32. 錬金術師
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あれから一週間たった。
毎日朝晩の食事は絶品で美味しい。仲良くなった食事の時の旅商人のおじさんは、護衛の手配が出来たからと、旅立って行った。後でジェドさんから聞いたんどけど、あのおじさんはかなり大きな商会の会頭さんで、グルメのあまり食べ歩き目的で行商しているんだとか。確かに沢山食べてたね。
ギルドの依頼も毎日受けた。毎回メアリさんから怪しげな指輪や腕輪や髪飾りを渡されるけど、その場で解除して闇魔法付与して返した。発動条件はこの魔力の持ち主が手にしたとき。でないと無関係の人が巻き込まれたら大変だもの。私が付与した闇魔法はこんな感じ。くしゃみが止まらなくなる魔法に一分毎に三分居眠りしちゃう魔法、麻痺魔法にしゃっくりが止まらなくなる魔法、おならが出続ける魔法に目脂が出て目が開かなくなる魔法。神様考案の嫌がらせ魔法だ。今まで使い道無かったけど、役に立ってるよ。
相手が付与してくるのは『解呪』と『解除』が多い。何の呪いを解きたいのか、何の魔法を解きたいのか、よくわからない。神様の嫌がらせ魔法はまだまだあるから受けて立つよ。
メアリさんから話を聞いたことを纏めると、ギルドには誰も知らないサブマスという人がいて、私が本物のハイエルフか疑っているのだとか。何それ!とても失礼だよね!まあ、魔法で姿変えてる訳じゃないし、神級魔法は神級魔法でしか解除出来ないから何の問題もないけれど。
ちょっと面倒くさい。今日この頃。
アル達とも何度か草原で一緒になった。アルはカイさん達に手伝ってもらって、ワイルドボアの討伐をしていた。すでに五体は倒していて、条件はクリアしているけど、一人で五体倒せるようになるまでは、ランクを上げないんだって。真面目だね、アルは。きっと心にとても強い信念を持っているんだ。格好良いね。
私も採取と討伐を頑張ったよ。採取は森が教えてくれるから、楽勝で十件終わった。Eランクの討伐はゴブリンやオーク、コボルトだけど、オーク以外は魔物で素材も取れないから火魔法で消滅させた。ゴブリンは集落も見つけて殲滅したけど、集落の討伐はCランクでメアリさんに叱られた。くすん。集落には時折上位種が出現するから危ないんだって。幸い上位種はいなかったからこれ以上叱られなくて済んだ。ほっ。討伐依頼もあと四件程で条件達成。ポイントも百は越えた。道は長いけど頑張らないとね。
ちなみに、お仕事はしていない。まずいなぁ、とは思っているけど、これは仕方のないこと。お仕事はどうしても三日は眠りにつくから、姿が元に戻ってしまう。宿で三日も部屋から出なくて、音もしなかったら……。うん、まずいよね。心配して扉壊されたら、お仕舞いだもの。したくないんじゃなくて、出来ないだけ。何か方法を考えなきゃね。
今はお昼時間。いつもの通り草原で討伐して、アル達に出会ったから一緒にお昼を食べている。もちろん、いつもの岩の上だ。
コカトリスの串焼きも食べてまったりしてたら、アルが寝てしまった。疲れているから寝かせて欲しいとカイさんに言われて、そのままにした。鞄に入っていたクッションをそっと顔に寄せたらギュッと抱き込んで枕になった。膝掛けも出して掛けてあげた。アルは絨毯の上ですやすやお昼寝タイムだ。うふふ、寝顔が可愛い。
ジュースをゴクゴク飲んでいたら、カイさんが済まない、と突然謝ってきた。ん???
「リリーから貰った蔦矢だが、とても便利だから量産しようと思ったんだが」
「失くなったの?まだあるよ?あげようか?」
カイさんはマジックバックから折れた蔦矢を取り出した。
「騎士団所属の錬金術師に解析を依頼したんだが、解析できず、突然矢が折れてしまって」
「部屋中が蔦だらけになった。伸びる蔦に錬金術師達が捕まって大騒ぎだ。何だよ、あれ」
ライの顔が青い。常識を越えた出来事だったみたい。ふふふ。
「錬金術で量産しようとしたんだね」
「錬金術で作ったのだろう?」
ああ、そうだった。そういうことにしたんだった。
錬金術かぁ。それは解析できないよね。創造スキルは神様と大賢者だけが持つ特殊スキル。いわば神級スキルだ。言語も神様言語だし、きっと何書いてあるか認識も出来なかったよね。
それにしても、矢が折れて蔦が伸びたのなら、分解しちゃったのかな?凄いね!分解出来たんだ!錬金術の達人が居るのかな?それなら、術式書けばわかる……かなぁ?
