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ワイルド・ソルジャー  作者: アサシン工房
第1章 傭兵と軍人
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第2話 軍人ハンニバルとの出会い

「お前は自分の利益の為だけに戦っていると言ったな。ならば俺たちと組む気は無いか? お前のような強い男が俺のチームに入ってくれりゃ鬼に金棒だぜ。もっとも、その気が無いならこの場でぶっ殺すのみだがな」


 親玉がマティアスに近づき、自分のチームへの勧誘をしてきた。


(確かに私は利己主義者だが、無抵抗の一般人を傷つけてまで金を得たくは無い。しかし、断れば殺される。ならいっそのこと無法者側に寝返ってやろうか……?)


 マティアスは悩んだ末、親玉に向かって手を差し出す。今はやむを得ず無法者の一員となり、もっと強い人間が現れたら寝返るつもりで考えていた。

 その瞬間、どこからか砲弾が飛んできて親玉に命中し、親玉はその衝撃で吹っ飛んだ。


「ぐっ……! 新手の賞金稼ぎか!? それとも……」


 親玉は体を起こし、斧を構える。

 親玉の元にやって来たのは、身長2メートルを超す、巨大なバズーカを持った筋肉質な大男だ。

 その男は茶髪で赤い瞳を持つ野性的な風貌で、戦闘服を着ており、軍人の証であるエンブレムを装着している。

 年齢は20代前半~半ばくらいだろうか。マティアスと同年代と言えるだろう。

 軍人の男はバズーカを背中に背負うと、親玉に近づき言葉を放った。


「軍からの命令だ。この荒野を荒らしている貴様を始末してやるぜ」


 軍人の男は素手の状態で親玉に飛び掛かる。親玉もすぐさま軍人めがけて斧を振り落とした。

 軍人は斧の刃を左手の指のみで受け止め、右手の拳で斧を殴って破壊した。その衝撃で斧の破片が辺りに散らばっていく。


「てめぇ、一体何者だ!? 俺は今までに軍人も何人か殺してきたが、てめぇのような化け物がいるなんて聞いてねーぞ!」

「俺の体はちょっと訳ありなんでな。生まれつき筋力や回復力が優れているんだ」


 軍人が親玉に向かってパンチを放つと、親玉も負けじとパンチで対抗する。2人の拳がぶつかり合うと、親玉の拳が破壊され、肉片が飛び散った。


「があああああっ!!!」


 親玉は激痛のあまり絶叫し、地面に膝をつく。

 軍人はさらに親玉に近づき、両手で親玉の頭部を掴んだ。そしてその両手で親玉の頭部を押し潰そうとする。


「た、助けてくれえぇぇ! もう悪い事はしねぇから! 命だけは頼む!」

「助けてくれだと? てめぇは今までそうやって命乞いをしてきた人間を助けたことがあんのか? あの世でこの女に土下座しな!」


 軍人はケイトの無残な死体を見つめつつ、両手で親玉の頭部をヘルメットごと押し潰した。親玉はその場に倒れ、潰れたヘルメットの中からは血が流れている。

 2人の戦いを見ていたマティアスは親玉が完全に死んだのを確認すると、軍人に礼を言う。


「助かったよ。礼を言わせてくれ。あなたがいなければ私は賊になり下がるところだった」

「気にすんなって。俺はこう見えても困っている奴を放ってはおけない性質でな。……ん? まさかお前は……無法地帯を中心に活動しているという噂の金髪の傭兵か!?」


 軍人はマティアスの姿を見て驚いた。荒野の無法地帯で活動する凄腕の傭兵がいるということが、軍に知れ渡っているからだ。


「その通りだ。私の名はマティアス・マッカーサー。そこの女に雇われて無法者を狩っていたが、雇い主はこのザマだ。雇い主を守れなかった私は傭兵失格だ……」

「そうか、それは残念だったな。俺の名前はハンニバル・クルーガーだ。特殊部隊として単独で任務を受けて回っているぜ。……ところでよ、いきなりこんなこと言うのもなんだが……俺と一緒に働く気はねぇか? この荒野で傭兵として生き抜くよりも、軍人になった方が豊かな生活を送れるぜ」


 ハンニバル・クルーガーと名乗る軍人からの突然の勧誘だ。

 最初は自称自警団の女に雇われ、その次に無法者の親玉に勧誘されたと思ったら、今度は屈強な軍人に誘われる。モテる男は大変だ。

 しかし、相手はすぐに死ぬヤワな雇い主でも無く、悪事を働く悪党でも無い。国家の為に働く、そして自分より遥かに強い軍人だ。

 マティアスはこのまま孤独に戦うよりも、強い人間についたほうが得だと確信した。


「断る理由は無い。むしろあなたのような強い男に誘ってもらえて光栄だ」

「よし、決まりだ! これから軍事基地に帰るぜ。運よくここにバイクが落ちている。この大きさならなんとか2人乗りで行けるだろ」


 ハンニバルは無法者の親玉が乗っていた大型バイクを起こした。

 マティアスもケイトが使っていた銃を拾い上げる。無法地帯で生きてきた者にとって、死体から戦利品や金目のものを回収するのは当たり前のことだ。

 ハンニバルは大型バイクに乗ると、マティアスに後ろの席に乗るように呼び掛ける。


「俺の後ろに乗れ。振り落とされないように、しっかり俺につかまってろよ」

「分かった。くれぐれも危険運転はやめてくれよ?」


 マティアスが後ろからハンニバルの体につかまると、ハンニバルは勢いよくバイクを発進させた。

 大の男の2人乗りは狭くて窮屈だが、手っ取り早く軍事基地へ向かうにはこれが一番だ。

 ハンニバルはあまりにもスピードを出し過ぎていて、マティアスは何度も振り落とされそうになる。


「もう少しゆっくり走ってくれ! このままじゃ振り落とされる!」

「ちんたらしてたら日が暮れちまうだろ? 俺の軍に入るなら、これくらい耐えられるようにしろよな」


 それにしても非常に荒い運転だ。ハンニバルは外見に違わずワイルドな男だった。

 しばらくすると2人は荒野を抜け、緑豊かな森林地帯に入った。

 そして出発から数十分ほど経過したところでバイクが停止した。どうやらガソリンが切れてしまったようだ。


「ちっ……こんなところでガソリン切れかよ! 軍事基地はまだまだ先だってのに!」

「盗んだバイクで、しかも大の男2人分の重量でこの距離を走ることが出来ただけ上出来だろう」


 さっきまでの荒野とは一変、辺りは木で覆われている。


(懐かしいな……森を見たのは子供の時以来だ)


 ずっと荒野で過ごしてきたマティアスにとって、大自然はとても新鮮で懐かしさを感じさせるものだった。

 よく見ると、少し離れた場所に一軒の大きな屋敷がある。


「ハンニバル、あそこに屋敷があるぞ。今日はもう遅いし、あの屋敷の人間に一晩泊めてもらえるように頼んでみないか?」

「仕方ねぇな。ついでにガソリンも譲ってもらえると良いがな」


 2人はバイクを押しながら目の前の屋敷へ向かっていった。

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