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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
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10. 飴を貰ってはダメな人


「どうして飴を貰っちゃダメなの?」


 飴をくれるのは良い人だと思うけど。


 メアリさんはうーん、と唸った後、少しこめかみをグリグリした。


「あのね。人の中には飴をあげて良い人を装ってね、誘拐する人もいるのよ。だからむやみに信用したら危険なの」

「そうなの?じゃあどんな人が信用出来るの?」

「難しいわね。まあ、この町の人はみんな良い人よ。でも他国からの冒険者も多いし、見分けは難しいわね。ただ、人攫いに多いのが、声がやたら大きい人、顔が傷だらけで怖い人、体が大きい人なの。だからその容貌には要注意ね」


 なるほど。そっか。人攫い。


 そういえば大昔の記録にハイエルフやエルフを捕まえて奴隷にした人の記録があったような。沢山のエルフやハイエルフが死んで、それから森から出なくなったって。私は今、ハーフハイエルフだからメアリさんが忠告してくれてるんだね。


《不届き者は凍らせますから安心してください》

《はは、悪い人には私も反撃するよ?》

《では、何の心配もありませんね》

《どういう意味かな》


 町に入ってからシアが物騒思考になってる気がする。


「わかった。ありがとう。気を付けるね。あ、そうだ。ここに来る前にお店のおじさんにコカトリスの串焼きを貰ったの。美味しかったよ」

「あら、そう?良かったわね。あそこのおじさんは人が良いから、一人で歩いているリリーちゃんを放っておけなかったのね」

「今度はお金払って食べてみる」

「おじさん、喜ぶわよ」

「他に美味しいものはある?」

「そうねぇ。屋台のものは大抵美味しいけど」

「屋台?」

「あら?屋台のおじさんの店じゃなかった?」

「んーと、屋台って木で出来た台と布の屋根のお店?」

「そう。それ。屋台っていうのよ。沢山ならんでいたでしょう?」

「うん。並んでた」

「屋台は競争が激しいから人気がないと潰れてしまうのよ」

「じゃあ、あのおじさんのお店は人気があるの?」

「そうよ。どんな魔獣も絶品串焼きにしちゃうのよ。今日はコカトリスでも明日はまた違う魔獣が食べれるのよ」

「わぁ!それは楽しみ!」

「ふふふ、よだれ垂れてるわよ」


 おっと、いけない。ジュルルン。


 想像したら 食べたくなっちゃった。


「リリーちゃんはホント可愛いわね。百歳には見えないわ。他には?何か聞きたいことある?」


 聞きたいこと。美味しいもの訊いたし、串焼きの話もしたし。他に?


 んー、…………あ!そうだ!訊かなきゃいけないこと、あった!


「ねえ、メアリさん。冒険者ってなにする人?」

「あ、そうよね。その説明してなかったわ」


 メアリさんは数枚の『依頼書』と書かれた紙をカウンターに広げた。


「これが『依頼書』ね。冒険者はこの依頼書から適切な依頼を選んで、それを受けるの。ランク毎に出来る依頼は変わるけど、上のランクが下のランクの依頼を受けることは禁止されていないわ。誰もやりたがらない依頼を高ランクが気分転換に受けることも稀にあるわね」


 メアリさんは一枚の依頼書を指差した。


「これは採取依頼。FやEに多い依頼ね」


 【薬草採取依頼】

   リリギ草 ✕ 三束 

   報酬  銅貨五枚


「一束は十本ね」


 てことは、リリギ草が三十本必要なんだね。


 メアリさんは隣の依頼書を指差した。


「これが討伐依頼。魔獣や魔物を討伐する依頼。これはランクによって討伐出来る魔獣や魔物が変わるわ」


 【討伐依頼】

   ランク  F

   ホーンラビット ✕ 五匹

   報酬   銀貨一枚

   追加報酬  納品一匹 ✕ 銅貨三枚

         角のみ ✕ 銅貨一枚


「えっと、まずは魔物と魔獣って?」


 どういう区別?


「食べられる魔物を魔獣と呼んでるの。ホーンラビットやコカトリス、オークなんかもそうね。スライムやゴブリン、トロルは魔物ね」


 はは、分かりやすい。


「この追加報酬って何?」

「討伐依頼は討伐すると持っているプレートにその情報が記録されるの。だから持ち帰る必要はないんだけど、魔獣の肉や魔物の部位は食用だったり、薬や錬金術の材料になるから必要な部分は追加報酬で持ち帰ってもらうの。例えばこのホーンラビットは食用になるから一匹丸ごとの値段と、持ち帰るのが大変な場合、薬の材料になる角のみでも買い取るってわけ」


 なるほど。私は空間収納があるから丸ごとで大丈夫だね。………あ、燃やしちゃったら残らないか。これは攻撃方法を考えないと串焼きにならないよね。


「次がお手伝い依頼ね。これもFやEに多い依頼よ」


 【収穫依頼】

   畑の収穫  一時間 ✕ 銅貨二枚

          籠 ✕ 銅貨一枚


「これは収穫を一時間手伝えば銅貨二枚、更に籠を一杯に収穫すれば追加で支払われるの」


 【店番依頼】

   雑貨屋店番 一時間 ✕ 銅貨三枚

   条件 三時間以上出来る者


「これは条件付きの依頼ね」 


 いろいろなお手伝いがあるんだね。私でも出来るかな?


