3. 設定は万端に
準備って鞄に着替えとかかな?
でも私は空間収納(無限)があるし、大抵のものは魔法で創れるから必要ないとおもうけど。
はてな?
「さて、どこからする?」
「まずは髪と瞳でしょう」
「そうね。外見からがいいかしら?」
外見?
手足を見ても、服はちょっと小さいけど、問題ないよね?髪も腰の長さだし。瞳?視力はいいから冒険者にもなれるよね?
はてな?
「変なところないと思うけど?」
「変ではないけど、その髪色と瞳の色は地上にはない色なのですわ」
スイが困り顔で微笑んだ。
この銀を基本に七色に輝く髪と金を基本に七色に光る瞳は珍しかったの?
「いや、珍しいというか、それ、神様の面白シリーズだろ?」
「面白シリーズ…………」
何それ!?初めて聞いたかも。
面白シリーズ!
わぁ!わくわくする!知りたいな!他にどんなものがあるんだろう?
「あら。大賢者様。興味津々。紫になっていますわ」
「面白シリーズって?何?神様が決めたものなの?私知らないよ?どんなもの?何があるの?何が面白いの?」
「まあ、知識欲が爆発ですね……」
「エン?貴女が説明しなさい」
「ええ?!アタシがかよぉ」
エンはガシガシガシっと頭を掻くと、うーと唸りながら私の目線までしゃがんでくれた。
「面白シリーズっていうのはアタシらが勝手に言ってるだけなんだけど、神様が面白がってやらかした事をそう呼んでるんだよ」
「やらかした事……」
有りすぎてわからない。
「大賢者様が誕生したときも普通の銀髪と黄金の瞳だったのを、神様が感情によって色が変わったら面白そう、でその色になった」
神様の遊びだったのか。この色。
「あと大賢者様の眷属を選ぶときも始まりは同種で揃えると面白そうと言って彼らになった」
今修行中の彼等か。そう言えば最初の四人は同じ種族だったね。
「と、まあ、面白がってやったアレコレをシリーズにしてるってわけ」
なるほど。
「あまり気にしたことなかったけど。私って神様のおもちゃ―――」
「そんなことはないですわ!大賢者様は立派な世界の管理者ですわ。あのちゃらんぽらん神は気にしなくて良いですわ!」
「そうだぞ。前任者なんかとは比べ物にならないくらい立派な管理者だぞ!」
「この事はあまりお気になさらないでください。神様にとって、この世界の全てがおもちゃなのですから」
あ、フウ?見も蓋もないことをさらっと。
んー、でもねぇ。そうすると何だか色変えだけでも大変だなぁ。
「『チェンジ・カラー レッド』」
色変えの魔法使ってみたけど何も起こらない。うん。予想してた。
「色変わってないよね?やっぱり」
「色変えの魔法は効かないのですか?」
「うーん…………ちょっと観てみようかぁ」
『端末』から私のステータスを表示する。外見の情報は、と………ないか。個体識別の方かな?
いくつか操作して私の固有情報を表示させた。
えと、あ、あった。髪の色と瞳の色。
何度かその場所を押しても変わらない。
あれ?ロック掛かってる?ロック情報は……………ロックレベル神って。解除コード表示―――――
ピーピーピー。
エラーが出た。
『髪と瞳の色変えは禁止。必要な時は仮コードを発行せよ』
…………………はぁ。
『端末』から顔をあげてダメだったと首を振った。
「出来ないのか?」
「出来ないというか、基本情報の変更は神レベルのロックが掛かってる。大賢者の権限では無理みたい」
がっくりソファーに突っ伏した。
色変え出来ないと冒険者になれないのかなぁ?冒険したいなぁ。一代目の大賢者の記録とか、三代目の大賢者の記録みたいにダンジョン行ってダンジョンコアとお話してみたいなぁ。
フウが優しく頭を撫でてくれた。柔らかな風が私を包む。
はふぅ………癒されるぅ~。
スイがそばに来て、口許にそっと差し出した。
「あーんですわ」
口を開けるとぽいっと入れられる。それはひんやり冷たいハチミツとレモンの氷飴。スイ特製の疲労回復薬。
「何か方法はないのか?」
エンが心配そうに聞いてくる。
うーん。方法かぁ。
魔法が効かないのは禁止に触れるからだよね。あれは一時的でも根本を変えるから。幻惑や反射による色変えは耐性のある人からみれば意味ないし。
禁止…………エラーになんて出てたっけ?
『髪と瞳の色変えは禁止。必要な時は仮コードを発行せよ』
仮コード?そういえば個体識別はコード指定だったね。識別コードはそのままで仮のコードを限定で使う?それなら根本は変わらずに一時的別人になれるってことかな?
うん。やってみよう。
「仮コードを発行出来ればいいかも。ちょっとやってみる」
仮コードは初めて。上手く出来るかなぁ?
まず、私の個体識別情報を複写してそれに仮コードを作成する。―――うん。出来た。
それに期限を決めて――――十年位で良いかな―――――私に紐付けする。仮コードを優先にして、と。
『髪色』を押すと―――選択可能な髪色が表示された。
「あ、出来たよ。弄れるみたい。期限はあるけれど変えられるよ!何色が良いかな?」
「銀髪はありますか?」
「うん。あるよ」
「ではそれで」
「銀髪は普通にいるんだね」
「いえ、いませんよ」
「…………」
あれ?珍しいから変えるんじゃないの?
「フウ。説明が足りませんわ」
スイがため息交じりで説明してくれた。
「大賢者様は例え五歳まで年齢を上げてもその知識は膨大でしょう?とても普通の五歳には見えませんわ。だから種族を人ではなくハイエルフにして、年齢はそのまま100年。森から出ずに育った、としますのよ。銀髪はハイエルフに多い髪なのですわ」
なるほど?あ、でも。
「ハイエルフは普通にいるのね?」
これは聞いておかないと。貴女誰?と言われたら困る。
「500年前は人に存在は知られていましたが、決して森からは出ませんでした。ハイエルフは変化を嫌う種族ですからおそらく今も変わらないと思います」
あ、そっか、フウは500年前に精霊女王になっんだっけ。その前は普通の精霊として世界を巡る風だったって。
「変化を嫌うなら森からは出るのはおかしくないか?耳も変えなきゃだろ?」
耳…………。
「ですが、膨大な魔法を使えて知識もあるのですからハイエルフが良いと思いますよ」
「そうですわ!ハーフハイエルフはどうかしら。変わり者のハイエルフに育てられた設定にしますの」
「お!それはいいな。姉………いや、妹がいいか。妹の忘れ形見を育てる叔母四人だな。うんうん。それで大賢者様は冒険者の父と同じく冒険者でハイエルフの母との間に産まれて、赤子の頃に両親はダンジョンで亡くなった。叔母に預けられていた大賢者様はそのまま叔母四人に育てられた。どうだ?いい設定だろう」
「私たちが叔母四人ですの?」
「変わり者のハイエルフだな」
「仕方ありませんわね。大賢者様どうかしら?」
「う、うん。わかった」
なんだかさくっと背後設定が決まってしまった。
私は冒険者の父と母をもつハーフハイエルフになるらしい。
読んでいただき、ありがとうございました。