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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
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12. ギルド長室


「メアリさんはギルマスと仲がいいの?」


 階段を登りながら聞くと、一瞬立ち止まったメアリさんは、そうね、と肯定した。


「私もここでは古株だからね。付き合いが長い分仲良く見えるのかも」

「メアリさんは若いでしょ?」

「あー、何故かしら。リリーちゃんに言われると複雑だわ。見た目は私より若いのに、実際は年上なんだもの」

「そう?」

「そうよ。…………私はもうじき三十路なのよ。ギルマスは五歳程上ね。私は成人と同時にここに勤めていて。ギルマスは当時Sランク冒険者だったの」


 Sランク!あの顔の悪さと傷は冒険者だったからなんだ。あれ?成人って十五歳だよね?じゃあギルマスとは十五年の付き合い?


「色々あって今では上司と部下。昔から無茶ばかりする人でね。それは今でも変わらずね。流石に凍りついた時は驚いて狼狽えたけど、ギルマスに勝ったのはリリーちゃんが初めてよ」

「私、勝ったの?」


 あれって勝ち負け?


「勝ったのよ。だって攻撃魔法を素手で叩き弾くギルマスが成す術もなく一瞬で凍ったのよ。あれは見事だったわ」


 そうかな?えへん、て思っていいのかな?えへへへ。ちょっと嬉しい。


 にまにましてると部屋に着いた。扉に【ギルドマスター】とプレートが付いている。メアリさんがノックしようとしたら扉が開いた。


「うっせぇぞ。俺は負けてない。大体無詠唱魔法なんて対応出来るかっ」


 苦虫を噛んだ顔(凶悪な人相過ぎてどんな表情も非常に怖いんだけど、シアがぼそりと表情の種類を教えてくれるから何とか判別出来てる)で、腕を組んで待っていた。


「はいはい、負け惜しみはそのくらいで。邪魔ですよ。入れません」

「お、おう、悪かったな」


 メアリさんに言われてギルマスは一歩下がった。


 室内は割りとシンプルな作りだった。大きな執務机と椅子。その背後の壁には大きな剣が飾ってある。執務机の前には大きなテーブルと四人掛けのソファーが二つ向かい合っていて、メアリさんに言われてそこに座った。メアリさんは向かいに座り、ギルマスはメアリさんの横に座った。


「失礼します」


 ノックと共に扉が開き、女性がお盆にお茶を乗せて入ってきた。ギルマスとメアリさんにはお茶、私にはジュースの入ったコップが置かれた。一礼して出ていく女性を見送って、ジュースを、こくりと飲んだ。


「さてと、本題だ。お前、どのくらい魔法出来る?」


 ギルマスの質問に首を傾げる。


「秘密にしないと駄目って言ってたよ?」

「おう、そうだったな。だが、ここはギルドマスター室だ。俺はギルマスでメアリは職員だ。冒険者の能力は把握しておかなければいけねぇんだよ。もちろん守秘義務は守る」

「あのね、リリーちゃん。もし不測の事態が起こった時に適切に冒険者を派遣する必要があるの。新人は能力が低いからレベルアップと共にギルドも能力を把握していくんだけど、リリーちゃんは最初から飛び抜けているわ。だから教えて欲しいの」

「無詠唱魔法が使えるガキなんざいねぇぜ。ましてや治癒魔法なんてよ」

「治癒魔法は珍しいの?」

「珍しいと言うか治癒魔法は光属性でしょ?攻撃属性との相性最悪で掛け持ち二属性持ちはいないはずなのよ」


 あれ?地上ではそうなの?精霊界では普通だけど。色々違うんだね。


 でも。


「どのくらいって何が?」


 種類?威力?何を答えれば良いのかな?


「魔法だ、魔法。どんな魔法を使える?」

「全部」

「全部って何だ。氷魔法全部か?つか、氷魔法って何だよ。そんな魔法聞いたことないぞ」

「氷魔法は氷魔法。水魔法から派生した魔法だよ。私が使えるのは全ての魔法。地上に存在する魔法全て」 

「「……………全て?」」

「うん。魔法全部」


 ギルマスとメアリさん、二人とも目をぱちくりさせた。ホント仲良いよね。


「いや、ちょっと待て。全部ってあれか?火魔法とかもか?」

「使えるよ」


 指先に炎を灯した。部屋の物を消滅させてはダメだから、威力は仄かに温かいくらい。シアとの練習の成果だよね。


「え?……ねぇ、リリーちゃんの属性って何?」

「え?だから全部」

「それって基本四属性に光、闇属性加えた六属性ってこと?」

「ん?六属性しかないの?」


 きょとんと聞くとギルマスとメアリさんは顔を見合わせて、いやないない、と首を振ったけど、まさか、と冷や汗をたらりと流しながら二人同時に私を見た。何かな?と首を傾げたけど、二人の動きがずっと一緒なことが面白い。仲良しだよね。


「いや、お前まさか、伝説やお伽噺の類いの魔法も使えるのか?」

「伝説?お伽噺?それって何?」

「だから転移魔法とか空間収納とかだよっ」

「まさかよね、そんな」

「使えるよ」

「「なっ……!」」


 二人は絶句した。


 あ、でも折角マジックバックもどきにしたのに言っちゃった。属性は地上では関係のないのもあるし、ごまかした方が良いよね?


「属性は六属性以上あるけど、これ以上は言わない。ギルドにはこれ以上は必要ないでしょ?」


 ちょっとキリッとした顔で言ってみた。お手本はエンのキリリ顔。


 しばらく固まっていたギルマスだったけど、ふぅ、と重い息を吐いた。


「いや、それで構わねぇ。確かにそれ以上は必要ねぇな。各種攻撃魔法が使えて、治癒魔法も使える。いざというときは転移も出来る。空間収納で荷物も運べる。これだけ知っていれば十分だ。だかな、普段は転移と収納は黙っとけ。余計なトラブルに巻き込まれる。治癒魔法はあんまおおっぴらに使うんじゃねぇぞ。変な奴らに目ぇ付けられるからよ」


 ギルマスが意外にも親切だった。ただの怖い顔の人じゃないんだ。


「はぁ、リリーちゃんはびっくり箱の様ね。でもキリッとした顔はちょっと貫禄があって格好良かったわ。姿は子供でもやっぱり年上なのね」

「お前年ばかり気にしてるな」

「だって、私よりも三倍以上も年上なのにお肌がプルプルなのよ!私なんて寝不足だけで即肌荒れなのに。お肌の秘密を知りたいじゃない!」

「お前な」


 呆れ顔のギルマスはぐびぐびとお茶を飲み干し、懐から飴のビンを出して蓋を開けると私に差し出した。


「いるか?」


 黄金色の透明な飴。これ、さっき口に入れられた飴かな?


 一粒取って口に入れた。


 蜂蜜味だ!


 優しい甘さが広がっていく。


 ギルマスも一つ口に入れて、バリバリと噛み砕いた!飴は舐めるものじゃないの?!


「ギルマス……そういうとこですよ。全く。飴は噛み砕くものじゃなく舐めるものです。ただでさえ凶悪な顔なのに、目の前でバリバリと飴噛み砕いたら子供は逃げますよ」

「ちんたら舐めてるよりはいいじゃねぇか」

「はあぁ。リリーちゃん。これがうちの冒険者ギルドのギルマスよ。次に会ったときは遠慮なく凍らせて大丈夫」

「てめぇ、いい加減にしろよ?」

「あはははは……」


 やっぱり諦めてなかった!





読んでいただき、ありがとうございました。

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