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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
35/86

33. 錬金術は生活魔法?

評価していただき、ありがとうございます!



 漸くライから解放されてよろよろと元の場所に戻る。


「女の子の頭をぐりぐりするのは変態だって聞いたよ?ライはへんた―――」 

「ほう?まぁだぐりぐりが足りないようだな」


 凶悪な目でじとりと睨むライに、素早くカイさんの後ろに避難した。カイさんの大きな背中から、ちらりとライを見る。


「横暴ぉ、乱暴ぉ、へんたぁい」

「ほほう?」


 凶悪過ぎる半眼がギラリと睨んだ。はにゃっ、とカイさんの影に隠れる。ピタリと背中に張り付いた。ふはぁ……カイさんの背中は安心するわぁ。


 ポンポンとカイさんが後ろ手で私の背中を優しく叩いた。あやしてくれた!わぁい!


「ライ。お前が最初に手を出したんだ。暴言でも受け入れろ。リリー、ライを弄ぶのは終わりだ」

「お前、言い方!それおかしいだろ!」

「何だ。問題あったか?」

「有りすぎだろ!これだから堅物男は…」


 何やらライはぶつぶつ言い出した。よく聞き取れないけど悪口かなぁ。悪口言っても瘴気が出ないのは流石だ。口だけで心からは思ってない証拠。本当にライは分かりにくい。


 えへへ、とカイさんの腕にしがみついた。一瞬固まったけど、反対の手で優しく頭を撫でてくれる。カイさんの優しい茶色の瞳が好き。僅かに微笑む口も好き。


「カイさん大好き!」


 うふふーと見上げたら、硬直したカイさんの顔が真っ赤になっていた!あれ?熱が出た?病気?


「……お前、幼児に告られたくらいで赤くなるなよ」

「………赤くなどなっていない」

「いや、お前………」

「赤くなどない」

「……そうかよ」


 ライの目が面白そうに細められた。


「リリー、真面目硬派堅物無表情男が好みか?」

「ん?好み?」

「好きなタイプの話だ。カイが好きなんだろ?」

「えー?そうだよ。カイさん優しいもん。私は優しい人が好き。アルも優しいから大好きだよ。分かりにくいけど、ライも優しいから好きだよ」

「っ…………………………そうかよ」


 少し目元を赤くして、ライは外方を向いた。


 ふっ、と笑う声が聞こえて振り返ったら、カイさんが静かに微笑んでいた。少し意地悪そうに見えたのは目の錯覚?


「お前も赤くなってるじゃないか」

「うるさい」

「人のことは言えないな」

「黙れ」


 言い合う二人を見てたら、アルが身動ぎした気がして、起きたのかな、と近づいたけどまだ寝ていた。顔は膝掛けの陰で見えないけど。あれ?少し赤い?暑いのかな?それとも気のせい?


 残っていたジュースを飲み干して、『洗浄』して――――あ、ヒビが入った。やっちゃった。


 最近些細な魔法も威力が強くて、うっかりすると消滅してしまう。


 そういえばレベルどうなったかな?


 唐突に気になった。『端末』でステータスを確認する。


 【名前】 リリー・ハイレーン

 【種族】 ハーフハイエルフ

 【年齢】 100

 【レベル】 8

 【HP】 12,800

 【MP】 640,000

 【体力】 12,800

 【知力】 9,999,999(MAX)

 【器用度】 1,279,872

 【俊敏度】 12,800

 【運】 128,000

 【経験値】 340

 【属性】 火/水/風/土/光/闇/空間/時/聖

 【技】 剣Lv1 弓Lv4 短剣Lv1

 【魔法】 大賢者権限の全魔法

 【スキル】 状態異常無効/HP・MP自動回復/空間収納(無限)/空間転移(制限無)/創造(大賢者権限まで)/《大賢者特有スキル非表示》

 【加護】 創造神溺愛加護/四大精霊女王過保護加護/四大精霊王溺愛加護/神獣加護/四竜加護

 【特記事項】レベル条件: 現在Lv✕10の経験値獲得で1レベル上昇/パラメーター上昇率現在値✕二倍


 レベル8になってた!疲れにくいと思ったら体力上がってたんだね。おお!知力がMAXになってる。だから魔法の威力が凄かったんだ。色々上がってて嬉しいな。


 あ!弓がLv4になってる!やったぁ!最近オークも一撃で倒せるもんね。オークは動きが鈍いから外すことはないけど、最初は一撃では無理だった。上達して威力が上がったってことかな。オークも美味しいお肉だったから、損傷少ない方がいいもんね。


 んふふふーん♪


「ご機嫌だな、お前」

「ん?ライ?カイさんとの話合いは終わったの?」


 こてん、と首を傾げるとカイさんが背後から頭を撫でてくれた。


「あれは話し合いではない。気にしなくていい」

「ふうん。わかった」


 ライはどかりと座り、自分のコップを持った。でも、すでに飲み干していて空だった。空のコップを覗き込み、軽くため息を吐いてる。


「なぁ、リリー。茶か水はないのか?」


 お茶とお水?


「屋台で売ってないから持ってないよ」

「そうか。今日は暑いから持ってきた水飲んじまってねぇんだよな」


 少し残念そうにコップを眺めてる。喉が渇いてるのかな?


