26. レクチャー
プロローグを載せました。
どこを切り取るか選べず悩みましたが、なんとか載せることが出来ました。
大賢者の冒険と成長の物語。
よろしくお願いいたします。
「弓は姿勢が大切だ。先ず肩幅に足を開いて立つ。円を描く様に利き足を後ろに移動させる。肩幅は保つように」
私は右利きだから、左足を固定して、円を描く様に右足を後ろに移動。スライムに対して身体を正面ではなくて横にするのね。足の開きは肩幅のままに。うん。これでいいかな?
「そう、姿勢はそのまま。左手で弓を握り、人差し指に矢をのせて、矢羽は弦に掛けて右手で掴む。まだ引っ張らないように」
ちょっと難しいけど、言われた通りに腕を下ろしたままで弓矢を準備した。
「いいかい。こう、両手を頭の上に上げて、右手で引っ張りながら、両手を下ろし、矢が目線の高さになったらその位置を保つ。鏃が人差し指に掛かるまで引っ張るんだ」
カイさんは弓を引く動作をしながら教えてくれた。言われた通りにすると、すんなり弦が引っ張れる。姿勢って大切なんだ。
「鏃が狙いを定めたら、左手は動かさずに、右手を離す」
すとん!
矢が真っ直ぐ飛んで、スライムの核に当たった。ジュワーとスライム溶ける。割れた核と矢が残った。
「………出来た」
近づいて、核と矢を拾う。これが核。さっきは蒸発してしまったけど、ちゃんと矢で倒せた。
「やった……!やったよ!出来た!」
《お見事です、大賢者様》
腕のシアににっこり笑って、カイさんの所に行き、核と矢を見せた。
「出来たよ!ありがとう!カイさんのおかげ!」
カイさんはちょっと驚いた顔で、核と私を交互に見た。
「参ったな。初回で成功なんて、初めて見たよ。練習しないと飛ばないはずだが、君は素質があるんだね」
弓Lv3だからね。えへん。
アルにも核と矢を見せた。
「アル、出来たよ!ありがとう!アルとカイさんのおかげ!」
「おめでとう。初めてで討伐出来るなんて、君は筋が良いんだね」
柔らかく微笑んで、アルは誉めてくれた。
やったぁ!誉められた!
ぴょんぴょん跳ねて喜んでいたら赤髪がまた失礼な事を言い出した。
「どうしてアルとカイだけなんだ?俺に感謝はないのかよ」
「赤髪には失礼ばかりで何もしてもらってないよ?」
「赤髪っ?!俺はライだ!変なあだ名を付けるな!」
ん?自己紹介する?首をかしげながら、名乗る。
「リリー・ハイレーン、です?」
「なんで疑問系なんだよ」
「なんとなく?」
半眼するライと睨み合っていたら、クスクスとアルが笑い出した。
「自己紹介なら僕もしよう」
「アルって知ってるよ?」
「ちゃんと名乗りたいんだ」
アルは優雅にお辞儀した。冒険者風の簡素な服と防具なのに、フウのような気品がある。
「僕は、アルフレッド・ティン・シャンパール。このシャンパール王国の第一王子で九歳。冒険者ランクはDだ。アルと呼んで欲しい」
では俺も、とカイさんはピシリと音が出そうな程姿勢を正すと右拳を左胸に当てて僅かに頭を下げた。ライも同じ姿勢を取り、胸に手を当てる。
「カイン・ベルファス、二十三歳、近衛騎士第三分団所属アルフレッド殿下専属護衛騎士だ。冒険者ランクはC。俺の事はカイと呼んでくれて構わない」
「ライル・カトラス、二十三歳、近衛騎士第三分団所属アルフレッド殿下専属護衛騎士。冒険者ランクはC。俺の事はライと呼べよ」
本当にちゃんとした自己紹介だった。私もしなきゃね。
「えと、リリー・ハイレーンです。歳は百歳、ハーフハイエルフです」
目を見開いて、三人が固まった。
あれ?何か間違った?名前と年齢と職種だよね?あとは……そうだ、ギルドランク。
「えと、冒険者ランクはFです。私だってちゃんと自己紹介できるよ」
えへん。完璧だよね。
「いや、ちげーよ。いや、違っちゃいねーけど、俺らが驚いたのは年齢だよ」
「それはライだけだろ。俺はハイエルフにハーフがいたことだ」
「僕はハイエルフが実在していたことかな」
驚く要素が違ってた!
