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●-4 バラバラになっていく家族

 

もう、昔の父はいなかった。

そこにいるのは、卑屈になり、一人でただ下を向く父だった。

悪いことをしても、怒鳴らず、世間が自分を笑っていると・・・。

自分のことを、恥じていた。


父は、自分では覚えていないらしい。

覚えていることもあったが、暴れたことは記憶にはなかった。


どんな気持ちだっただろう。

自分がわからない・・・

何をしたのかもわからない・・・。

それは、恐怖だっただろう。


父は、酒に溺れていった。

父の飲み方は、純情ではなかった。

きっと、わすれられたのだらう。

忘れていたかったのだろう。


父と姉との喧嘩は、毎日のように続いた。

姉は、父がいつまでたっても下をむき、

クヨクヨしているのが許せなかったのだと思う。

辛いのは、父だけではなく、

姉も母も私も、おなじだった。

自分だけが辛いような顔をし、

前を向かない父に、苛立ちを感じていた。


父と姉は、取っ組み合いの喧嘩で、

物は飛び交い、姉は父につかみかかった。

喧嘩の仲裁は、いつも、母と私だった。

母は、父を…私は姉を…。

それは、ほぼ、毎日だった。


そして、姉は家を出て行った。

何度か、家出をしたことはあったが、

今回は、もう、帰らない。

私にはわかった。

泣きながら、カバンに荷物をつめ、姉はこういった。


姉:「一人にしてごめんね。」

  「だけど、もうここにはいられない。」

  「ゆぅ、ごめんね。」


私も泣いていた。

姉と、また離れる。そして、私は、父との生活が始まる。


私:「いかないで。おいてかないで。」


姉は、何も言えなかった。

カバンをもち、下へ降りて行った。


母:「どこいくの!!!」

  「まって。」


姉:「ごめんね。」


一階から聞こえてくる声を私は、泣きながらきいていた。


(おねえちゃんが、、いっちゃう。。。)


窓をあけ、姉が歩いていくのを見ていた。

外は寒かった。冷たい空気を吸い、深呼吸した。

 

(バイバイ)


この日から、三人の生活が始まった。

父の顔色を伺いビクビクしていた。




そして、私は変わっていった・・・。




父は、相変わらずだった。

前をむけず、仕事とお酒・・・父にはそれしかなかった。

母は、父に何度も同じ話を繰り返ししていた。


母:「もう、いいじゃない。父さんには、家族がある。」

  「ほかに何がいるの?家族がわかってくれてる。」

  「だから、みんなで頑張ろ!」


その言葉は、父には届かなかった。


父と私は、喧嘩をするようになっていった。

父が二階にあがれば、下におり、

完全にさけていた。


そして、私は優等生ではなくなっていったのだ。


中学二年生になったころ、私は、かなり変わっていた。

学校にいけば、先生と喧嘩をし、授業にはでず、友達と遊んだ。

制服のスカートはひざ上20センチ。ルーズソックスにアクセサリー。

学校にも行かなくなっていた。

友達と一緒にカラオケにいりびたり、酒を飲んだ。


酔っぱらって学校にいったときは、さすがにこてんぱんに怒られた。


夏には、制服のままプールに飛び込んだ。

先生に見つかり、ビショビショのまま全力で走った。


先輩に呼ばれ、文句をつけられたこともあったが、

そんなもの怖くなかった。

家にいるほうが怖かった。


学校で、タバコを吸い、友達と騒ぎ、いつもゲラゲラと笑っていた。

どーでもよかった。

その時、楽しいければそれでよかった。


父にも、私の異変はきづいていただろう。

だけど、何も言ってこなかった。いや、言えなかった。

自分のせいだと思っていたんだと思う・・・。



家でご飯を食べていた時だった。

母は、ママさんバレーに行き、父と二人きり。

テレビを見ながら食べていると、いきなり父は、

私におかずの卵焼きを投げつけてきた。


私:「なんやってんの??」


私は大きな声でそういった。

頭にきていた。


父:「は??」


父は酔っぱらっていた。

箸を床にたたきつけて、父は私を殴った。

私は父に押さえつけられ、動けない。


私:「何なん、なんかした?」

  「はなせ!!お前、何なん」


父の手を振り払い、私は二階へ駆け上がった。

こんなことはしょっちゅうで、

父が嫌いだった。憎くてしょうがなかった。

昔の楽しい思い出など思い出すこともなく

ただただ憎かった。


どんな時も、父は母が帰ってくる前に私に謝ってきた。


父:「すまん。もう、しない。母さんには言わんでくれ。」


父は、私に土下座した。

そんな父が惨めだった。


中学三年になったころは、もう、学校にはほとんど行っていなかった。

いつもの仲間と公園にいき、楽しいことを探していた。

学校にいけば、ほかのクラスの授業をみんなでうけ、

私たちの特別クラスまでできていた。


公園にはいつも誰かがいた。

父と喧嘩をし、家を飛び出した時も、いつもその場所にいった。

ベンチの上にある屋根によじ登り、ねっころがって、未来の話をした。

私の逃げ場所、居場所だった。

そして、いつもそばにいてくれる仲間が、私の支えだった。


夜は町へ出かけていた。

みんなで集まる場所があり、何をするわけでもなくそこにいた。

もちろん門限はあったが、適当にかわしていた。

母に怒られるのも平気だった。


親のせいにし、学校のせいにし、私は自分のことしか

考えていなかった。

私には仲間の方が大切だった。

大人は私たちを否定する。

大人への反発心をもち、大人にはならない。

そう思った。



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