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大賢者の退屈な日々  作者: うり
第一章 はじめてのおつかい
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9. ギルド


 噴水を右に曲がると正面に大きな建物があった。小さな看板には剣と植物が描かれている。文字の看板は大きく『冒険者ギルド』と書かれていた。


 ここだね。


 入り口の扉は半分開いていて中を覗くと人が沢山いた。正面にカウンターがあって女性が数名立っていた。その前に列が出来ていて、順番を待っているようだった。


 よし。行ってみよう。


 キョロキョロしながら、誰も並んでいない人の所に行ってみた。


「あ、あの」


 カウンターを見上げて声をかけると、赤茶色の髪のお姉さんが緑の目を丸くして見下ろしてきた。


「あらあらあら?どうしたの?迷子?」

「違います。私、冒険者登録に来ました」

「ええ?!」


 お姉さんはカウンターに手を付き、更に乗り出してきた。


「ちょっと待って。お嬢ちゃん幾つ?冒険者登録は年齢制限があるのよ?」

「えっと、五歳くらい?」

「くらい?」

「いえ、その、ひゃ、百歳です………」

「いやいやいや、何を冗談………え?銀髪?それ本物?」

「ほ、本物、です………」

「……………………」

「……………………」

「もしかして……………ハイエルフ?」

「は、はい。ハーフですけど」

「ハーフハイエルフ!」


 ざわり、と周囲がどよめいた。


「ハイエルフだってよ!」

「本物か?」

「偽物じゃね?」

「俺声かけてみようかな」

「可愛いじゃねぇか」

「お前が相手にされるわけないだろ?」

「止めとけよ、メアリ女史が睨んでるぞ」


《不届きものが多いですね。黙らせますか?》

《だ、大丈夫。たぶん》

《不快に感じましたら魔法をお使いください。全力の初級火魔法で。町ごと消滅いたしましょう》

《なんだか物騒だよ?シア》

《恐れ入ります》

《えっと、褒めてないよ》


「あなた、町は初めて?」

「う、うん。森から出たのは初めて」


 お姉さんは、ふぅと息を吐くと、水晶玉を指差した。


「これに触ってくれる?」


 認証の水晶だ。簡単なステータスがわかるもの。金属の板に水晶玉が嵌め込まれている。


 でも……………。


「届かないぃ……」


 背伸びしても指先すら水晶に触れなかった。


「あら、やだ。ごめん、ごめん」


 お姉さんは木の椅子を持ってきてくれて、座らせてくれた。良い人だ!


 今度は両手でペタリと触った。ほわーと光って水晶の下の金属の板に情報が表示される。


「リリー・ハイレーン。ハーフハイエルフ。年齢百歳。………本当だったのね」

「登録出来る?」

「出来るわ。待ってて。この情報を移して」


 お姉さんは小さな金属の板を水晶に当てた。ほわーと光っていた水晶の光が金属の板に吸収された。


「はい、完成。最初はFランクからよ」


 渡された金属の板にはF/リリー・ハイレーンと刻印されていた。金属は鉄だった。


「FランクEランクは鉄、DランクCランクは銀、BランクAランクは金、Sランク以上はミスリルとプレートが変わるの」


 なるほど。私は鉄のプレートでFランクね。


「登録料は銀貨一枚よ」

「登録料?」

「ギルドに登録するにはお金が必要なの。持ってる?」

「あ!あるよ」


 鞄からフウから貰ったお金を出した。


「これでお願いします」


 机にお金を出したら、お姉さんが固まった。何故か周囲も静かになってる。


 はてな?