「蔦には材料になってもらうからそのままで大丈夫だよ」
顔色の悪いライの膝をぺちぺち叩いて大丈夫、大丈夫、と慰めてみた。半眼が深まる。あれぇ?効果なし?
鞄に手を突っ込み大量の紙の束を取り出した。羽根ペンとインク壺も取り出して、羽根ペンを壺の中に入れる。羽根ペンがインクを吸い、羽根の先まで黒に染まった。よし。
紙に錬金術で作る場合の術式を書いてゆく。一枚の紙に二十行ほど、それを十枚ほど書いた。これが錬金魔方陣の術式。繋がった一つの式だ。
「これを完璧に理解出来れば……」
別の紙に完成した魔方陣を描く。
「この錬金魔方陣を描けて起動できるよ」
はい、と渡したら、ライが術式見ながら無理だろ、と呟いた。
「初めの術式から解らねぇな」
だよねぇ?おそらく理解するには百年程必要かな。
「それが同じ蔦矢を作る錬金術ね」
羽根ペンの半分までインクが無くなったからもう一度インク壺に浸けた。ペガサスの羽根で作った特製羽根ペン。ペガサスの羽根は魔力を通す路が出来ているから、魔力の代わりにインクを通すように調整したの。インクも速乾性で滲まない特別製なんだ。えへん。
「汎用性を持たせるなら、使い捨てになるけどいい?」
「それだと簡単なのか」
「まあ、材料がね」
新しい紙にすらすらと術式を書いていく。使い捨てなら持続性の術式がいらなくて。強度を持たせるなら結合の術式を一段階上げて。どこでも作れるように材料の指定を無くして草から蔦を生成する術式を加えて。あれ?これも難しいかな?もっと簡単に、うーん……。
「簡単、簡単、手軽に……あ!」
そうだ!使い捨てるなら矢に戻す術式を止めて草に分解すれば………それならここも削れるし、これもいらない……ここを持続性から瞬発性に変えて………うん!これならすっきりしてる。
「出来たよ」
新しい紙に完成した術式を書いた。二十行ほどあるけど、たった一枚だ。魔方陣もすっきりしている。
「これなら簡単だよ。見てて」
普通なら魔力ペンで描くんだけど、元々インクに私の魔力が含まれているから私が使うならこの魔方陣で出来る。
風魔法で下の草を数本刈り取り手元に運んだ。その草を魔方陣の上に置き、発動させる。ピかー!と光って蔦矢(使い捨て)が出来た。
はい、と紙束と蔦矢(使い捨て)を渡す。
「沢山草を置けば一度に何本も作れるけど、増えた分だけ発動にそれなりの魔力が必要になるから気を付けた方がいいよ」
「何気にすげぇな」
「そ?普通だよ?」
ライは出来たばかりの蔦矢(使い捨て)を眺めて、折れた蔦矢と比べた。折れているから長さは少し比べ難いけど、質量、太さは同じはずだ。
「長さは変えられるか」
カイさんがこのくらいと両手で示した。ライから術式の紙束をもらい、この部分とここ、と場所を示した。
「この数値を変えてもらえれば長さを変えられるよ」
広がる範囲を変える場所、質量を変える場所を教えて、紙束を返した。ライは全ての紙束をマジックバックに仕舞った。
「錬金術師を捕まえてる蔦も材料になるか?」
「うん、なるよ。葉っぱを何枚かで一本かな。水と光でまた生えてくるから便利だよ」
「葉っぱを切ればいいのか」
考え込むカイさんにお願いすればいいよ、と助言する。
「頂戴って言えば貰え」
「そういうのはいい!」
ライに捕まってぐりぐりされた。なんで?
少し寂しそうなカイさんに助けを求めて手を伸ばしたけど、ライは離してくれない。カイさんは無表情でライを見たけど、ライはへへ、と笑うだけだ。カイさんは嘆息して私から目を反らした。え?諦めないで!カイさーん!
カイさんはマジックバックから蔦矢を取り出した。私があげた最初の蔦矢だね。
「この蔦は無害なのか?」
「大丈夫だよ」
「錬金術師が捕まっているのだが」
「遊びたかったんじゃないかな?普通の蔦だもん。無害だよ。仲良くなればお手伝い」
「だからそれはやめろ!」
ぐりぐりが加速した!なんで?
読んでいただき、ありがとうございました。




