13. 懲りない人
「失礼します」
ノックがして、男の人が入ってきた。先程メアリさんが私のギルド証を渡した人だ。
「精算とポイント付与が終わりました」
男の人は袋とギルド証、数枚の紙束をメアリさんに手渡して出ていった。
「では、お仕事のお話をしましょうか」
まず、とメアリさんは紙束を解き机に広げた。依頼書だ。『終了』と赤いスタンプが押してある。
「依頼書が七件。
月夜茸 ✕ 三本 報酬銀貨二枚 P F
松傘茸 ✕ 一本 報酬銀貨五枚 P F
岩肌茸 ✕ 二本 報酬大銀貨六枚 P C
岩肌茸 ✕ 三本 報酬大銀貨九枚 P C
鈴茸 ✕ 三本 報酬金貨一枚 P B
ボランチェ茸 ✕ 五本 報酬金貨二枚 P B
光泡茸 ✕ 三本 報酬金貨七枚 P A
以上で七件達成、報酬合計銀貨七枚、大銀貨五枚、金貨十一枚。ポイント合計二十三付与になりました」
メアリさんは机にお金を並べた。
「確認したらまず仕舞ってね」
枚数を数えて鞄に入れた。
「では、次に買い取り分の茸代ね。鈴茸が三本で大銀貨九枚、岩肌茸が二本で大銀貨四枚、光泡茸が三本で金貨六枚。全部で金貨七枚と大銀貨三枚ね、確認して?」
渡されたお金を数えて鞄に入れた。
「たぶんポイントの話はしてないわよね?」
「うん」
「じゃあ、その説明からね。ギルドのランクはポイントを集めてランクアップするの。ランク毎に決められた条件があって、ポイントと条件の双方クリアでランクアップになる。ここまでいい?」
ポイントを集める。条件をクリアする。うん。シンプルで、分かりやすい。
「うん。わかった」
「ポイントは積算されるの。Eランクに上がるには合計二十ポイントが必要なの。条件は、採取と討伐を其々一回以上達成する事よ」
「えと、私は今は二十三ポイントだから討伐依頼をすればEランクになるのね」
「そうよ。最も本来上のランクの仕事は一つ上までと決まりがあるのだけど、今回は特別。達成出来なくて半ばお蔵入りになってた依頼だったからね。助かったわ」
上のランクはやったらダメ?何でかな?難しいから?危ないから?採取でもダメなのは…………あ!もしかしてポイントが違うから?
「ポイントはランク毎に違うの?」
「そうよ。ランクが高いと依頼の内容も難しく危険も高いためにポイントは多くつく。高ランクの依頼で早くランクアップできるけど、実力が追い付かなければ依頼失敗の末死ぬこともあるわ。だから確実に実力を付けて上がれるようにしているのよ」
そう言ってポイントの内訳を教えてくれた。
採取依頼は一件につきSは七、AとBは五、CとDは三、EとFは一。討伐依頼は一匹につきSは十、Aは五、Bは四、Cは三、Dは二、EとFは一。
条件はランクによって変わり、それは時に人によっても変わるらしい。剣術に特化した者にはそれに纏わる条件を、魔法が得意な者には魔法が必要な条件が出されるんだって。ランクが上がったときに其々に次のランクへのポイントと条件が書面により提示され、魔法契約を結ぶ。これによって条件をクリアしたかどうか誤魔化せない様にしたんだって。ただEとFは固定条件だから口頭で提示されるらしい。
ポイントを貯めながらレベルを上げる。条件をクリアしてランクを上げる。確実に冒険者を強くするシステムだね。
驚いたんだけど、このシステム、今のギルマスの時に採用されたんだって。これで冒険者の致死率がかなり減って無茶をする冒険者が減ったんだって。やっぱり顔が怖いだけの人じゃないんだね。…………すごくオソロシイけど。
「ギルマスって、親切なんだね」
「ちげぇよ。冒険者は誰でもなれるが上に行けるのは一握りだ。高ランクの依頼が山のようにあるってぇのによぉ。早く確実に育てて仕事させなきゃギルドの存続危機だぜ」
「ってギルマスは言うけど、実際は死蔵依頼が山のようにあって、仕事そっちのけでギルマスが依頼受けさせられてるのよ。だから早く後進育てて楽したいだけよ」
「めんどくせぇんだよ」
ガシガシ頭を掻いたギルマスはお茶を飲もうと湯呑みを持ったけど中は空。さっき飲み干してたもんね。茶托に戻して、メアリさんの湯呑みを掴むとぐびぐび飲んだ。
「それ、私のお茶!」
「いいじゃねぇか」
「……そういうとこですよ。デリカシーの欠片もない……」
メアリさんの気配が黒くなった。
あれ?また凍らせる、かな?
「リリーちゃん、今度指名依頼出すわ。報酬は銅貨一枚でどう?ギルマス凍らせて」
「安すぎるだろ!」
ギルマスのチョップが炸裂した
◇◇◇◇◇
「何やら騒がしいですね」
男は書類を書く手を止め、顔を上げた。
冒険者ギルドの一室。入口が無く、高い天井の天窓から降り注ぐ日の光に照らされているその部屋には金色の長髪を緩く一括りにした男しかいない。執務机と椅子、簡素なベッドとふかふかの絨毯。それだけがこの部屋の家具である。
「ま、いつものことですね。ギルマスが騒がしいのは」
翡翠の瞳を睥睨して、嘆息し、また書類書きへと意識を向ける。
階下の音に反応する耳はぴんと尖り長かった。
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