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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
38/86

36. 王都に行こう

評価、登録、ありがとうございます!


読んで頂き感謝です。


こらからも大賢者の無自覚チートにお付き合い下さい。


 さ、行くよー、と扉を開けようとしたら鍵がかかっていた。そうだ、鍵掛けて貰ったっけ。


 アルを振り返ろうとしたら、蔦が器用に鍵穴に突っ込みガチャガチャとして、カチンと開いた。

 

「「「「……………」」」」 


 静かに蔦を見る。どこか得意そうに葉を振る蔦さん。


「……凄い!何でも出来ちゃうね!蔦さん、凄い!」

「……騎士団に欲しい人材………?葉材………?素材………?植物だ」

「………鍵の意味があるのだろうか」

「いや、お前ら冷静だな!おかしいだろ!おかしいよな?俺が間違っているのか?」

「今更だろう」

「人は驚きすぎると驚かなくなるものなんだね。初めて知ったよ」


 なんか酷いことを言われている気がする。


「そもそも、リリー何でしれっと行こうとしてる?」

「ん?」

「何処に行こうとしてるかわかってんのか?」

「アルん家」


 だあー!!とライは頭を掻き毟った。あまりやると剥げるんじゃない?


「お前が行きたい場所は王城だぞ!そう簡単に入れるわけがないだろうが!」

「そうなの?」


 アルに聞くと、少し首を傾げて、ふむ、と顎に左拳を当てた。


「大丈夫じゃないかな」

「だって」

「殿下!少しは危機感持ってください!」


 ん?ライの口調が変わったよ?


「平気だ。今、城で暮らしている王族は僕だけだ。私室に行きたいのなら騎士団から回れば良いし問題はないだろう」


 アルの口調も変わったよ?はてな?


《おそらく王子と冒険者で対応を分けているのでしょう》

《そうなの?》

《おそらくは》

《ふうん》


 色々面倒な事があるのかな?大変だねぇ。


「ですがっ」

「たった一人の王族に優秀な護衛が二人もいる。何の心配があるというのか。それにリリーは僕の客人なのだから何も問題はない」

「アルは一人なの?」

「うん、訳あってね。家族は皆、城を出てる」

「そうなんだ。寂しくないの?」

「寂しくは、ないかな。ライやカイもいるし、城内には僕を気にかけてくれる人が沢山いる。最近はリリーがいるしね」


 アルは柔らかく微笑んだ。その顔には寂しさなど微塵もなくて、安心した。


「リリーに会うと元気が出るんだ」


 ぽん、とアルの手が頭に乗った。綺麗な翡翠の瞳が優しく私を覗き込む。


「……君に会えて良かったよ」

「私もアルと知り合いになれて嬉しいな」

「そう思ってもらえるなんて光栄だよ」


 にこにこ笑い合っていたけれど、つんつん、と肩をつつかれた。ん?見ると蔦さんが扉を指している。あ!そうだった!アルん家!折角蔦さんが鍵を開けてくれたのにね。


「じゃあアルん家行こっか」


 私はライを見た。


「ライ。行ってもいーい?」


 カイさんがライの肩をぽん、と叩いた。ライと視線を合わせたカイさんは静かに頷く。ふぅ、と息を吐いたライは罰の悪そうな顔で髪をかきあげた。


「リリーを信用してないわけじゃないからな」

「うん」

「ただ王城は今部外者を受け入れるわけにはいかないんだ」

「そっか」

「だが、殿下が許可しているのを反対することはできない」

「うん」

「だから……連れてってやるよ。大人しくしてろよ」

「うーん」

「何でそこは返事でなく悩むんだよ!」

「あはははは」

 

 とりあえず笑っておく。だって私はいつも大人しいもん。騒がないし、騒動だって起こさないよ?これ以上大人しくって難しいよね?


「じゃあ、アル。アルん家に連れて行って」

「いいよ」

「どうやって行く?また馬呼ぼうか」


 アルの顔が少し引き吊った。ライはとたんに青ざめるし、カイさんはふるふるとは顔を振っている。あれ?人気ないね。

 

「い……いや。大丈夫だよ。乗ってきた馬があるからね」

「そっか。何処にあるの?」

「北門だ。そこの厩舎に入れされてもらっている」

 

 北門ね。また戻るんだ。


「リリーはギルドに寄らなくていいのか」

「うん」


 まだ依頼達成してないしね。


 アランさんに出掛けてくるね、と声を掛けて北門へと急いだ。走ってはいないよ。カイさんが抱き抱えてくれたの。長い足で歩くから早い早い。あっという間だったよ。


 北門の門番に開けてもらい厩舎の中へ入った。広い厩舎に馬は十頭ほど休んでいて、アルたちは栗毛の三頭に慣れたように鞍を着けた。アルの馬は少し小さくて優しい目をしたお馬さんだった。手を近づけたら鼻を寄せてきた。


 可愛いなぁ。


 カイさんの馬はスタイルが良くて、綺麗なお馬さんだ。近づくと頭を下げてお辞儀してくれた。


 よろしくね。


 ライの馬は鼻息が荒くて、蹄をカチカチと鳴らしているお馬さんだ。近づくとふんふんと鼻を近づけて、頬に顔を擦り付けてきた。


 好奇心旺盛だね。君は速そうだね。


「ライ、乗せてね」

「今度は落ちるなよ」

「ふふふふふ」


 不適に笑ったらライが数歩後ずさった。


「な、何だよ」

「ちゃんと蔦さんから蔦をもらってきてるのよ」


 鞄から顔を……蔦を出して葉っぱを揺らす蔦さん二号。これでライと身体を縛れば落ちないもんね。ちゃんと学習できる私は偉い!えへん!


「あれは紐だ。ただの紐。いや、緑のロープだ。揺れて見えるのは風が吹いてるからだ。絶対そうだ。紐だ、紐」

「蔦さんだよ?」

「紐だよ!紐!ひ!も!だ!」

「えー?」


 血の気が引き、ぶつぶつ唱えながらも若干震えているライに乗せてもらった。ヒラリと後ろに乗ったライは少し私と距離を取る。不満げに見上げてもライは目を反らすばかりだ。


 それじゃあ私が危ないよ。蔦さん、よろしく。


 ライと私に蔦さん二号が巻き付く。


「○☆&#£§@&◎!!!!」


 ライの言葉に成らない悲鳴が響いた。


 きつくなく、ゆるくなく絶妙な加減でしっかりと固定された。これで安全だね!


「くっ………カ、カイと乗ればいいだろうが!」

「えー?カイさんの邪魔になっちゃうよ」

「俺はいいのかよっ」

「だってライはこのくらいのお荷物平気でしょ」

「俺の心は平気じゃない!」

「大袈裟だなぁ」


 いい加減慣れればいいのに。


 喚くライを放っておいて、苦笑している馬上のアルに手を振った。


 さあ、アルん家に行こう!









読んでいただき、ありがとうございました。

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