は小鳥におでこを合わせて、伝言を託した。


 小鳥達はピィとひと鳴きして、天井を一周して、二羽とも私の前に降りてきた。


「「素敵な贈り物をありがとう」」


 アルの声とミナちゃんの声が重なった。


 驚いてぱちくりしていたら、小鳥達はまた舞い上がり其々の主の手に戻って折り紙に戻った。


「あれ?!紙に戻ったよ?!」

「普段は折り紙だよ。持ち運びも簡単でしょ?魔力を通した時だけ一つの伝言を運んで戻って来るんだよ」

「へえ。便利だな」


 ジェドさんが欲しそうな顔しているけど、ジェドさんの魔力量では無理かな。アルとミナちゃんの魔力量が他人より多いから出来ること。カイさんとライは少し足りないかな。


「今さら驚かねえけどな。ところでそのシアってのは誰だ?」


 ライが護衛の顔で聞いた。アルも折り紙をポケットにしまうと、少し遠慮がちに尋ねてきた。


「その、君の家族かな?」

「シア?シアはね、スイの、……叔母の従者?だよ。私一人は心配だからと付けてくれたの。いつもはそっと見守ってくれていたんだけど、商人のおじさんがいなくなって一人のご飯が寂しかったから、一緒にいてもらったの」


 だって一人のご飯があんなに味気ないものなんだって知らなかったから。シアはいつも腕にいてくれたけど、美味しいね、を分かち合う存在の大切さは一人ぼっちで初めて理解した。人型を嫌う眷属がいることは知っていたから我慢してたけど、やっぱり寂しくて。我が儘を言っちゃった。だから、今回スイの元におつかいをお願いしたのはその贖罪もある。ごめんなさいの代わりに主の元に少しの帰還を許可したの。だって、やっぱり、傍にいて欲しいから。これからも一緒にご飯を食べて欲しいから。


『大賢者様。門を開いてもらえますか?座標が掴めずに此方から転移できません』


 シアだ!


「シアから連絡きたよ。ここに転移するけどいい?」


 一応アルに聞いた。ライはきっと警戒してるから。


 アルはライを見て、カイさんを見て、頷いた。


「構わないよ。君の家族同然ならば挨拶したい」

「ありがとう」


 では早速。


 魔力を少し込めて詠唱する。


「開け 門 数多の空を繋ぎ合わせ 顕現させよ」


 アルの近くでバチバチと魔力が弾ける。アルはライの背に庇われながら壁際まで後退する。


 アルがいた辺りに円に五芒星という最もシンプルで最も古い魔法陣が描かれる。


「転移門『シャンゼフォーレス』」


 魔法陣の上に堅牢な石の門が現れ、一瞬で消えた。魔法陣の残滓の中、シアが頭を下げて立っていた。


「只今戻りました」

「お帰り、シア」


 顔を上げたシアと微笑み合う。シアはぐるりと室内を見渡して、はて?と首を傾げた。


「森の中でお休みになられたのではなかったのですか?」

「う、ん……そうだったんだけどね。寝坊して、心配かけて、捜索されて、ギルドに運び込まれたの」

「そう、でしたか。無事にお目覚めになられたのですね」

「うん」


 しみじみと頬笑み合っていたら、シアの背後から、おい、とライの低い声が聞こえた。


「あ、そっか。えーと、シアだよ。自己紹介してあげて?」


 シアは何かを悟ったのかくるりと背後を向き、深々と頭を下げた。


「リリー様の叔母君の従者をしています、シアと申します。主の命により、現在はリリー様の従者をしております。以後お見知りおきを」


 庇うライを手で制し、アルは一歩前に出た。


「アルだ。これはライ、此方はカイだ。僕達の事はリリーから聞いているのだろう?」

「はい。存じております」

「ならば自己紹介は必要ないな。これからよろしく頼む」


 シアは無言で頭を下げた。用は済んだとばかりに私に向き直り、にっこり笑う。


「報復いたしますか?」


 怖いよ、シア。笑いながらの台詞は。


「大丈夫。するときは自分でするよ。今まで通り」

「それは残念ですね」


 シアは相変わらずだった。





読んでいただき、ありがとうございました。

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