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第3話 ギルド

 「妖術計ようじゅつけい、触れておらず。よろしいですわ。あなたもこれで冒険者よ。ここにサインを」


冒険者ギルドの中は、依頼文の白い文字で埋まった壁の黒板、冒険者からの寄贈品らしき怪物の頭蓋骨や首の剥製などでごちゃごちゃしている。

しかし、煩雑な印象と異なり、手続は滞りなくすすんだ。

笑顔の太陽がついたメトロノームみたいなこの機器が妖術計とやらなのだろうか。

私はスラスラとアルファベットっぽい、それでいてなんか違う感じの文字で自分の名前を書いていた。

この世界の言葉がわかるし話せるのも相当謎だが、文字もそうらしい。

本当に不思議だ。


「妖術計なんて、何の意味があるのかね。あのアホ面太陽が沈むのなんか見たことないよ」


アンデスがフンと鼻を鳴らす。


「魔物が強かった時代には、ヤフーやエルフに化けて街に入る個体もいたのよ。その名残りね」


エーヴァが解説してくれる。

昨日のゴブリンみたいなやつだけでなく、そんなものがいるなら恐ろしい話だ。


「武器や防具はレンタルすることも出来ますよ。どうします?」


私に金がないのを感じ取ったらしい受付の妙齢の女性ーームチムチの身体にピッタリとした黒い毛織物の服、片眼鏡が印象的だーーが、そのような提案をしてきた。


「いや、これだけあれば一式揃えられるか」


そう言ってカルレは皮袋をカウンターに置いた。重い音がする。大金らしい。


「あら、未来のライバルに随分とお優しいのね。金狼きんろうのカルレさん」


「おや、俺のことを知っているのかい」


「ここ数年では大陸で5本の指に入る冒険者。知らなかったらギルドなんて務まらないわ」


なんか業界特有っぽい会話をしている横で私は慌てていた。


「あ、あの。私、そんな大金もらうわけには……」


「気になるようなら、稼げるようになったとき返してくれればいいさ。言った通り、君には素質がある。すぐに実現してしまうかもしれないよ」


正直なところ不安でしかない。

口をぱくぱくさせる私の前に、エーヴァが割って入った。


「大陸一の冒険者がそう言ってるのよ。大人しく受け取っておきなさい」


すると、受付の女性がガタッと音を立てて立ち上がった。


「大陸一の冒険者はラムゼイですからね。そこはお間違えなく」


 私はゲームの村娘みたいな服の上に胴鎧、背中には両手持ちの剣という珍妙な出立ちになって街を闊歩する。

しかし、街の中には鎧を着ていたり、弓やえびらを身につけた人、宝玉をつけた杖をつくローブの人などが普通に歩いているので違和感はなかった。

周りをきょろきょろと見渡して胸を撫で下ろす私を見て、カルレは言った。


「ま、そういうわけで、この世界ではありふれた者なのさ。冒険者というのは」


「はい、なんだかやっていけそうな気がしてきました」


「それはよかった。それでは、ここらでお別れとしよう。名残惜しいが、君も冒険者としての気構えができてきたようだしな」


アンデスがおおげさに首を振って嫌がる。


「えー、ずっと一緒に行こうよぉー。薄情だなぁ、カルレ」


エーヴァがアンデスの頭を掴んで止める。


「だまらっしゃい、アンデス」


「みなさん、何から何までお世話になりました。いつか、必ず恩返しします」


カルレが微笑んだ。


「楽しみにしているよ、その日を」


私は三人に見送られて、適当に見つけた安宿に泊まった。

部屋に備え付けられた鏡を見て驚いた。

へぇ、この世界ガラスはあるんだ、とかそういうことではない。

この顔は、私の顔ではない。

よく似てはいるが。

小川の水面を見たときに感じた違和感の正体はこれか。

まるで私を元にして作ったアバター、といった感じだ。

心なしか表情はキリッとしているし、ガサガサだった肌は綺麗になっている。

鼻もやや高くなっているし。

美少女、といって差し支えないレベル。

私version2.0が爆誕!

待て待て待て。

私は今まで異世界に転移した、みたいな想像をぼんやりと働かせていた。

しかし、身体が別人になっているとなると、これは異世界転移じゃなくて異世界転生なんじゃないか?

それに、今までの私の身体は、あのまま屋上から落ちてぐちゃぐちゃに……?

私は、墜落してトマタマみたいになった元の女子高生の自分について想像する。

家族はどうしているだろう。少なくとも、兄さんは泣いている気がする。そんな事を考えると、私の目にも涙が溢れてきた。

ひとしきり泣いた後、まあ、もうどうしようもないし、という事で私は取り敢えず寝た。

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