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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
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41. 腕輪


 転移魔法で宿に戻った。


 留守番の蔦さんに手を振り、シアを見る。


「どうしたの?」

「緊急事態です」

「そう言えば、今日はずっと静かだったね」

「彼らは信用できますので、大賢者様の警護を任せまして、主様の愚痴を念話で聞いておりました」

「スイの?」

「そうです。もうじき来ます」


 え?なにが?


 ぴゅーい!


 甲高い鳴き声が聞こえて、バサリと羽音が響いた。


 閉めきっていた窓を透過し、光を纏った白い大きな鳥が長い羽を優雅に閉じて、机に降り立った。長い首を私に向けて宝石のような赤い瞳を閉じ僅かにお辞儀をした。


「神鳥ティティス。神様の使いが何で……」


 シアが事のあらましを説明してくれた。


 先日、神様が精霊の森に遊びに来たけど、私がいなくて、かなり拗ねたそうで。仕事もしないで遊び歩くな、とか、お前達の教育が悪いんじゃないか、とか精霊女王達に絡んだんだって。酔っぱらいみたいだよね。でも言い掛かりは良くあることだし誰も気にしないよね。私も気にしない。遊び歩いているのは事実だし。


 百年に一度のおつかいで時魔法を使っていることが分かり、なんとか神様は落ち着いたものの、仕事に支障が出るのは良くないと。スイ達に素材集めをさせたんだって。それでスイが不貞腐れて今日一日中愚痴ってたらしい。シア、お疲れ様。


 神様がティティスを飛ばしたからスイが慌てて教えてくれたんだって。誰もいない所に転移するようにって。それでシアは拠点を選んだんだね。ティティスは私目掛けて翔んでくるものね。


 ティティスは嘴で机をトントンと叩いた。金色の魔法陣が展開し、手紙と腕輪が現れた。


「ありがとう、ティティス」


 ティティスはぴゅーい!とひと鳴きして、飛び立った。部屋を一周し、窓を透過して出ていった。


 手紙は金の繊細な装飾で縁取られていた。開けると神様言語で書かれていて、優美で綺麗な文字が並んでいた。神様は変だけど、字は上手だよね。


▷やあ、大賢者。元気に笑っているかい。

 遊びに来たのに、不在とは残念だね。君とあれこれするのを楽しみにしていたんだけど、実に残念だよ。精霊女王しか遊ぶ相手がいないのはつまらないものだ。早く用事を済ませて戻っておいで。

 僕と二人でずっと遊ぼう。ずうっとね。ふふふふふ。◁


 うわぁ……神様が何か恐い……。捕まったら終わりな気がしてきたよ?


▷冗談はこれくらいにして本題だ。◁


 絶対に本気だったよね?冗談……?ホントに?


▷仕事を貯めているね。サボりは禁止だよ。世界なんて直ぐに壊れてしまうから。管理はきちんとしなさい。時魔法の制約に縛られていて仕事が出来ないのは良くない。僕が君の為だけに腕輪を作った。これを使って解決するように。使用者登録はしてある。君以外には着脱も不可能にしてある。安心して使いなさい。◁


 わあ!神様、ありがとう!まさに神アイテムだね!


▷賢い君はわかっていると思うが、もしも、世界を消滅させたら。ふふふ。繰り返し何度も言っているから理解しているね。そうならないように、頑張りなさい。ふふふふふ。まあ、最悪、消滅させても構わないけどね。その時は覚悟して。君を、僕の部屋で飼ってあげる。ふふふふふふふふ。◁


 ぞわっ!


 全身が総毛立った!


 恐っ!神様恐っ!!


 手紙で笑う必要ないよね?怖がらせたいの?怖がらせたいよね?十分怖いよっ!


 絶対、絶対、ぜぇーたいに、消滅させたりしない!


 手紙を空間収納の奥の奥の奥に仕舞った。二度と目に付かないように。封印!


 腕輪を『端末』で解析する。あ、やっぱり時魔法の魔道具だ。制約なしで、好きな年齢になれる。でも二千才過ぎるまでは見た目年齢プラス二歳に設定されてる。実年齢との乖離が過ぎると齟齬が出るからかな?


 時魔法の魔道具なんて流石神様。凄いなぁ。


 神様は変だけど、本当に凄い神様だ。


 えと、先ずは今掛けてある時魔法を『解除』して。


 三歳の姿に戻る。


 神様の腕輪を装着する。ブカブカだ。ひゅるるんと腕輪が縮みピッタリになった。


 五歳の姿に変わる。


「どう?シア。さっきと同じになった?」

「はい。腐っても神なのですね」

「わぁ、辛辣だね」

「一日中愚痴を聞けばそうなります」

「ははは」


 スイ達に何か贈ろう。心休まるものを。


「そう言えばシアは人型にならないの?」

「なれますが、その方がよろしいですか」

「たまには一緒にご飯食べようよ」

「そうですか。では」


 ベッドに白く長い髪の翡翠の瞳の細身の、男の人?女の人?が白い布を纏って座っていた。


「シアって男の人?女の人?」

「性別ですか?特にありません」

「ないの?」

「いえ、雌雄同体ですのでどちらでもなれるのです」

「そうなんだ。普段はどっち?」

「あまり人の世界には来ないのですが、女性態は面倒事が多いので男性態を選んでいます」

「そっか。じゃあ、男性でいいよ」

「わかりました」


 シアが少し変化した。


 細身だけど少しがっしりした身体になった。顔もキリッとしてるし切れ長の目は怜悧さがあるけど、優しい顔つきは変わらない。一番の変化は喉仏がくっきり出来ていた事かな。髪の長さも変わらないね。ベッドの上で蜷局を巻いている。魔力の量で長さが決まるみたい。これだけ長いならシアの魔力量はかなり多いね。三つ編みしてあげようと思ったけど、出来なかった。そもそも編み方を知らない。


 うー、と唸っていたら、蔦さんがひょいひょいっと編んでくれた。凄い!!最後に蔦の紐で結んで完成!パチパチパチパチ!!見事だね!凄い!流石何でも出来る蔦さんだ!


