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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
29/86

27. 討伐

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 アルたちと草原を歩いた。


 アルは私に渡すお金を作るために魔獣を討伐していると話した。三人ともに容量の大きなマジックバックを持っていて、ギルドで魔獣を買い取ってもらうらしい。 


 もうすでにコカトリスやワイルドボアを討伐していて、ライのマジックバックはいっぱいになっているとか。うわぁ、あのお肉かぁ。美味しいよね。


 ライがその長身でいち早く魔獣を見つけた。


「いたぞ。ホーンラビットだ」


 私に緊張が走る。アルがポン、と肩を叩いた。


「大丈夫。僕たちがいる。ホーンラビットは角が武器だ。大きな足で蹴るから初動は早い。見つけたら、十分な距離を取って攻撃の準備をするんだ」


 私にはまだ姿は見えないけど、少し離れたところで草が揺れ瘴気が濃くなってる。あそこだ。


 習った通りの姿勢を取り、矢をつがえた。


 狙いを定めて、打つ!ひゅん!


 外れた!逃げられた!悔しい!


 逃げたホーンラビットは、少し離れた場所で、こちらを警戒しながら攻撃のタイミングを図っているように見えた。


「落ち着いて狙うんだ。ホーンラビットは逃げ足が早い。外すと必ず逃げられる」


 カイさんの助言に頷いて、もう一度狙いを定めた。


 ホーンラビットと目が合う。


 ……逃げられそうだなぁ。どう狙っても避けられるよね。あ、そうだ。


 弓を下ろして、鞄から緑色の矢を出した。蔦の助言で作った矢、蔦矢だ。


 もう一度つがえて、ホーンラビットを狙う。


 ひゅん、すとん!


 ホーンラビットに避けられ地面に突き刺さった、瞬間。バッ、と蔦が広がりホーンラビットを捕らえた。


「やった!成功!」


 じたばたするホーンラビットに蔦はどんどん絡み付く。普通の矢をつがえると最も瘴気の濃い場所、心臓を狙って打った。バシン、と当たりホーンラビットから瘴気が消える。討伐完了だ。


「リリー……それは何かな」


 地面から矢に戻った蔦矢を抜き、ホーンラビットを鞄に入れた。


 声をかけてきたアルに蔦矢を見せる。


「蔦で作った矢だよ。その名も蔦矢。捕縛用に作ってみたの」

「君が作ったのかい?」

「うん、そう」

「君は錬金術も使えるんだね?」

「そう、かな?」


 錬金術?創造スキルだけど、人にはないものね。錬金術とは違うけど、そう誤魔化しておこう。


 ライが感心したように蔦矢を見た。


「これ凄ぇな。何でも捕縛出来んのか?」

「動いているもの限定だよ」


 カイさんも覗き込む。


「これは便利だな」

「いる?まだあるよ」


 二、三本取り出してカイさんに渡した。


「コツはね、打つとき少しだけ魔力を纏わせること。その魔力を使って蔦が伸びるの」

「貴重なものだろう。良いのか?」

「弓を教えてくれたから、お礼だよ」

「ありがとう。もらっておくよ」

「えへへ」


 にこにこしていたら、遠くでうわぁ!と叫び声が聞こえた。ライが素早く剣を構え辺りを警戒する。またもや声が上がりライが状況を確認する。


「ちっ!誰か失敗したな。ワイルドボアだ!こっちに向かってくる!」


 アルとカイさんも剣を構えた。


 もうもうと土煙を上げて巨大な何かが走ってくる。


 あれがワイルドボア?茶色くて丸くてものすごく大きい身体だ。岩があっても木があっても一直線に走ってくる。


 岩、砕けたね。……木、折れたね。……うん。止まらないんだね。

 

 え?あれと戦うの?


