●-1 私の家族
私は、小さい頃は勉強も、スポーツもなんでもできる子供だった。
父のことが大好きで、休みの日はいつも父と一緒に過ごしていた。
父、母、姉との四人家族で、裕福ではないが、平凡でどこにでもある家族。
自分が愛されていると、感じられるそんな家族だった。
父は、自営で塗装業をしていた。
いつも、車はペンキのにおいがし、それが父の匂いだった。
今でも、塗り替えられている家の前を通るたび父を思い出す。
朝は早く、とても仕事はまじめだった。
父の楽しみは、かえってからの晩酌。
人づきあいが苦手な人で、家が大好きだった。
安い焼酎を飲みながら、おもしろくない話をきかされていた。
私は、いつも父に褒められ、
「お前はすごいなぁぁ。」
それが、父の口癖だった。
母は、家で美容室を一人でやっていて、いつも家にいた。
ワイルドな人で、私からみた母はとても強く、
エネルギッシュな人だった。
私の友達の母親と、なんだか少し違うなとおもっていた。
母がよくいっていた。
「私は、何回裏切られても、あなたを信じる。」
と・・・。
今おもうと、深い言葉だった。
嘘をついたり、約束をやぶったり、何度もあったが、
母はいつでも私をしんじてくれていた。
いや、信じてる、騙されているふりをしていた。
どんなに悪い友達と付き合っていても、母は言った。
「あなたが選ぶこと。いい所があるんでしょ?」
「自分でしっかり考えてね。」と・・・。
きっと、心配だったとおもう。
けど、信じてくれた。
お母さん、ありがとう。
姉は、私から見ても、アホな人。笑
だけど、いつも姉みたいになりたいとおもっていた。
私とは正反対で、自分の決めたことをつき通す。
なので、いつも怒られていた。
勉強はできなし、運動もすきだけれど苦手。
世間でいう、ヤンキーだった。
姉のすごいことは、後先考えないところだった。
私でも、大変になると思うことを、サラっとやってしまう。
まだ小学生だったころ、姉が家に帰ってこないことがあった。
そんなことは、今までなかったので、みんなとても心配していた。
夜の十時すぎ、、電話がかかってきた。
「拉致られた・・。」
「今どこにいるかわからない。助けて。」
「ごめん、、きた、、またかける。」
姉はそういって電話をきった。
父、母はあわてていた。
すぐに警察に電話して、母は姉の写真をにぎって警察へいった。
父は深刻な顔をして、私のそばにいた。
「何かあったら、殺してやる」
「ゆぅ、心配するな。」
そう言って父は無言だった。
姉は、本当に何を考えていたのだろう。
結局、誘拐は嘘で、友達と遊んでいた。
警察に補導され、姉と母は、家に帰ってきた。
母は、ホッとしていたが、ものすごく怒っていた。
私は、父が姉におこり、喧嘩になるとおもった。
けれど、父は姉をみた瞬間、涙を流し
「よかった・・・。」
とだけ言い、二階へあがっていった。
とんでもない事件は、これだけではないが、
姉のアホさにはいつもビックリだった。
姉は、高校にあがると、家を出て行った。
父とそりが合わず、家をでて、県外の高校へ進学したのだ。
姉がいなくなった家はとても静かだった。
さみしかった。
けれど、私が中学生になったころ、姉はもどってきた。
体調をくずし、入院するためだった。
高校をやめたことは、残念だったが、私は嬉しかった。
また、姉といっしょにいられる。
そんな風におもっていたのに、、、、
このころから、父に異変がおこりはじめたのだ。