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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
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24. 買い物


 冒険者ギルドには迷わずに着いた。


 扉を開けて中に入る。午前中の早い時間だからか、割りと込み合っていた。


 えと、確か掲示板に依頼書があるんだよね。


 掲示板は椅子やテーブルが置いてある待合所なのか、休憩所なのか、軽食が食べられる所の壁に貼ってあった。よく見ると売店もあり、パンや薬などが売られている。何人かの冒険者のグループがそこで休んでいた。


 人混みをすり抜け、E・Fランクの依頼書が貼ってある掲示板へと向かった。一番端に沢山の依頼書が貼ってあった。


 他の掲示板よりも多いね。うーんと………。


「討伐依頼、討伐依頼はっと……」


 背伸びして探した。お手伝いが多いね。今日は無理だけど、明日からお手伝いしてみようかな。討伐、討伐………。


「探しにくいだろう。椅子に乗るといいぞ」


 傍のテーブルでパンを食べていた背中に剣を背負ったお兄さんが椅子を壁に付けてくれた。しかも、靴のまま乗っていいぞ、と座面に手巾を敷いてくれた。


「一人で乗れるかい」

「大丈夫」


 よいしょ、と乗ると掲示板がとても見やすかった。


「ありがとう、お兄さん」


 笑顔でお礼を言うとお兄さんは少し照れた様に頬を掻きながら、気にするな、と笑ってくれた。この町の人は良い人が多いね。皆優しい。


「何だい、あんたデレデレして。みっともないね」

「頭のネジが飛んだか」

「幼児趣味でしたか」


 革の鎧と盾と剣を装備し無造作に纏めた赤い髪が印象的な綺麗なお姉さんと簡単な防具に斧を持った大きなおじさんと薄緑色の髪を肩まで伸ばした魔法の杖を持った背の高いお兄さんが剣背負ったお兄さんの肩を叩いた。


「朝飯食って待ってろとは言ったけどね、ナンパしてろとは言ってないよ」

「痛たたたたたた!」


 お姉さんはお兄さんの頭を両拳でぐりぐりしていた。


 びっくりして固まっていたら斧のおじさんがぽん、と私の頭を優しく撫でた。


「いい依頼は見つかったかい」

「あ、えと、討伐依頼、探してて」


 あたふたして答えると、そっと近付いてきた杖のお兄さんが一枚の依頼書を指した。

 

「ふ、だったらこれはどうかな」


 それはホーンラビットの討伐依頼だった。うん、これなら出来そう。


「ありがとう」


 お礼を言うと、おじさんはにやりと、杖のお兄さんはふっと笑って、頑張りな、と激励してくれた。


 よいしょ、と椅子から降りて、手巾に『清潔(クリーン)』を掛けて剣のお兄さんに渡した。もちろん、にっこりは忘れない。お礼は笑顔で。フウの教えは守ってるよ。


「これ、ありがとう」

「お、おう」


 たじろぎながら、剣のお兄さんは手巾を受け取った。お姉さんが腰に手を当てて少し屈んで目を合わせてきた。


「あんた、上手に魔法使うねぇ。仕事、頑張んなよ」


 ちょっと乱暴だけど温かい手で頭を撫でてくれた。


 椅子を戻そうとしたら、斧のおじさんが変わりにやってくれた。皆親切だね。


 杖のお兄さんが取ってくれた依頼書を持って列に並ぶ。二列出来ていて、皆依頼書を持っている。ちょっと時間掛かりそうだね。じりじりと進まない列に少しうんざりした、その時。


 呼ばれた気がした。列から顔を出して前方を見たら、こっちこっち、おいでおいで、とメアリさんが手招きしていた。何かな?


 メアリさんの所に行くと、カウンターに肘を付いたメアリさんがにっこり微笑んだ。


「おはよう、リリーちゃん。今日はお仕事?」

「おはよう、です。依頼受けにきました」


 どれどれ、と依頼書を受け取ったメアリさんは、討伐依頼?と首を傾げた。


「討伐出来るの?大丈夫?」

「たぶん出来ます。きっと。おそらく?」

「不安しかない返答ね。でも受理します。ギルド証貸して?」


 あれ?ここでいいの?


