36. 王都に行こう
評価、登録、ありがとうございます!
読んで頂き感謝です。
こらからも大賢者の無自覚チートにお付き合い下さい。
さ、行くよー、と扉を開けようとしたら鍵がかかっていた。そうだ、鍵掛けて貰ったっけ。
アルを振り返ろうとしたら、蔦が器用に鍵穴に突っ込みガチャガチャとして、カチンと開いた。
「「「「……………」」」」
静かに蔦を見る。どこか得意そうに葉を振る蔦さん。
「……凄い!何でも出来ちゃうね!蔦さん、凄い!」
「……騎士団に欲しい人材………?葉材………?素材………?植物だ」
「………鍵の意味があるのだろうか」
「いや、お前ら冷静だな!おかしいだろ!おかしいよな?俺が間違っているのか?」
「今更だろう」
「人は驚きすぎると驚かなくなるものなんだね。初めて知ったよ」
なんか酷いことを言われている気がする。
「そもそも、リリー何でしれっと行こうとしてる?」
「ん?」
「何処に行こうとしてるかわかってんのか?」
「アルん家」
だあー!!とライは頭を掻き毟った。あまりやると剥げるんじゃない?
「お前が行きたい場所は王城だぞ!そう簡単に入れるわけがないだろうが!」
「そうなの?」
アルに聞くと、少し首を傾げて、ふむ、と顎に左拳を当てた。
「大丈夫じゃないかな」
「だって」
「殿下!少しは危機感持ってください!」
ん?ライの口調が変わったよ?
「平気だ。今、城で暮らしている王族は僕だけだ。私室に行きたいのなら騎士団から回れば良いし問題はないだろう」
アルの口調も変わったよ?はてな?
《おそらく王子と冒険者で対応を分けているのでしょう》
《そうなの?》
《おそらくは》
《ふうん》
色々面倒な事があるのかな?大変だねぇ。
「ですがっ」
「たった一人の王族に優秀な護衛が二人もいる。何の心配があるというのか。それにリリーは僕の客人なのだから何も問題はない」
「アルは一人なの?」
「うん、訳あってね。家族は皆、城を出てる」
「そうなんだ。寂しくないの?」
「寂しくは、ないかな。ライやカイもいるし、城内には僕を気にかけてくれる人が沢山いる。最近はリリーがいるしね」
アルは柔らかく微笑んだ。その顔には寂しさなど微塵もなくて、安心した。
「リリーに会うと元気が出るんだ」
ぽん、とアルの手が頭に乗った。綺麗な翡翠の瞳が優しく私を覗き込む。
「……君に会えて良かったよ」
「私もアルと知り合いになれて嬉しいな」
「そう思ってもらえるなんて光栄だよ」
にこにこ笑い合っていたけれど、つんつん、と肩をつつかれた。ん?見ると蔦さんが扉を指している。あ!そうだった!アルん家!折角蔦さんが鍵を開けてくれたのにね。
「じゃあアルん家行こっか」
私はライを見た。
「ライ。行ってもいーい?」
カイさんがライの肩をぽん、と叩いた。ライと視線を合わせたカイさんは静かに頷く。ふぅ、と息を吐いたライは罰の悪そうな顔で髪をかきあげた。
「リリーを信用してないわけじゃないからな」
「うん」
「ただ王城は今部外者を受け入れるわけにはいかないんだ」
「そっか」
「だが、殿下が許可しているのを反対することはできない」
「うん」
「だから……連れてってやるよ。大人しくしてろよ」
「うーん」
「何でそこは返事でなく悩むんだよ!」
「あはははは」
とりあえず笑っておく。だって私はいつも大人しいもん。騒がないし、騒動だって起こさないよ?これ以上大人しくって難しいよね?
「じゃあ、アル。アルん家に連れて行って」
「いいよ」
「どうやって行く?また馬呼ぼうか」
アルの顔が少し引き吊った。ライはとたんに青ざめるし、カイさんはふるふるとは顔を振っている。あれ?人気ないね。
「い……いや。大丈夫だよ。乗ってきた馬があるからね」
「そっか。何処にあるの?」
「北門だ。そこの厩舎に入れされてもらっている」
北門ね。また戻るんだ。
「リリーはギルドに寄らなくていいのか」
「うん」
まだ依頼達成してないしね。
アランさんに出掛けてくるね、と声を掛けて北門へと急いだ。走ってはいないよ。カイさんが抱き抱えてくれたの。長い足で歩くから早い早い。あっという間だったよ。
北門の門番に開けてもらい厩舎の中へ入った。広い厩舎に馬は十頭ほど休んでいて、アルたちは栗毛の三頭に慣れたように鞍を着けた。アルの馬は少し小さくて優しい目をしたお馬さんだった。手を近づけたら鼻を寄せてきた。
可愛いなぁ。
カイさんの馬はスタイルが良くて、綺麗なお馬さんだ。近づくと頭を下げてお辞儀してくれた。
よろしくね。
ライの馬は鼻息が荒くて、蹄をカチカチと鳴らしているお馬さんだ。近づくとふんふんと鼻を近づけて、頬に顔を擦り付けてきた。
好奇心旺盛だね。君は速そうだね。
「ライ、乗せてね」
「今度は落ちるなよ」
「ふふふふふ」
不適に笑ったらライが数歩後ずさった。
「な、何だよ」
「ちゃんと蔦さんから蔦をもらってきてるのよ」
鞄から顔を……蔦を出して葉っぱを揺らす蔦さん二号。これでライと身体を縛れば落ちないもんね。ちゃんと学習できる私は偉い!えへん!
「あれは紐だ。ただの紐。いや、緑のロープだ。揺れて見えるのは風が吹いてるからだ。絶対そうだ。紐だ、紐」
「蔦さんだよ?」
「紐だよ!紐!ひ!も!だ!」
「えー?」
血の気が引き、ぶつぶつ唱えながらも若干震えているライに乗せてもらった。ヒラリと後ろに乗ったライは少し私と距離を取る。不満げに見上げてもライは目を反らすばかりだ。
それじゃあ私が危ないよ。蔦さん、よろしく。
ライと私に蔦さん二号が巻き付く。
「○☆&#£§@&◎!!!!」
ライの言葉に成らない悲鳴が響いた。
きつくなく、ゆるくなく絶妙な加減でしっかりと固定された。これで安全だね!
「くっ………カ、カイと乗ればいいだろうが!」
「えー?カイさんの邪魔になっちゃうよ」
「俺はいいのかよっ」
「だってライはこのくらいのお荷物平気でしょ」
「俺の心は平気じゃない!」
「大袈裟だなぁ」
いい加減慣れればいいのに。
喚くライを放っておいて、苦笑している馬上のアルに手を振った。
さあ、アルん家に行こう!
読んでいただき、ありがとうございました。