ライが呆れたように私を見る。
「こんなチビなのに俺より年上って年齢詐称し過ぎだろ」
「詐称してなーい!」
カイさんが腕組みして考え込みながらライに応える。
「ハイエルフは長命種だ。人の一生に当てはめたら普通だろう。それよりもハーフということは他種族と婚姻したのか。それが不思議だ。長命種にとっては他種族など、蟻も同然のはずだ。よく子まで成せたな」
「そんな差別意識は持ってないよ!」
アルが少し遠慮気味に私を見た。
「ハイエルフは伝承や絵本に出てくるお伽噺の存在だと思っていたよ」
「そんな幻の存在じゃないからね!」
認識が酷すぎる。ハイエルフはちゃんと存在するよ?ハイエルフの祖は二代目だけど、数は少なくても今も隠れ住んでいるもん。ハーフは私が作ったものだし、いないかも、だけど。
ぷくっと、頬を膨らませると、アルはクスッと笑いながら謝ってきた。
「認識不足で申し訳なかった。機嫌直してくれないかな?」
「笑いながら謝るってどうなの?」
「いや、すまない。君の顔がスライムみたいで可愛かったからつい笑ってしまった」
「すらいむ…」
「そう、スライムだよ」
スライムのぷるぷるが思い浮かぶ。もっと膨れると、アルは肩を震わせて笑い出した。
クスクスが収まらないアルを見ていたら、なんだか私も可笑しくなってしまって、結局一緒に笑ってしまった。
「リリーと呼んでいいかな?」
「いいよ」
「リリーはスライムを討伐しにきたのかい」
「ううん。ホーンラビットだよ。私、魔物を見たの初めてだから、スライムで練習してたの」
アルは目を見開いて驚いた。
「見たこともないのに討伐依頼受けたの?」
「うん。知らないなら覚えればいいもの。何の問題もないよ」
「そうか。君は魔物への恐怖がないんだね。討伐は怖くないのかな」
「怖いよ。知らない事が怖い。だから知って理解したいの。ちゃんと理解すれば怖さは半減するでしょ?実際に見て、観察すれば討伐だって、怖くないよ」
知らなくて世界が滅びたら困る。瘴気は世界の膿。放っておくと世界が蝕まれてしまう。瘴気は生き物の負の心から生まれる。無くなることはない。だからこそ、大賢者は世界に降りる。世界の理と仕組みを理解し、創り直す時の参考にする為に。まあ、年齢的に早かったのは認めるけど。だって、退屈だったんだもん。
アルはふむ、と右拳を顎に当て、しばらく考え込んでいた。
「なるほど。怖いのは知らないから、か。恐怖で想像が膨らみ、より強敵に思えてしまう、ということだね。理解すれば怖さは半減する。うん、確かに。その通りだ」
アルはとても晴れやかな顔でにっこり笑った。
「この草原には様々な魔物や魔獣がいる。君一人では危ないよ。僕たちも一緒に行動しよう。少しは知識もあるし、盾くらいにはなる」
「いいの?ありがとう!」
「いざというときは、ライを盾にすればいい」
「うん、分かった。そうする」
「アル、俺の扱いが酷くないか?お前もさらっと納得するなっ」
ライの事は無視して、アルと微笑み合った。
さあ、ここからホーンラビット討伐の開始だ!
読んでいただき、ありがとうございました。