「あっちの列に並ばなくていいの?」

「あー、それね、私がリリーちゃん担当になったの」


 え?!そうなの?なんで?


「リリーちゃん、可愛いから並んでいるときに絡まれたら大変でしょ?だから私がリリーちゃんの担当を勝ち取りました!」

「勝ち取った?」 

「そう、じゃんけんで!」


 ガッツポーズのメアリさんに他の受付の女の人や後ろの机で仕事している人たちが恨めしそうな目で見た。列に並んだ冒険者の一部が苦笑気味に、メアリ女史はじゃんけんで負けなしだよな、と呟いていた。


「じゃあ、これからはメアリさんの所に来ますね」

「ええ、よろしく」


 鞄から出してギルド証を渡すと、メアリさんは銀色のペンのようなもので、銀盤に何かを書き始めた。あれって魔力ペンていうのだよね。ミスリルの板に魔力で文字を書ける魔道具。


 ギルド証を窪みに嵌め、小声で何かを唱えると文字が光り、ギルド証に吸い込まれた。どういう仕組みかな。人の作る魔道具は難しくて、まだ理解が出来ないんだよね。


「はい、終わったわ。ギルド証は首から下げた方がいいわよ」


 と、赤い革紐をくれた。可愛い。ギルド証の端の穴に紐を通して結んだ。首に掛けて三つ編みを抜く。胸元にギルド証が揺れた。


「…………………………ごめんね」

「ん?何か言った?」

「ううん、……可愛いって言ったの。よく似合ってるわ」

「ホント?うふふ。ありがとう」

「じゃあ、初討伐、頑張ってね」

「うん、行ってきまーす」


 メアリさんに手を振ると、列に並んだ人達から、頑張れよ、と激励の声が掛かった。その人たちにも笑顔で手を振って、ギルドを出た。


 さてと。


 噴水の縁に座って、地図を見た。


 今回の依頼はホーンラビットの討伐で、出現場所は北の草原だった。私は南門からこの町に入ったから、北門は反対側の門ね。……草原は離れてるね。ちょっと遠いかな。………これは、お弁当が必要だね。


 ふふふふふふ………。


「おはよう、おじさん!」


 昨日のおじさんの屋台に突撃した。


「おや、昨日のお嬢ちゃん。はい、おはよう」

「あのね、昨日のお肉、とても美味しかったの!だから、今日はお弁当にしようと思って、買いに来たの。初めてのお買い物だよ!」

「そうかい、そうかい。それは嬉しいねぇ。今日はワイルドボアの串焼きだよ。何本いるかな?」

「えっと、えっと」


 何本?何本食べられるかな?ワイルドボア!昨夜のシチューのお肉だよね。二本?五本?空間収納は時間停止出来るし、沢山買ってストックしておく?


「じゃあね、十本で!」

「おや、沢山だね。食べられるかい?」

「大丈夫!」


 おじさんは次々とタレを付けて焼き、十本袋に入れて渡してくれた。


「ワイルドボアは一本銅貨四枚だから、十本で銀貨四枚だよ。沢山買ってくれたから、これはおまけだよ」


 お金を渡すとおじさんは、パンを二個つけてくれた。


「わあ!ありがとう!」

「またよろしくな!」


 良い香りのお肉を胸に抱き、おじさんに手を振った。


 美味しそうなジュースの屋台で何本か大きいジュースの瓶を買い、木のコップも何個か購入した。ジュースの種類も様々だし、飲み比べしても楽しいよね。


 全部鞄に仕舞って、北門へと急いだ。南北を繋ぐ大通りは(途中に冒険者ギルドがある噴水広場がある)歩きやすく、一番の近道だ。


 北門の門番にギルド証を見せて、問題なく町を出る事が出来た。


 ここから草原まで半時間ほど歩くらしい。


 のんびり行こうかな、良い天気だしね。


 大手を振って、草原に向かった。

 


 


 




読んでいただき、ありがとうございました。

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