「あとは、もう少しランクが上がらないと受けられないけど、護衛依頼、盗賊討伐依頼なんかもあるわ」

「つまり冒険者って」

「依頼を受けて報酬を貰う職業よ」

「…………冒険する人じゃなかった……」


 検索の意味なかった。がっくり。


「あらあらあら?がっかりした?」

「ううん。大丈夫。私も何か依頼受けてみようかな」

「それがいいわね。リリーちゃんのFだと、採取依頼かしら?」


 メアリさんは採取依頼を数枚並べた。


「どれにする?」


 うーんと?


 【薬草採取依頼】

   リリギ草 ✕ 三束 

   報酬  銅貨五枚

 

 これはさっきの依頼だよね。次は、


 【薬草採取依頼】

   月夜茸 ✕ 三本 

   報酬  銀貨二枚


 【薬草採取依頼】

   松傘茸 ✕ 一本

   報酬  銀貨五枚


 ん?この二つのキノコ。森から貰ったような?


 『端末』を呼び出して、持ち物検索。あ、やっぱりある。これで依頼達成かな?


「メアリさん」

「どうしたの?依頼決めた?」

「これとこれ、持ってる」

「ええ?!持ってるって今?」

「うん」


 鞄からキノコの盛り合わせの籠を出した。この籠も森の弦が作ってくれたの。感謝だね。


「これ」

「いや、ちょっと待って。何処から出てきたの?こんな大きな籠!」

「えと、鞄から?」


 ベルトの鞄をなでなでした。


「あー、もう。なんだかリリーちゃんには驚かされてばかりだわ。つまりはマジックバックなのね?」

「えと、うん。そう」

「しかも容量が大きいのかしら?」

「えーと、たぶん、そう?」

「何で疑問系なの?もう、わかったわ。じゃあ、茸を見せてね」

「どうぞ?」

「だから何で疑問系なの?全く………」


 ぶつぶつ言いながらメアリさんはキノコ籠を覗きこんで、固まってしまった。


 ギギギギギ、と音がしそうなくらいゆっくりギクシャクしながら私を見る。


「これ、どうしたの?」

「森で、貰った」

「はぁ?誰に?」

「森に?」

「…………………」

「…………………」

「ハイエルフは森の恵みを森から貰うと言うのかしら」

「そう、かな?」


 だって、本当に森から貰ったんだもん。嘘は言ってない。


「何か変だった?」

「変っていうか、月夜茸や松傘茸はともかく、幻の茸・鈴茸、滅多に採れない岩肌茸、万能薬の元・光泡茸(ひかりあわたけ)、茸の王様・ボランチェ茸まであるじゃない!」

 

 そんなに珍しいの?いつも食べてる普通のキノコだよね?


「ギルドに納品してくれるわね?」

「えー、それ、キノコ鍋にしようと――」

「ギルドに納品してくれるわね?」

「え、え、えーと」

「ギルドに、納品、してくれるわね?」

「―――――はい」


 私のキノコ鍋がぁ……。


「これで、この依頼書とこの依頼書とあの依頼書と……………二、三、四、五、六………これで全部かしら?」


 メアリさんがほくほく顔で依頼書を確認し始めた。周りは少しざわついてて、悪意はないけど、皆キノコに注目している。


 はぁ。折角美味しいキノコ鍋にしようと思ったのにな………。


 ちょっとがっくりしてたら、大きな声が響いた。


「おい、おい!騒がしいじゃねぇか!」


 お腹にズドンとくる太くて低い大きい声。


 顔を上げたら大きな男の人がいた!


「あん?なんだお前」


 ジロジロ鋭い目付きで見下ろしてくる、傷だらけのオソロシク怖い顔。


「銀髪かぁ?ハイエルフたぁ、珍しいな」


 涙が溢れてくる。


「よしよし!飴をやろう!」


 口の中に飴を入れられた!


 メアリさんの言葉が蘇る。


『ただ、人攫いに多いのが、声がやたら大きい人、顔が傷だらけで怖い人、体が大きい人なの。だからその容貌には要注意ね』


 体が大きくて、声が大きくて、顔が傷だらけで飴をくれる人!


 そんなのは――――


「人攫いだあ!うわーん!助けて!」

「なんだとー!人攫いはどこだ!」

「きゃー!いやー!」

 

 手元に残ってたカラフルキノコを投げつけた。


 ぱふん、ぱふんと粉が舞う。


「こ、こら!止めろ!何なんだ一体!」

「あー………」


 メアリさんの声が聞こえた気がしたけど攻撃の手は止めない。


 人攫いは退治しなくちゃ!





読んでいただき、ありがとうございました。

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