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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
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38. 騎士団団長


 夕日になる前には王都に着いた。


 王都は二重の壁に囲まれていた。一つ目の壁の門には、沢山の人が列を作り、王都に入る手続きの順番を待っていた。その横をライは片手を上げただけで通過し、門番は通過するアルに敬礼をしていた。


 門をくぐると畑や果樹園が広がっていた。一つ目の壁と二つ目の壁の間に幾つかの村があって、この作物を栽培しているんだって。壁は魔物から作物を守るためのものらしい。百年以上前は人も少なく、畑も王城の近くにあったけど、人が増え畑は城壁外にしか作れなくなった為に、もう一つの壁で囲ったんだって。昔からこの国の王族は民を守っていたんだね。


 畑でお世話をしている農家の人は、アルに手を振り「殿下、お帰りなさい」「お怪我はないですか」と声をかけていく。アルもにこやかに手を振り返して「ありがとう」「無事だ」と返事をしている。とてもよい関係なのだと分かった。


 どことなく、ライも嬉しそうだ。顔色は青いけどね。


 内側の壁の門に騎士が集まっていた。ライと同じ白い服を着ている人達とデザインはおなじで黒い服の人達が馬の準備をしていた。


「これは殿下!お早いお帰りですな!」


 声が大きくて身体も大きいいかつい顔の黒服のおじさんがアルに近づいてきた。


 ライは馬を止め、会釈する。


「団長、お戻りでしたか」

「おお、ライルか。任務ご苦労」


 おじさんはアルに深々とお辞儀した。


「ご無事のお戻り、何よりです」


 アルは僅か頷き、怪訝そうな顔をする。


「騎士団長自らとは、砦で何かあったのか」

「いえ、砦は無事です。問題ありません。王都近郊で大規模な盗賊団の目撃情報があり、陛下より討伐命令が下りましたので、小隊を率いて討伐に向かうところです」


 アルは左拳を顎にあてて、ふむ、と少し考え込んだ。


「ここまでの道中変わったことはなかったと思うが」

「先程冒険者より街道沿いの森の奥で水柱が上がるのを見たと報告がありましたがご存知ではありませんか」

「水柱?」


 アルとライの視線が私を捉えた。


「ゴブリン退治したときに魔法使ったから」


 小声で言うとアルは頷いた。


「それについては問題無いようだ」

「殿下。こちらの方は」


 おじさんの鋭い目が私を見て、うねる蔦さんにぎょっとした。


「彼女は我が国を救ってくれたハイエルフのご令嬢だ。私の客人として招いた。丁重に頼む」

「こちらが……」


 おじさんはカツンと踵を揃えて、胸に拳を当てた。


「お初にお目にかかります。我が名はオーガスト・バルム。バルム侯爵家当主にしてシャンパール騎士団団長を拝命しております。以後お見知りおきを。大変可愛らしいですな。お近づきに飴をどうぞ」


 おじさん―――騎士団長は相好を崩し、にこやかに懐から飴を取り出して差し出してきた。手を伸ばして受け取ると、何故か目尻を下げてはあぁ、と息を吐いた。何かちょっと怖い。


「……あ、ありがとう。リリー・ハイレーン、です」

「リリー殿。本来ならば王城まで随行するのが筋なのですが、私は現在盗賊団の討伐に向かう任務の途中ですのでここで失礼をする無礼をお許しください」


 深々と身体を折り曲げての謝罪が何だか怖い。ちょっと腰が退きつつも、言われた言葉にはてな?と首を傾げた。

 

「盗賊団?街道にはいなかったよ?」

「ええ、昼間は森の中に潜んでいると思われます」

「森に?」


 …………あれ?そういえば魔法掛けた人攫いがいたね。忘れてたよ。


「森の中にはゴブリンと人攫いしかいなかったよ?」

「人攫いって何だ?」


 聞いてくるライに説明する。


「着替えは無防備になるでしょ?だから索敵したのね。そしたら敵性反応の集団が二つあって、一つはゴブリンだったから魔法で殲滅して、もう一つは人攫いだったの」

「誰か拐ってたのかっ?」

「ううん、違う。メアリさんにね、顔が怖くて傷だらけで、身体が大きくて、声が大きくて、飴をくれるのは人攫いだから気を付けなさいって言われたの」

「「「「………………」」」」


 アルとライとカイさんが騎士団長を見た。騎士団長はふるふると首を横に振る。


「私は人攫いではありませんぞ!」

「もちろん、わかっているとも」


 アルは面白そうに頷いた。騎士団長ははっとして、穏やかに微笑んだ。


「肩の力が抜けておられる。殿下に笑顔が戻られたのですな」

「ああ、リリーのおかげだ」

「そうですか。陛下に良い報告が出来ますな」


 ライは私の頭をぽんと叩いた。


「それで?」

「うん、だからね。飴ももらってないし、声も聞いてないから大きいかわからないけど、顔が怖くて傷だらけで身体が大きくて武器持っていたら人攫いの可能性が高いでしょ?だから退治しようと思ったんだけど、間違ってたら大変だからね。ただ敵性反応があったし、無力化するだけにしたの」

「つまり、奴らは」

「んと、動けない?かな?」

「何したんだ」

「麻痺毒と睡眠の魔法かけた」


 ぷはっ、とライは吹き出した。


「あははは、お前の魔法にかかれば盗賊団も形無しだなぁ」

「リリー。恐らくその集団が盗賊だよ」


 アルの言葉に目をぱちくりした。


 え?そうなの?盗賊には見えなかったよ?


「オーガスト。盗賊団はリリーが討伐したそうだ」

「なんと!」

「リリー、場所は?その人攫いかもしれないのは何処にいたのかな」

「んとね、ここを真っ直ぐ」


 私は森に向かって真っ直ぐに指差した。畑を突っ切って壁超えて、真っ直ぐ。


 騎士団長はなるほど、と頷き、地図上に印を付けた。


「リリー殿。ご協力感謝致しますぞ。では失礼を」


 騎士団長は騎乗し、黒服の騎士を率いて駆けていった。


 手の中に残った飴をぽいっと口に入れて、ずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。


「ねぇ、なんでおじさんは皆、飴を持っているのかなぁ?」

「「「……………」」」


 誰も、答えてくれなかった!

 






読んでいただき、ありがとうございました。

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