「リリー。ワイルドボアはCランクの魔獣だ。一度興奮状態になるとものすごい早さで突進してくる。ああなるともう止まらない。今からでは逃げるのは難しい。必ず守るから、僕の後ろにおいで」


 アルは真剣な眼差しで私を自身の背後に庇った。カタカタと剣が鳴る。アルは手の震えを押さえようともう片方の手で押さえた。その緊張が伝わってくる。アルはDランクだと言ってた。アルにとっても強敵なんだね。恐怖に震えていても、それでも私を守ろうとしてくれるんだ。


 カイさんとライもアルの前に出て壁になってくれる。二人に気負いは無さそうだけど、タイミングを計ろうとする眼差しは真剣そのもので、緊迫した空気に身が引き締まる。


 アルは私を、二人はアルとおまけの私を守ろうとしてくれている。昨日会ったばかりで、今日たまたま遭遇しただけの私を。


 胸がほわぁと温かくなった。アルの優しさが嬉しい。二人の優しさが温かい。アルの服をぎゅっと掴んで、俯く。ダメだ。嬉しすぎて、にやにやしちゃう。思いっきり抱きついてぎゅっとしたいよっ。でも、我慢だ。そんな時じゃない!


 アル、カイさん、ライ。守ろうとしてくれてありがとう。でも、私は大賢者。こんな魔獣ごときで優しい人達を傷つけるわけにはいかない!


「アル。ワイルドボアは曲がらないのね?」

「ああ、曲がらない。走り出したら気絶するまで一直線に走る。避けても風圧で飛ばされる。立ち向かって足の健を切るしかないんだ」


 そうか。それなら。


 アルから手を離して、両手の中で魔力を練る。何枚にする?十枚?二十枚?ううん、もっとだ!


 一歩横に出る。


「リリー!出たら駄目だ!」

「『大地の壁(グランドウォール) 百』!」


 迫り来るワイルドボアの前に厚さ十センチの鉄より硬い土の壁を次々と出現させる。その数、百枚。


「なんだ?!あれは壁か?」


 突然現れた沢山の大きな壁にライが眉をひそめた。ライはカイさんと視線で遣り取りして、僅かに後ろの私を見た。刺すような視線に手を振って応えた。半眼した赤い目がため息と共に呆れ顔になる。


 視界を遮られてもワイルドボアは止まらない。近づいてきて魔獣の姿が漸く視認出来た。突き出た鼻からは荒い息が漏れ、口から伸びる長い牙には涎が光っていた。あんなのに体当たりされたら大怪我では済まされない。もしもの時は治癒魔法を使おう。


 最初の壁にワイルドボアが激突する。


 どぉーん!

 ばぁーん!

 ごぉーん!


 ワイルドボアの突進の音が響く。


 ど、どぉーん!

 ば、ば、ばぁーん!


 段々と一度で破れなくなってきたのか、どしどしどし、と足音だけが響く事が多くなった。


「……リリー、あの壁の厚さと強度は?」

「厚さは十センチで強度は鉄の二倍くらい?」

「……そうか」


 アルは少しは緊張を解いて、私を見た。


「壁は何枚かな」

「んと、百枚」


 前方でライが呆れたように呟いた。


「ワイルドボアに同情するぜ」


 僅かに同意を示したカイさんは、来るぞ、と最後の壁を睨みつける。 


 どん、どん、と打ち付ける衝撃でパラパラと砂が飛ぶ。音の感覚が長くなり、どごん!と大きい音がして、壁は崩れた。


 身構える私達の前で、ワイルドボアは巨体を震わせて倒れた。土煙が舞う。


 瘴気は消えていない。どうやら気絶したようだ。


「これなら安全に討伐出来るね」


 三人は無言で私を見て、ため息を吐いた。


 何故?


「アル、折角ですから貴方が討伐しますか」


 カイさんがアルに大人用の長剣を差し出した。あ、そっか。ワイルドボアは巨体だからアルの剣だと届かないのか。ん?でも、瘴気の濃いのは彼処だよね?


