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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
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49. 大事になってる?


 お仕事中の時、私の意識は広い夜空を漂っている。漆黒の中で、上も下も無数の煌めきに満ちていて、ああ、ここはヴィダの領域なんだ、と毎回納得する。


 ヴィダは魂の還る場所。世界を構成するエネルギーがヴィダ。私達世界に生きる全てのものはヴィダから生まれ、ヴィダへと還っていく。だから、意識の深淵はヴィダへと繋がっていて、お仕事の時、私の意識はここまで落ちる。


 お仕事中の私は並列思考になっていて、沢山の私が同時に存在し其々が役割を果たす。彼らに感情はなく、ただ淡々と仕事をこなす。


 世界に対して悪意のある文書、書き物、落書きは『端末』に登録。後で確認する。


 世界を破壊する魔法、魔道具、兵器に繋がる、またはヒントになる思考、文書、書き物

、落書きは『端末』に登録後、削除。また、それらを記入した者、考えた者、考えを聞いた者から、付随する記憶を削除、または付随する感情を消去。


 美味しそうなレシピを『端末』に登録。後で確認する。スイ行き。


 新しい魔法、魔道具、魔法陣、魔方陣で、韻律が闇に関するもの、光に関するものは『端末』に登録。後で確認する。緊急要件は赤字点滅。


 面白そうな本を抽出。『端末』に登録。後で製本する。


 世界の構成ヴィダ数を検索………結果を総ヴィダ数から引き、ヴィダの領域内の数と比較。…………若干ブレあり、誤差範囲と認定。問題なしと判断する。


 などなど。私のお仕事は多岐に渡る。


 ぐー………………。


 ………………………。


 ………………………はっ。


 また、寝てた?


 徹夜の影響か、時々意識が寝てしまって、なかなか処理が進まない。いくら並列思考でも、『私』が寝ると、皆寝てしまうから。


 『文書選別』は続く。


 世界に存在する全ての書が対象だ。どこかの国の帳簿、老人の回顧録、貴婦人の日記、若者の恋文、学生のノート、先生の黒板の記入、地面に描いた子供の落書き、星を繋いで描いた図形。ありとあらゆるものを閲覧し選別する。


 もちろん選別している『私』に感情はないから、恋文読んでも日記を読んでも何も思わないし、悪巧みの計画書を読んでもどうかしようとも思わない。私はただの閲覧者で作業が終われば記憶にも残らないし、そこまで人を管理する立場にはないから。蝶はキレイだけど、蜘蛛が蝶を捕らえていても助けないし、兎は可愛いけど、人が兎を捕まえても兎を助けることはしない。人に対してもそれと同じだ。ただ、私が人の世界にいて、目の前で起きたことは干渉出来る。リリーとしては干渉出来る。でも、大賢者としては出来ない。大賢者は傍観者で守るべきは世界の形なのだから。


 どんな落書きからヒントを得て世界を壊せるほどの兵器を作ったのか、なんの事象から着想を得て極大破壊魔法を編み出したのか、どんな思想から無限破壊魔道具を作成する錬金魔方陣を描いたのか。過去の事例から、対象を割り出す。ほとんどが要経過観察になって、方向性が危ないものだけが削除対象なるけど、戦争は世界へのダメージが強いからこれだけは別枠。厳しい対処が必要で、でも間違った判断はしちゃいけなくて、とても難しい案件だ。


 世界へのダメージが1/3を越したとき、世界を再生しなくてはいけないから。世界を再生する魔法『天地創造(劣化版)』は神様の『天地創造』とは違って厳しい条件があって、簡単には発動出来ない。私には無理。考えるだけで手が震える。まあ、今の私にはレベルが足りないからその魔法は使えないんだけどね。でも、その時が来ないように、しっかりと管理する。


 一代目から三代目までは人の想像力と創造性が把握しきれていなくて、見逃しから『天地創造(劣化版)』を何度も行使しなくてはいけなかった。その時の心境もちゃんと受け継いでいる。先代は一度も使わなかったけれど、かなり厳しく管理したらしい。らしい、っていうのは何故か先代の記録は少なくて不明が多いから。先代の事は誰も教えてくれなくて、よくわからない。まあ、無理もないけどね。


 だから、私はちゃんと管理する。


 『天地創造(劣化版)』は絶対に使わない!


 ぐー。


 …………………………はっ。


 また寝てた。


 いつもは一月に一回、三日かけて選別を行い、そのあと三日くらいかけて検証作業をしている。でも今回は少し期間が空いてしまった。当然選別の量は多く、時間がかかる。しかも途中途中で寝てしまうからもっと時間が掛かってる。


 シアは大丈夫かな。ちゃんと渡してくれたかな?みんな喜んでくれたかな?


 神様はどうかな?人形で良かったかな?評価が怖い。神様は私の錬金術の師匠だからその辺りは厳しい。創造スキルは扱いが難しくて、ちゃんと創造するには自分の中で手順を理解していないと上手く創造出来ない。その為に錬金術で思い通りに作る手順を学ぶ。神様は変な神様だけど、凄い神様で、創造も錬金も片手であっという間にこなしちゃう。良くできれば褒めてくれて頭を撫でてくれるけど、失敗すると成功するまで何百回とやり直しになる。五年前に言われた課題はまだ出来ていなくて、多分今回も暇をみて視に来てくれたんだと思う。それなのに私が留守で、ブラック神様(拗ねて意地悪)降臨になっちゃった。今の私の創造スキルレベルを提出したから、元の優しい神様に戻ればいいんだけどなぁ。


 もうそろそろ作業が終わりそう。


 後は世界の構成比率のバランスを確認して………うん。問題ないね。


 確認漏れはないかな………。


 ―――――――ぞわりっ!!!!!!


 えっ…………な、に?今の。


 全身鳥肌立ったけど……。

 

 文書確認の漏れを全世界で検索してたら、一瞬、物凄い悪意を感知した。しかもこの悪意は世界に向けられている。何で?


 ………………ィ。


 悪意を感知したならきっと『端末』に登録されたよね?出処と種類はそれでわかる。必要なら削除しなきゃ。それくらいのレベルだ。


 ………………リ……………ィ。


 鳥肌立つほどの悪意なんて初めて。


 これでとりあえずは終わりかな?


 ……………………リ………リー。


 んー?なんかさっきから呼ばれてる気がする。


 あれ?手が温かい?


 んー???


 意識が急上昇する。分かれていた並列思考も一つになる。


 ヴィダの領域(暗闇)から抜け出し、私の中(光)へと戻っていく。


 辺り一面が強い光りに変わり――――私は戻った。


 目を開けると、石が見えた。


 あれ?木の枝で葉っぱさんがいっぱい、じゃない?!空気も違う。森じゃない。


 瞬きしても変わらない。この空気は………ギルド?えっ?何で?


 ふにふに。手が握られている?


 首を少し傾けたら目の赤いアルと目があった。


「アル?」


 えと、何で?


 アルは嬉しそうに微笑んでぎゅっと握ってきた。お返しににぎにぎする。


 ん?もう片方も握られている?


 そちらを見たら目に涙をいっぱいにしたミナちゃんとジェドさんがいた。


 えと、何で?何でみんな泣いてるの?っていうか、この状況は何?何が起きているのかなぁ?


 はてな??? 



 


読んでいただき、ありがとうございました。

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