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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
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2. 信用って大事だよね


 どうしてそんなに警戒されてるのかな?


 いつも真面目に仕事してるし。


 うーん。わかんない。

 

 素直に聞いてみよう。


「どうしてしょんなに警戒してるにょ?」


 また噛んだ。


「まあ。お忘れですか?前回紅くなられたときはこの精霊樹の周りに落とし穴が沢山空きましたわ」

「あれは大変だったぜ。一見水溜まりにしか見えないからな」

「フウが填まって大惨事になりましたわね」

「動物達も皆填まってたな」

「アースドラゴンが溺れるところ初めて見ましたわ」


 みんな口々に言うけど、違うもん。


「…………落し穴じゃにゃいもん。みんな暑しょうだったから水浴び出来るようにしたんだもん」

「いや、あれは落し穴だって。反射魔法で周囲と同化させて違和感なくしてただろ?水溜まりと思って踏み出したら地面がないなんて恐怖だぞ」

「違うもん。シャプライジュだもん。みんなで水浴び出来るように沢山作っただけだもん」

「あれは水浴びのレベルではありませんでしたよ。水責めをされた気分でした」

「50メートルの深さはやりすぎだぞ」

「みんなで水浴び出来るように一番大きい古竜に合わしぇただけだもん」

「「「やりすぎですっ」」」

「うぅ………」


 善意だったのにぃ。


「あとその前は、あれだ。雪だるまのゴーレム作ったやつ」


 ぽん、と手を叩いてエンが思い出した。


 ああ、とフウもスイも遠い目をする。


「あれも大変でしたね」

「何事かと思いましたわ」

「うー。ありぇは雪かきが大変だから、雪だるまにして纏めてしまえばいいと思ったんだもん。だから小さにゃ雪だるまに魔法を付与して疑似生命を与えてぇ。雪だるまを作りゅ設定と作った雪だるまに自身の疑似生命力を分け与えるようにしたりゃ、森中の雪が片付くでしょ?」

「そりゃさぁ、やりたいことはわかるけど10メートルの雪だるま集団があちこちで雪だるま作っていたらびっくりするぞ」

「私、雪だるまに囲まれていてしくしく泣く古竜、初めて見ましたわ」

「最近は皆恐れてここに近づかなくなりましたものね」

「あうー」


 はじめは10センチくらいの小さな雪だるまだったのに、雪だるま達の作るサイズがどんどん大きくなって最後は古竜サイズに。春が来て融けるまで活動してたから地響きも凄かった。あんまり大きいのはエンが融かしてくれたけど、はは、確かに警戒されるかも。


 これも善意だったんだけどな。


 上手くいかないねぇ。


 紅く変わる事に警戒される理由はわかった。ここは素直にもう一度謝っておこう。


「迷惑かけてごめんにゃしゃい」


 フウがよしよしと優しく頭をなてでくれた。


「善意でされていることは理解しておりますよ。ただ少し規模が大きすぎるのです。もう少し自重をしてくださると有難いのですが」

「はぁい」

「よしよし、素直で可愛いなぁ、大賢者様は」


 エンがぐりぐりと撫でてくれた。


 うん。地味に痛い。おかしいなぁ。私、痛覚無効のスキル持っていたと思うけど。


 あ、そういえばこの間神様来たときに何やら私のスキルいじってたような?仕事明けでぼうっとしてたからわかんないや。


「ねぇ。この前神様来た時、私のシュキル弄ってた?」

「おう、何か赤ちゃん用の無効系スキル変えてたぞ。『もう自分で対処できるから必要ないでしょ』とか言って」

「あのちゃらんぽらん神にまだ早いって言いましたのに、はははと笑って帰って行きましたわっ」


 スイの手の中で何かがバキッっと割れた音がした。パラパラと氷の破片が落ちる。


 あれ凍ったハンカチの破片だよね。ハンカチが粉々になるレベルの氷って……。怖っ!


 まあ、スイは神様天敵だから仕方ないかぁ。


 そっか。無効系が無くなったのか。


 ―――うん。何の問題も無いね。エンの愛情表現にHPが減るくらいかな。


「それで、大賢者様は何を決めたのかしら?」

「そう、それ。まだ聞いてないぞ」

「言いにくい事なのでしょうか?」


 キリッとみんなを見回して、ギュッっと両手を握った。


 今こそ!


 よし、今こそ練習の成果を!


 見せるんだ!


「私、冒険者ににゃってくりゅ!」


 やっぱり噛んだ〰️!


 練習の成果……ゼロ。撃沈。がっくり。


 エンみたいに格好よく決めたかったのに。


「まだ早いんじゃないか?」

「確か地上の冒険者登録は五歳からだとおもいますが?」

「どう見ても三歳に見えますわ」


 うん。わかってた。だから。


「『時間(テンプス・)支配(インペリウム)』」


 足元に時計の文字盤型の魔方陣が輝く。


「『対象(オブイェクトゥム)  大賢者』」


 私の身体が輝き出す。


「『跳躍(サルトゥス)500(アンヌス)』」


 眩い光が体を包み込んだ。


 手足が延びる。


 あ、髪の毛は適度によろしく。


 追加で魔力を込めたら髪は腰の長さで止まった。


 わお!お願い(魔力込みで)すれば聞いてくれるのね!


 光が収まると五歳くらいに成長した私が完成した!はず!


「どう?五歳に見える?500年くらい時間跳ばしたの」


 ソファーからスタッと降りて一回転する。


 あ、服はそのままだったからちょっときつい。


「時間魔法なんて初めて見たよ。それ神様と大賢者様しか使えない神級魔法の一つだろう?」

「うん。そう」

「それって物凄く魔力使うのではなかったかしら?」

「うん。かなり」

「大丈夫ですか?魔力枯渇になりませんか?」

「うん。大丈夫。まだ四分の三くらいは残ってる。ねぇ、五歳に見えるの?」

「「「見え(ますよ、ますわ、るぞ)」」」


 やったー!大成功!


「これなら冒険者登録できるね!」


 あ、滑舌良くなってる!


 ふふふん♪


 気分いいわぁ。


「その魔法効果はどのくらいなんだ?」

「んーと、二日くらい?」

「あら?意外と短いのですね」

「期間が長いと元に戻らなくなっちゃうからね。あまり時間は弄っちゃダメなの。一時的に年齢を変えるくらいなら大丈夫だけど」

「その度に多量の魔力を使うのは危険ではありませんか?」

「大丈夫。直ぐかけ直すなら残滓があるから少ない魔力で簡単に出来るよ」


 時間が戻るときは使った魔力の道が出来る。それを辿るだけだから簡単だ。


「これはもう認めるしかないな」

「ええ。そうですね」

「寂しいけれど、仕方ありませんわ」

「あ、じゃあ行っていいの?」

「おう」

「ええ」

「もちろん」


 やったー!


「ありがとう!フウ!スイ!エン!」


 一人一人に抱き付いてすりすりした。


「おっし、じゃあいろいろ準備しないとな」

「そうですわ、準備は万端に、ですわ」

「はじめての地上なのですから、不備の無いようにしませんと」


 三人が何やら張りきりだした。


 はて?準備って、何の?








読んでいただき、ありがとうございました。

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