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第15話 使用人

 「家令かれいを務めさせていただきます、セバスチャンと申します。お屋敷の維持、ベルガ村からの税収処理など、全て私が担当させて頂きます」


「そんな職務の人がいたら領主たる私は完全にスポイルされてしまいそう……」


「実際、家令に領地経営をまかせきりの領主は多いな。ま、冒険者を続けたいと言うなら止めはしないが、たまには屋敷に戻ってやれよ」


トロイエ殿下は苦笑する。

王族に列せられた次の日、トロイエ殿下は私の使用人となる人達を紹介してくれた。

スティーブンスは生姜色の短髪をした男性のエルフであった。

彼の格好は貴族のようではあるが、どこか古ぼけた印象を受ける。

もしかしたら色合い等で貴族とは違うのだとわかるように、わざとやっているのかもしれない。


「従僕をまとめる執事のスティーブンスです」


「女中をまとめる家政婦のケントンです」


「料理人のオリバーです」


この辺の人達が使用人の中心的人物らしい。

気になったのはシェフのオリバーがヤフー族のほかは、全員エルフだという事だ。


「ああ、エルフは高い記憶力を持っているから秘書などの職務に就く者が多いんだ」


他にも彼らが統括する数人の使用人たちを引き連れて、私とユスフは王宮を後にし、猟館に向かった。


 猟館についた私たちが最初にやったことは、夥しい遺体の処理である。ベルガ村の墓地に遺体を運び、殺されていた以前の使用人を埋葬する。ユスフはサウリアンの襲撃者三人も共同墓地に埋葬し、お経をあげていた。

惨劇の後始末を済ませ、オリバーが作ってくれた食事を摂る。


「美味しいけど、ヘルシー系だね」


「いや、ご遺体を処理したから気をつかって肉を避けたんだと思うぞ」


その日はもう休もうと、ふかふかのベッドに倒れ込む。

王宮のものほどではないが、人をダメにするベッドだった。

翌日、私はセバスチャンに懸念を伝えた。


「あの村、ベルガ村だけど、半分くらい廃村みたいになってない?若い人ぜんぜんいないし、税を納められるような状況には見えないんだけど」


「昨日の内に人をやって調べさせておりますが、ご懸念の通りでございます」


「なんか、土地の欲しい農民の人とかを招き入れて復興できないもんかしら」


「かしこまりました。出来る方策はすぐに取りましょう」


セバスチャンは恭しく一礼すると出て行った。

広間の椅子に座るユスフが、顎に2本の上腕を当てて思案している。


「この辺りは知名度がなさすぎる。有名にするような何かがあれば、人の往来も増えて村も潤うかもしれないな」


「完全にジャンルの違うゲームに突入している……有名にするって言っても特産物とか何もなさげだったけど」


「そうさなあ。あ、たとえば君が冒険者として名を上げれば、有名な女冒険者の治める村として有名になるのではないか?」


「元の路線に戻ってきた!」


私たちはセバスチャンに留守をまかせ、フライハイトに向かった。


 冒険者ギルドのアストリッドに依頼を見せてもらう。

最近の依頼で名声に直結しそうな目ぼしいものはなかった。


「めんどくさそうなので放置されている古い依頼とかありませんか」


アストリッドは記録を当たって、あ、と軽く驚いたような声をあげた。


「完全に忘れてたけど、こんな依頼もあったなー。これなんかどうかしら」


それはヨルゲン渓谷という谷に棲みついたトロールを退治してほしい、という依頼だった。

近隣にあるペテル村からの依頼である。


「報酬は……50ドラクマかぁ。なんか微妙な額じゃない?」


1ドラクマがどうも3千円くらいの価値らしいことはだんだんわかってきたので、15万円くらいだということだろう。


「トロール退治でこれはケチすぎる。誰も受けないわけだ」


ユスフはため息をつく。


「ナオミちゃんも腕を上げたみたいだし、名声のために大型モンスターの討伐に挑戦してみてもいいんじゃない?」


「トロール……私も他の冒険者の加勢で戦ったことはあるが、難敵だぞ。とにかく頑丈で」


「よし、殴り続ければ何とかなる系ならきっと大丈夫!受けます!」


私たちは猟館に戻り、トロール討伐の準備を始めるのだった。

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