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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
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50. 状況は……?


 目をぱちくりしていてら、メアリさんとライとカイさんが近づいてきた。


 あ、これベッドだ。私、布団で寝てる。


 んー?何で?ハンモックは?


「気分はどう?」


 何故かメアリさんも涙目だ。


 んー?気分?気分は良くも悪くもない。よく寝たって感じ。何で聞かれているのかなぁ。よくわかんない。ふーむ。ここはあれだよね。無難な回答、かな。


「大丈夫だよ」


 メアリさんはほっとした表情になる。


「痛いところとか具合の悪いところとかないかしら」


 痛いところ?怪我はないよね?大丈夫。まあ、傷は直ぐに治っちゃうから正直よくわかんない。でも、まあ、うん。平気。それよりも、このよくわからない状況は、メアリさんに聞けば分かるよね?


「痛いところはないよ。具合も悪くないよ。えと、私は何でここにいるの?ここ、ギルドだよね?私は森で寝てたと思うんだけど……?」


 ちゃんとハンモックで寝た記憶があるよ。


 ぎろり、じろり、ぱちくり?といった様々な視線を感じた。私は注目されている?


「「「「「「………寝てた?」」」」」」

「う、うん………」


 皆が一斉に喋りだした。


「やっぱり寝てたのね!?心配はいらないとは思ったのよ。でも流石に寝過ぎじゃないかしら?」とはメアリさん。ちょっと迫力が怖い。


「良かった、良かった。もう、僕の生きている間に会えないかと思ったよ……」とよくわからないことを言っているのはジェドさん。腕で涙を拭くのはお行儀が悪いと思う。フウに注意されるよ?ハンカチは何のために在るのかって。


「無事ならいい」とはカイさん。多くは語らないけど、瞳が凄く優しい。心配してくれたんだね。


「そんなことだろうと思ったぜ」はライ。視線を外して頭をがしがし掻いている。照れ隠しかな?でもその度に音を立てて掻いてたら、剥げるよ、そのうち。きっと。たぶん。


「良かったぁ。良かったよぉ」とミナちゃんは泣いてる。繋いだ手はぎゅうぎゅうと握られて少し痛い。あ、痛いところあったね。なんか物凄く心配かけたみたい。


「また、君に会えて嬉しいよ、リリー」とキラキラ笑顔なのはアル。片手はしっかりと繋いでいて、もう片方は頭を撫でられている。


 えと………なんか誤解?があるのかな?メアリさんは怒り気味。カイさんとジェドさんは心配してくれていて、ライはよくわかんない。ミナちゃんは号泣していて、アルは嬉しそう。反応がバラバラで一貫性がない。わかんない、わかんない。状況がわかんない。ううぅ。誰か説明してぇ。


 とりあえずは起きよう。


 二人からそっと手を離して、もぞもぞと起き上がる。ベッドの上に座り、改めてぐるりと見渡した。


 空気はギルドだし、石の天井、石の壁、石の床はギルドの建物だよね?でも部屋は宿屋みたいな感じだ。ベッドに机とタンス、ソファーにテーブル。布団は柔らかくて気持ちいい。あれ?ギルドじゃないのかな?


「ここはギルドよ。ギルドの客室よ」


 困惑が伝わったのかメアリさんが補足してくれた。


「状況がわかんない。どうして私はギルドにいるの?」

「依頼が出されたの。貴女の安否確認の。それで森で倒れていた貴女を保護した、というわけ」


 安否確認?倒れていた??それで保護???


 どうしよう。説明してもらったのに、何一つ意味がわからない。安否確認ってなんで?だってちゃんとミナちゃんとアランさんに三日留守にするって言ったし。倒れているのもわからない。ハンモックで寝てたよね?倒れているって言わないよね?それに保護?保護って何?