 カイさんの剣を受け取ろうとしたアルの手を止めて、ワイルドボアの腹を指した。


「アルの剣でも届くよ。ワイルドボアのお腹のここが急所」

「なんで知ってる?」


 ライの目が鋭くなった。あれ?警戒されてる?何で?まぁ、ライだからいいか。


「リリー、君は魔獣を知らないはずだろう?初めて見た魔獣の急所を何故知っているのかな」


 アルが私の手をそっと外して、剣の柄を掴む。


「見えるからだよ」

「急所が、見えるのか?」


 カイさんも警戒し始めている。


 あれれ?


 首をかしげながら、ふーむ、と考えた。二、三度ぱちくり瞬きして、あ!と気付いた。


「もしかして人は瘴気が見えないの?」

「えっ」

「なっ」

「まさか」


 三人はとても驚いた顔をした。


「「「瘴気が見えるのか?!」」」


 三人から剣呑な雰囲気は無くなった。でも何かな。珍獣を見るような視線は。


「えと、うん。見えるよ。ワイルドボアは瘴気を纏わせるけど、とても濃い部分があるの。そこが急所だと思う。ホーンラビットはそこを打ったら瘴気消えたし」


 警戒を解いたカイさんが剣を鞘にしまいながら近づいた。先程はすまなかった、と頭を撫でてくれた。


「俺達を騙していたのかと警戒してしまった。しかし驚いたな。瘴気を視覚できるなんて。初めてだ」

「そうなの?瘴気は焦げ臭いし、沢山吸うと気持ち悪くなるよ」


 ライも剣を仕舞い、頬をポリポリ掻きながら、疑って悪かったよ、と会話に入ってきた。


「においもあるのか?!お前、ただの年齢詐称じゃないんだな」

「詐称してないからね!」


 相変わらず失礼だ。


 アルは深々と頭を下げて、疑ってすまなかった、と謝ってきた。


「リリーはあんな凄い魔法を使ってまで僕達を助けてくれたのに、一方的に不審人物と思い剣を向けようとするなんて、礼を欠く行動だった」


 そっか、不審人物と思われていたのか。……ああ、王子と近衛騎士だっけ。私が騙して王子に近づく刺客だと思ったのかな?ふふ、私はキリッとしてるから出来る奴に見えたのかも。うふふ。でもこうして直ぐに謝ってくれたし、誤解も解けたし問題ないよね。


《大賢者様に対しての無礼は許せませんが》

《厳しいな、シアは。でも今回は許して?》

《わかりました》


 心からの反省なのは見て分かる。私を欺こうとか思ってない。三人とも瘴気を出していないもん。強い負の感情を持たない陽の心を持つ人達だ。彼らはごめんなさいが出来る人。非を認め謝罪が出来るのは信用出来る証だ。


「うん。わかった。謝罪は受け取るね。だからもう、気にしなくていいよ」

「ありがとう」

「それよりも。お肉、じゃなかった、ワイルドボアを討伐しなきゃ」


 神妙な顔で頷き、アルは自身の剣を抜いて、私が指し示した場所に深々と突き立てた。ワイルドボアから瘴気が消える。


「初めてワイルドボアを討伐出来た」


 ぽつりと呟いて、アルは目を閉じ、一呼吸した。剣を抜き、血を払うとアルは少しはにかんだ顔でありがとう、とお礼を言ってきた。


「僕のCランク昇格の条件はワイルドボアの討伐五体。今までは身体が震えて立ち向かう事が出来なかった。でもリリー。君のおかげで勇気が持てそうだ。ありがとう」


 役に立ったのかな?アルが嬉しそうだから、私も嬉しいな。でも。


 それよりも。


「瘴気消えたよ。討伐完了だね。損傷も少ないからお肉も沢山取れるね!」

「お前な」


 何故かライにぐりぐりされた。はてな?







読んでいただき、ありがとうございました。

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