「………これ、どうしたの?」

「?一緒に暮らしているおばさん(ゾワッ)……いえ、お姉さんがくれました」

「その人もハイエルフ?」

「はい。んーと、五百年くらい前に使ってたって言ってた」


 またもや、ざわり、と周囲がどよめいた。


「本物?」

「いや、偽物だろ」

「旧帝国金貨なんて初めてみたぞ」

「あれ今、帝国が集めてるっていうじゃないか」

「プレミアムついて価値は百倍以上って聞くぞ」

「くそ、譲ってくれないかな」


 なんとなく、悪意が見えた気がした。


 こっそり『端末』を呼び出して、周辺の悪意の元になる感情を『削除』する。消去すると感情が失くなっちゃうから、一時的な喪失で削除処置。うん。穏やかになった。


「あのね、リリーちゃん。言いづらいんだけど、このお金は今は使われてないの」

「えっ???」

「だから、これでは支払えないのよ。この金貨は高額すぎてギルドでも換金できないし。困ったわね」


 お姉さんと二人でへにょりと眉を下げた。


 どうしよう。登録出来ない。


「僕が買い取ろう」


 背後で声がした。


 振り替えると私よりも少し年上の少年が立っていた。背後に二人の青年もいる。


 誰だろう。


 『端末』で簡易検索してみる。


 金髪、翡翠の瞳の少年から。


【名前】アルフレッド・ティン・シャンパール

【種族】人族

【年齢】九歳

【職業】シャンパール王国第一王子


 へぇ、王子。ふうん。


 青い髪の青年は。


【名前】カイン・ベルファス

【種族】人族

【年齢】二十三歳

【職業】近衛騎士


 赤い髪の青年は。


【名前】ライル・カトラス

【種族】人族

【年齢】二十三歳

【職業】近衛騎士


 王子と近衛騎士。


 王子って王族でしょ?戦争ばかり繰り返す。信用出来る?お姉さんに聞いた方がいいかな?


「誰?」

「誰って………あー、森から出たばかり、か」


 お姉さんは頭を抱えてがっくりしている。いや、検索で王子はわかるけどね。私には関係ないし。


「信用出来る人?」

「そっち?ああ、そうね。リリーちゃんにはそれが大事か。ハイエルフだものね。人の上下は関係ないか」


 ハーフだけどね。設定上。


 うんうん、と納得して、大丈夫と頷いた。


 王子はにっこり微笑んで自己紹介してきた。


「初めまして。僕はアル。こっちは同じパーティーを組んでるカイとライ。よろしく」

「よ、よろしく」


 差し出された手を恐々握った。ちょっとだけギュッと握ってすぐに離してくれた。


「この旧帝国金貨を買い取らせて欲しい。今は手持ちがこれしかないから取り敢えずこれで。後日差額を支払うから」


 そう言ってアルは金色のお金を十枚置いた。


「…………金貨一枚が十枚?なんで?」


 騙されてる?


「そうか、君は知らないのか。この旧帝国金貨は価値が上がっているんだ。だから金貨一枚が百枚以上になっている。今はこれしかなくて申し訳ない。ギルドが証人だ。支払いは必ずする」

「わかった」

「良かった。ではこの旧帝国金貨はもらっていくよ」


 アルは私の出した金貨を大事そうに鞄にしまい、では、と青年を連れてギルドを出ていった。


 机に残った金貨を全てお姉さんに渡す。


「これで足りる?」

「足りすぎよ。ていうか、王子を見ても動じないのね。あれだけの美形に微笑まれても顔を紅くしないなんて」

「美形?」

「ふふ、そうね。あなたも美形だものね。見慣れてるか」

「よくわからない」

 

 お姉さんは金貨を一枚だけとり、残りは返してくれた。そして、じゃらり、と銀色のお金?を机に置いた。


「これは何?」

「何ってお釣…………リリーちゃん。お金使ったことある?」

「ないよ。あ、今使った」

「そうよね、そうよ。旧帝国金貨だものね」


 いい、お金はね、とお姉さんが教えてくれた。 


 一番小さいお金は銅貨。銅貨一枚でパンが一つ買えるんだって。


 銅貨十枚で銀貨一枚。

 銀貨十枚で大銀貨一枚。

 大銀貨十枚で金貨一枚。

 金貨百枚で白金貨一枚。

 あとは国同士が遣り取りする単位があるようだけど一般的ではないから覚えなくていいらしい。お姉さんも知らないって言ってた。


 えと、つまり?今は金貨が九枚と大銀貨が九枚と銀貨が九枚あるってことかな?


「わかった。ありがとう、お姉さん」


 鞄にお金をしまって、にっこり笑った。


「実際にはリリーちゃんの方が年上な気もするけどね。私はメアリ。ギルドの職員よ。わからないことは何でも聞いて」

「メアリさん、ありがとう。みんな親切で嬉しいな」

「なんか騙されそうで心配ね」

「そう?」

「いい?声が大きかったり、顔が怖かったり、大きな体だったりする人から飴をもらっても付いていったら駄目よ?そもそも飴を貰っちゃダメ」


 えっ…………。


「あら?どうしたの?」

「も、もう、貰っちゃった………」


 ぶるぶる体が震えてしまう。


 ダメだった?ダメだったかな?


「ちなみに誰かわかる?」

「門番の人」

「………あいつ………」

「ご、ごめんなさぁい」

「大丈夫よ。あいつは大丈夫」 

「本当?」

「ええ!」


 あー、良かったぁ!




読んでいただき、ありがとうございました。

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