 蔦さんはすこし照れたように葉を揺らしてうねうねしていた。


 あ、そうだ。


「はい、光の宝珠と水の珠。今日はとても頑張ってくれたからご褒美だよ」


 右手に光魔法で魔法の結晶の宝珠を、左手に水魔法で水の珠を出して差し出した。とても嬉しそうに葉を鳴らして、蔦さんはそっと受け取っていった。


「その二つで一、二ヶ月は持つと思うよ」


 これで曇っていても、雨が降らない日が続いても元気でいられるね。


 シアは精霊の服を着ていたから、鞄に入っていた素材を使って服を創った。白シャツと黒ズボンの簡素なもの。素材は凄いものだけどね。シンプルな服がよりシアを綺麗にさせていた。


 服に、ズボンに、革靴に。うん、よし。


 シアと一階に降りた。


 シアを見たミナちゃんは驚いて駆け寄ってきた。


「リリーちゃん。そのすっごく綺麗な人は誰?」

「シアだよ。んと、一緒に住んでいた人なの」


 どう説明すればいいのかな??


 シアがとても綺麗なお辞儀をした。ミナちゃんは見とれている。


「シアと申します。リリー様の叔母上様の従者をしております。今回は主からリリー様のお世話をするように申し遣っておりますので、今はリリー様の従者です」


 おお、上手い!


《恐れ入ります》


「えと、だからシアも私の部屋に泊まるからシアの宿代払うね。食事付きで私と同じ期間でお願い」

「そうなのね!わかった。後で計算して知らせるね」

「うん。お願い。あ、今夜のご飯、シアの分あるかな?」

「大丈夫だよ。一緒に食べるの?」

「うん!」

「そっか。いつも一人だったものね。」


 ミナちゃんが二人用の席に案内してくれて、ヨロヨロしながらも二人分の夕食を運んでくれた。


 今日の夕食はコカトリスのミートボールシチューだ。ミモザサラダとパンが付いて、デザートはプチケーキ三種だって!美味しそう!


「ああ、本当に美味しいですね」

「でしょう?食べないと勿体ないよね」

「ええ、確かに」


 シアはおかわりをして、沢山食べた。運んでくれたミナちゃんも嬉しそうに笑った。私もおかわりしたかったけど、デザートの為に諦めたよ。ケーキは絶対食べなきゃね!


 ケーキは顔が蕩けるくらい美味しかった。シアはケーキを一つ私のお皿に乗せて、甘いものは苦手なので、と微笑んだ。それは多分嘘だ。私の為の優しい嘘。ケーキを食べるシアの顔はとても嬉しそうで幸せそうだから。シアから貰ったケーキは、シアの優しさでより甘くより美味しかった。ありがとう、シア。


 シアの分の宿代を払い、部屋に戻った。


 早速蛇に戻ったシアに相談する。


「スイ達に心休まるものを贈りたいんだけど、何がいいかな?」

「神がまだ居られますので其方にも必要かと」

「あー……うん、そうだね……」


 神様へのお礼忘れてた……。てへ。


 うーんと……何にしようかなぁ。


「神様に、何がいいと思う?」


 神様は食べ物は精霊界の物しか受け付けないし、大抵の物は自分で作っちゃうし。思い付かないよね。


「大賢者様がいなくて寂しがっているようなので」

「ふむふむ」

「変わりになるものがよろしいのではないでしょうか」


 変わりになるもの?寂しさをまぎらわすのなら、ギュッと出来て、話し相手になるような……?


「ぬいぐるみとか」

「そうですね。どの動物にするかが問題ですが」

「竜とか?」


 神様が竜を可愛がる……?


「「…………………」」


 ダメだ。お仕置きと称してあんなことやこんなことをする絵しか思い浮かばない!


「竜はやめよう」

「それがよろしいかと」

「じゃあ、何がいいかなぁ…?」


 猫、犬、ウサギ、熊、天馬、鳥、大蛇、等々候補をあげてみても、ぬいぐるみが辿る悲惨な運命しか思い浮かばない。ダメだ。神様に愛くるしい動物は。


「では、大賢者様ではどうでしょう」

「……………私?」

「溺愛しておりますし、大賢者様に会えなくて寂しいのですから、大賢者様の人形で納得されるかと」

「え、えー?」

「神の欲しいものは大賢者様。一番喜ばれますから」

「あうぅぅ。そうなんだけど、そうなんだけどね。何だか寒気がして恐いのは何故かなぁ」

「気のせいです」

「うぅぅ。やる気がしないぃぃ」

「気合いです」

「何だかシアが冷たい」

「気のせいです」


 気のせい?気のせいかな?怒ってるよね?怒ってるよねぇ?


「シア。スイが迷惑被ったのは私のせいだけど、私の責任じゃないからね!」

「……………」

「シアぁ!」

「さあ、製作致しましょう。大賢者様人形です。妥協はいたしませんよ。完璧な大賢者様人形を創りましょう」

「シアぁ!!!」


 結局、シアの合格が出るまで大賢者人形を作り直し続けた私でした。


 何で?!


 適当でいいよね?!


「ダメです。目元が大賢者様の愛らしさを表現しきれていません。これでは納得されません。やり直してください」


 自分の人形作るなんてどんな拷問?


 シア、細かすぎ!目元とか指先とかわかんないよぉ………。


 うわーん!


「はい、やり直しです」







読んでいただき、ありがとうございました。

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