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●-13 お別れ

葬儀の会場でのお通夜の日は、晴れだった。

私は、葬儀にはく靴がなく、友達の家に靴を借りに行った。

制服で出席するので、ローファーをかりようと、

中学時代の友達に電話をし、事情を話した。


父が死んだこと。

なぜ、死んだのか・・・。

すべてを話した。


中学時代、ずっと一緒にいた友達。

悪友でもあった。

一緒に悪いことをし、

一緒に怒られ、

毎日のように一緒にいた。



私は、友達だと思っていた。

辛いことも、なんでも話していた。

そんな友達。


でも、それは、違った。

この時、私は友達が何なのかわからなくなったのだった。



友達の家に着くと、

彼女の部屋で、タバコを吸いながら、

彼女はベッドの上で雑誌を読んでいた。


私:「ごめんね・・・朝から!!」


私は、笑顔でそういった。


友達:「靴、そこにあるよ??」


私:「ありがと!たすかるわぁ!!」


友達:「大丈夫???」


私:「うん!!」


私は、いつもと変わらないよう、必死でしゃべった。



ほんと、うちの父さんバカだから!!

これから、どうなるんかな??

と、笑いながら本心とは違うことを言っていた。



その時、友達はこう言った。



友達:「変なこと聞くけど、自殺した人って、

        身体の中身がでるってほんとなん??」



私:「・・・・・・・・・・。」

  「あっ、いや・・・父さんはキレイだったよ!!」



私の、気持ちなど、何にも感じていなかった。

はげましてくれるわけではなく、父の姿が気になり、

今の私にそれを聞くのだった。


自分の父親が、昨日自殺した友達に、

内臓がでていたかとか、眼は普通なの??

と聞ける友達と、私は、毎日一緒にいたのだった。



なんだか、一人ぼっちなきがした・・・。



私は、「ありがと!」とお礼をいい、

自転車で家に戻った。

家には葬儀屋の車が止まっていた。


父を会場に運ぶためだった。

木の棺に、父は入っていた。


心の中で、すぐ行くからね!

とつぶやき、父の乗った車を見送った。



私は、高校の制服を着て、

美容院の鏡の前で、化粧をし、

髪を束ねた。

髪はパーマがかかっていて、クルクルだった。

スカートは相変わらず、短く、靴下は、ルーズソックス。

なんだか、制服も、これが最後かな・・・・

そう感じた。


鏡に映った自分の目を見て、

また、繰り返した。



(大丈夫)、大丈夫、大丈夫)

(絶対に泣かない。みんなの前で泣かない)


かわいそうだと、思われたくない。

心の中では、自分でなくてよかったとおもっている人たちに、

同情なんてされたくない!



姉も、母も、夕菜も、会場に行く準備をし、

車に乗って、会場に向かった。

車の中でピッチを見ると、メールが入っていた。


二週間前に付き合った彼氏、ようすけからだった。


「今日、行くから。場所教えて。」


それだけだった。

メールを打ち返し、友達にも報告した。


最近、よく一緒にいた高校の友達にだけ、

父が死んだこと、今日、お通夜があることを伝えた。



画面を、みていると、留守電がはいっていた。


(誰だろ・・・気付かなかった・・・)


何気なく、留守電を聞いてみた。



それは・・・・父からだった。



「ゆぅ、ごめんな。かえってきてくれ・・・」

「また、かけるな。」


父の声だった。

悲しい声。

精一杯な気持ちが伝わってきた。


日付は、父が死んだ日の昼間のものだった。



まったく気付かなかった。

父は、最後のSOSを私にしていた。

そして、私に、謝っていた。


(ずるいよ・・・。自分だけ謝って・・・)


私のこころは締め付けられた。

痛い、、、心が痛い。

あふれそうになる涙をこらえ、

私は、夕菜を胸にだき、母や姉に笑顔で話しかけた。

壊れそうな母には、留守電のことは、言えなかった。



会場についた。

父の葬儀の会場は立派なものだった。

たくさんの花が飾ってあり、

しーんと静かだった。


お通夜がはじまると、

父の仕事場の同僚や、取引先、母の友達が

ぞくぞくとやってきた。

お通夜だというのに、

こんなにも人がくるのか・・・と私は驚いた。


棺に入った父を見た人たちは、涙を流し、

母に励ましの言葉をかけた。


そして、その人たちは私にも言葉を残していった。


「かわいそうに・・しっかりね。」

「お母さん助けてあげんと!。」

「あなたがしっかりせんとダメよ」

「何かあったら何でも相談しいね」


そんな、言葉を聞きながら、私は心で思った。


(かわいそうじゃない。)

(おもってないくせに。)

(自分じゃなくてよかったね。)