「困惑が顔に出てるわよ」


 リリーちゃんは分かりやすいわね、とメアリさんは苦笑気味にミナちゃんの肩をぽん、と叩いた。


「この子の親が依頼人よ」

「だって、だって、リリーちゃん帰って来ないから」


 涙目のミナちゃんは、メアリさんにハンカチを渡されて零れ落ちる涙を拭っている。


「えーと?森で寝るから三日帰らないって言ったよね?」

「リリーちゃん」


 メアリさんは呆れたように肩を竦めた。


「今日は六日目よ」

「はえ??」

「リリーちゃんが宿を出て六日目。貴女が宿を出た翌日には雨が降りだしたの。その雨は4日続いて、今朝止んだのよ」


 詳しく説明を聞いた。


 私が森に入った日を1日目として三晩は待ってくれていたらしい。雨が降っていたから、かなり心配したけど、三晩は待とうと我慢してくれたんだって。でも4日目。いくら待っても帰って来ない。連絡もない。とうとう四回目の夜が空けた。アランさんは徹夜で待っていてくれたんだって。それで五日目の昨日の朝、安否確認だけでも、とギルドに依頼を出した。ところが依頼を受けた冒険者達は雨が降る森の中を捜索したけど、なかなか見つからない。魔物とも戦闘があって、火魔法を使った為に火事を警戒して辺りをみていたときに私を見つけたんだって。花の中に倒れていて、目を覚まさなかったから安否確認が取れず、ギルドに運んだ。ただ森を抜けるのに時間が掛かって今朝到着したらしい。


 うん。わかった。理解したよ。つまりは寝坊したんだね。はは、徹夜が響いたね。倒れていてのもわかった。火魔法だ。確かリョクがハンモックの種は火に弱いと言ってた。火を近づけると種に戻るって。それでハンモックは種に戻り、私は地面に落ちたんだ。傷は直ぐに治るから、ただ雨に濡れただけの私の完成、ってことだね。目を覚まさなかったから安否確認が取れずにギルドに運ぼうとしたけど、森が私を守って魔物と遭遇しないようにしたから森からなかなか出られなかったんだね。そうお願いしたものね。


 たぶん、とても心配をかけたんだね。


「えと、心配かけてごめんなさい。心配してくれて、ありがとう」


 ここは素直に謝罪と感謝だ。あとでアランさんにも伝えなきゃ。


「冒険者の人にもお礼を言わなきゃ」

「ああ、彼らは医務室にいるわ」

「怪我したの?」

「違うわよ。雨に濡れないように一人が外套を脱いで貴女を包んだの。それで一晩中雨に濡れて風邪を引いたらしいのよ」

「はわわっ」


 それはいけない。服に鞄は付いたままだったから、鞄を漁って小瓶を取り出した。ちゃぷんと液体が音を立てる。ガラス瓶の中に薄い青色の液体が入っている。


「はい。これを渡して。お薬だよ」

「そ、それは?!まさか僕に飲ませたエルフの秘薬?!」


 ジェドさんが大袈裟に仰け反ってる。


「違うよ。これはギルドで販売してるポーションだよ」


 小瓶にはギルドの看板と同じ印の紙が貼ってある。ポーションと小さく書かれている。

 

 ジェドさんに渡したのはその場で適当に作ったら出来上がってしまった神薬(劣化版)だもん。


「あー、あのね。リリーちゃん。気持ちは有難いのだけど、ギルドの売店に売っているポーションは簡単な傷くらいで病気は治らないの。ハイポーションかエクストラポーションか万能薬なら治るけど、高価過ぎて風邪で使うことはないわね」


 寝てれば治るから気にしなくても大丈夫よ、とメアリさんは笑うけど、私の為に病気になるなんて駄目に決まってる。それにこれはただのポーションじゃないし。


「これで治るよ。私が邪魔してる余分な成分分離させたから。薬効成分100%だよ」


 以前買ったポーションがあまりにも粗悪品だったから、ちゃんと調整して効くようにしたんだ。えへん。

 

 だけど皆首傾げてる。


 はてな?








読んでいただき、ありがとうございました。

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