 ふーむ。お茶とお水かぁ。お水なら魔法で出せるけど、お茶かぁ……。ふーむ。直接訊くとライが泣きそうだし、魔法使うかな。詠唱なんて久しぶりだね。あ、大賢者だとバレないように唱えないとね。


「我 創世より続きし管理の任を授かりし者 我 請い願う 世界を巡りし風よ 我の求める物の有りかを示せ『風精霊の探索(シルフィ・ド・サーチ)』」


 私の周りで可視化した風の精霊が集まり渦を巻く。髪が舞い上がる。精霊達は私の魔力を媒介にして周辺情報を教えていく。


「……探索の、最上位魔法、だと?」


 ライの呟きに反応している暇はない。精霊から送られる情報は広範囲に渡っていて、情報分析に忙しいから。でも私は大賢者だもん。こんなのお仕事に比べればなんてことないよ。


 お茶の木、お茶の木……それは栽培してるやつね………それはまだ幼いね……それは枯れてる………それは栽培…………若くて青々してて、自生してるもの……うん、あった。これだ!


「『風の刃(ウィンドカッター) 遠隔』」


 草原の一角で自生しているお茶の木を見つけた。一番、二番の芽を切り落とし風で運ぶ。


 はらはらと手の中にお茶の葉が集まった。精霊はすでに解散していていない。


「お茶の葉が集まったよ」


 にっこり笑うと半眼のライがうっすらと笑った。


「……お前に関して疑問を持たねぇつもりだが、生の葉っぱで茶をいれるつもりか?」

「まさか」


 お茶の葉を一旦絨毯に置いて、指先に魔力を集める。私版魔力ペンだね。その魔力で絨毯に錬金魔方陣を描いていく。術式は簡単。蒸らして揉んで発酵させて乾燥させる。よし、描けた。


 中心にお茶の葉を置いて、発動。ピか!と光って紅茶の葉の完成。使いきりの魔方陣だから魔方陣は跡形もない。茶葉を鞄から出した紙の上に置き、もう一つ絨毯に魔方陣を描く。鞄から大きな空瓶を取り出して中心に置き、魔法で水を出して満たした。このままだと魔力が残る水だからね。人には毒のようなもの。魔方陣を発動して、水から魔力を分離、霧散させ、残った水を精製水に変えて、熱湯にした。ふふ、錬金術は便利な魔法だよね。


 食材加工には創造スキルを使えない。何度か試したけど、なんかよくわからない謎な物体に生まれ変わる。もちろん食べることは出来ないし何やら妖しい声を出すのでエンが高火力で焼却処分した。創造スキルと錬金術は使い分けが必要だ。


 鞄から陶器のお茶器を出して、ポットに茶葉を入れ、お湯を注ぎ蓋をする。三分待って注ぎ分ける。はい、出来上がり。うん。上手く出来た。


「はい、どうぞ。ちゃんと水から魔力は抜いてあるし大丈夫、飲めるよ」


 受け取ったカップを凝視してライは、眉間にシワを寄せる。そして同じくカップを受け取ったカイさんを見た。カイさんは立ち上る香りを嗅いでほっと息を吐く。


「いい香りだ。頂こう」


 こくりと飲んで、ふっと微笑む。


「旨いな」


 それを見たライはごくりと唾を飲み込んで、恐る恐る口を付け、目を見開いた。


「ちゃんとしたお茶になってるじゃないか」

「当たり前。いつもの作業だもん」

「いつも?」


 僅かに首を傾け、カイさんは眉をひそめる。


「こんな手の込んだ錬金術をいつも?」

「えー?じゃあお茶が飲みたいときはどうするの?」


 お茶は加工しないと飲めないんだよ。でも前にスイがお茶の葉でサラダを作ってくれたけど、ちょっと苦くて硬くて食べにくかった。あれ以来起用しないから失敗だったのかなぁ。


「そんなもん、店で茶葉を買って………ってそうか。初めての買い物が肉だったな。そもそも店がないのか」

「ないよ。必要なものは自分で作れるからね」

「は。錬金術が生活の一部なら腕も磨かれるわ」

「ちなみにその茶器も私が作った」

「何ぃ?!」


 二人はまじまじと茶器を眺める。


 白磁に緑の蔦と花の紋様。縁は金で装飾し、高台にも金で模様を付けた。カップとお皿とポットのセット。陶器の厚み、持った時の感触と重さ、口を付けたときの飲みやすさ、深さや形。様々に拘って完成した逸品だ。


「それね、錬金術の練習で作らされたの。自分が納得出来るものが出来るまで何度も。やっと完成した習作なんだ」

「どのくらい掛かったんだ」

「十年くらい?」

「………そうか………」


 カイさんが頑張ったなと撫でてくれた。えへへ。


 ライはお代わりを注いでいる。気に入ったのかな?


「お茶も普通に旨いぞ。これも練習したのか?」

「うーん、練習というか、必要だからね。作り置きが出来ないから」

「どうして作り置きがダメなんだよ」

「森の悪戯っ子達に食べられちゃうから?」

「悪戯っ子?」

「おサルさんとかリスさんとか熊さんもたまに来るね」

「「………………」」

「森の食材は分け合って食べないとね」


 流石に楽しみにしてたスイ特製のベリータルトを全部食べられた時は二日間泣いたけど。でもおサルさん達がごめんなさいとベリーを摘んで謝りにきてくれたから、もう一度スイに作ってもらって、おサルさん達と分け合って食べたよ。


「お前、意外と苦労してんだな」


 ん???くろう?何が?


 はてな?








読んでいただき、ありがとうございました。

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