本当に親身になってくれる人もいただろう。

だけど、こんな言葉を何度も何度もみんなからいわれると、

うんざりしてきた。


みんなには、心筋梗塞と伝えていた。

自殺とは、言えない。

本当のことを知らない人たち。

嘘をつかなければならない事情が、

また、私をイライラさせた。



会場に、スーツをきたようすけがやってきた。

いつもは、正装なんてしそうにない彼が、

スーツだったことには驚いた。


初めて会う父に、彼は頭をさげ、私の所にやってきた。

私を見たようすけが、無表情で、


「何も言えなくてごめん。」


そうとだけ言い、私の隣に座り、無言で一緒の時間をすごした。

何も励まさない彼、同情の言葉も、表情も変わらない彼、、、

居心地がよかった。


夕食は、親族で食べた。

お酒をのみ、会食。


だんだんと、酔っぱらってきた親戚は、

なんだか、居酒屋に飲みに来ているただのおじさんだった。



笑い声が響く。

父が死んだのに、、、

どうしてゲラゲラ笑えるの。

ここは、居酒屋じゃない。

みんな嫌いだ。



イライラしてきた。

私は席をたち、

ようすけと、姉と、喫煙所にいった。


三人でタバコをすいながら、

大人って、いやだねと愚痴をこぼしていた。


イライラがとまらない。



はぁ、、、

疲れた・・・。



ようすけは、家に帰った。


私たちは、線香が消えないよう、

交代で炊き続けた。


みんなが眠っても、私は寝れなかった。

自分の家族が死んだのに、

私は怖くて仕方なかった。

夜が怖い。

父が怖い。



私の寝れない生活ははじまった。



翌朝は、葬式だった。

たくさんの人がきてくださった。

ようすけも、もちろんきてくれた。


私たちが座った席のななめ前に、大家さんがすわっていた。

そして、お経を読んでいる時に、大家さんは、隣に座る近所の人にこう言った。


「ほんとはね、自殺なんですよ。」

「もう、借り手がつかないですよ。」


隣にすわるようすけは、私の手をぎゅっと握った。



ようすけ:「俺、だまってたほうがいい??」


ゆぅ:「うん・・・。ほっといていいよ。」




ようすけは、喧嘩っぱやく、強かった。

自分の気持ちを誰であれ、ぶつけていた。

学校では、ようすけに逆らうやつはいない。

みんな、怖がっていた。


そんなようすけは、あの時、私のためにぐっとこらえてくれた。

後から、ほんとに、殴りそうだった・・・・とつぶやいていた(笑)

そんな気持ちが嬉しかった。



そう、さっきまでかわいそうにと声をかけてくれた

大家さん。

だけど、本当は人ごとで、迷惑だとおもっているのだった。

近所の人に自殺と言いふらし、おもしろがっている。

誰も信じられない。


この大家さんが、私の世界で一番嫌いな人。

父が亡くなってだいぶしてわかったことだったが、

父と最後に会話をした人だった。

父の死んだ日の夕方、大家さんは父に怒鳴っていたらしい。

何が原因なのかは、分からなかったが、

大家さんは、それを私たちには言わなかった。



世の中や、他人が憎い。




父と会える最後の時間がやってきた。

一輪の花を持ち、父の前へたった。

たくさんの人が私たち家族をみているのがわかったが

きにはならなかった。


父の棺に花をいれ、父の顔をさわった。

家族の写真をいれ、父を見つめた。


(ごめんね・・・。)


私は、泣いていた。

我慢していた涙があふれ、

大勢の前で、声をだして泣いた。

もう、父の姿はみれないんだ。

もう、さわれないんだ。

このままにしてほしい。

いろんな感情があふれ、私は泣いた。



「ごめん、、ごめん。」



繰り返した。

みんながどうんな風にみていたかはわからないが、

きっと、私を見て、かわいそうだと感じていただろう。


火葬場に移動し、父は焼かれた。


でてきた父は、骨だった。

小さな骨がたくさんあった。

頭の部分を見ても、もう父だとわからなかった。




これで、葬儀はおわった。

父とのお別れも終わった。


家にかえって、ベッドの上から、窓の外を見ていた。

何もする気にならなかった。

少し経って、ようすけが服を着替えて家に来てくれた。

何も話すわけでもなく、ただそばにいてくれた。



ようすけは、私がゆうたと付き合っているときから、

私に好きだと言ってきていた。

学校の文化祭のとき、私が彼の出店の焼きそばを買ったらしい。

そのとき、箸がなくて、

私は、走って戻り、


「はしがないです!!!」


でっかい声で笑顔でいったらしい。


一目ぼれだったと・・・。笑


彼は、私の同級生に無理やり番号を聞いて、

突然電話をかけてきた。


ようすけ:「もしもし??俺、ようすけ、わかる??」


私:「わからない・・・・。」


ようすけ:「そ。。。同じ学校!」


私:「うん・・・・。」


ようすけ:「またかけるね。」


私:「私、彼氏いるから・・・。」


ようすけ:「しってるよ!!わかった!!じゃ!!!」



そして、毎日電話してきた。

無視しても、毎日かけてきた。


ゆうたとわかれてからも彼はひつこく電話してきた。



ようすけ:「一回だけ、デートしよ!!」


私:「え???」


ようすけ:「あそこの公園でまってるから。」


そういって彼は電話をきった。

すぐにかけなおしたが、彼は電話にでない・・・。


仕方なく待っている場所にいくと、

恥ずかしそうに彼が私のそばにきた。


ようすけ:「映画いこう!!」


彼のペースだった。



そうして、ようすけと付き合うことになった。



付き合ってすぐ、私の父は自殺した。

彼は、どうしていいのかわからなかったとおもう。

そんな知りもしない彼女が、

重たい現実で呆然としている。

付き合って楽しいというよりも、

重たかっただろう。


ありがとう。そばにいてくれて。

心から、感謝してるよ。




私の不公平だと感じる人生は、

ここで、終わると思った。

これ以上悲しいことは、もう起こらないと。


だから、大丈夫!!

乗り越えよう!!


私が、みんなを守ろう!!

しっかりしよう!!


そうおもった。


けれど、悲しい現実は、ここでは終わることなかった。












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