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親友の西園寺ヒカリ

 どうも~! 私の名前は西園寺ヒカリ。

 水泳部期待の新人です!

 今日は私の大親友、日和ちゃんについて。なんとね、日和ちゃんに好きな人がいたんだけど、結城くんだったの。

 まぁ、結城くんはサッカー部のエースで本当にカッコイイし、性格に難ありって聞いたけど、そんなこと女の子が敵を減らすためについた嘘だって思ってるけどね……。

 そう、私も結城くんが好きなの! なのに、日和ちゃんも好きだなんて。しかも、応援するとか言っちゃって。こんな適当な自分がほんと嫌い。

 しかもあんな真剣な眼差しで断られるし。どんだけ結城くんのこと好きなのよ!


「……ヒカリ、どうしたの? 今日元気なくない?」

「え、そ、そんなことないけどー?」


 日和ちゃん心配してくれるのは嬉しいけど、貴方のせいで悩んでるのに。でも、それは独り善がりな自己中心的な感情なのは馬鹿な私でもわかる。

 でも、ここままだと気持ちが落ち着かないよ、一旦、外の空気でも吸いにいくかな。


「……ちょっと、お手洗い行ってくるね?」

「え、もう四時限目始まっちゃうよ?」

「う、うん、すぐ戻る!」


 あー、なんか、今の私、本当に情けないなぁ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 あー。もう、四時限目が始まってしまう。

 お兄ちゃんに告白する時間が刻一刻と近づいてくる。お兄ちゃんを好きになってから、何度もアピールしたのに全く興味を示さなかった。

 例えば、わざと下着姿でリビングに行ったり。まぁ、全く見て貰えなかったけど。

 毎日残さず料理を食べたり。これは本当にお兄ちゃんの料理が美味しいからだけど。

 雨の日に傘を忘れて、中学校まで迎えに来てもらったり。まぁ、お兄ちゃん何故か傘を二つ持っていたから、相合傘出来なかったけど。

 あれ。私のアピール成功率低くない? 

 まぁ、それはさておき、今日の放課後。お兄ちゃんに伝えなくちゃいけない。

 大好きだって。

 

「おーい、ヒカリ、授業もう始まってるぞ?」

「すみません、先生」

「いいから席につけー」

「はーい」


 あ、ヒカリ戻ってきた。

 案の定遅刻してきたわね。

「ヒカリ、遅いよ」

「……う、うん」


 なんだろう。ヒカリお腹でも壊したのかな。あからさまにテンションが低いのよね。まぁ、ヒカリだって人間だし、そんな日があっても不思議ではないわ。

 そんなことより、なんて告白しようかな。

 折角、世紀の大イベントなんだから、失敗するとわかっていても、少しでも記憶に残ってほしいもの。

 うーん。頭で考えるとパンクしちゃいそう。

 こんな時は、ノートに一旦書いておこう。そして、何回か、読む練習をするの。アウトプットインプットってやつね。

 どうしよう。まずは定番のやつね。

『ずっと前から好きでした』

 これは欠かせないわ。あとはそうね、勉強を頑張る姿とかも大好きなの。あの真剣な瞳なんて、私、どうにかなっちゃうわ。

『勉強をしているときの横顔がとても好きです。特に真っ直ぐノートを見る瞳が凛々しくて素敵です』

うんうん、あ、お兄ちゃんといったら、スポーツ。運動神経で特にサッカーが凄く上手なのよね。

『サッカーをしている姿はまるで、優雅に踊る王子でした』

 いや、これはやりすぎだわ。記憶に残ったとしても嫌な意味になっちゃう。直ぐに消そう。

「……あ」

「……? 日和ちゃん、ノート落とした……よ…………?」


 見られた! 恥ずかしすぎる。どうしよう、授業中妄想ポエム書いてる痛い女と思われてしまう!


「…………はい、日和」


 やめて! そんな顔しないで。しかも日和って。今までちゃん付けだったじゃない!

「……ありがとう、もしかして、見ちゃった?」




「………………いやなにも」


 だよね、見てますよね。

 まぁ、運よくお兄ちゃんの名前は書いていなかったから、痛いポエム女子ってとこで留まるわね、それでも結構痛手だけど。

 はぁ、張り切りすぎは駄目ね。

 自分の言葉でしっかりと伝えればいいわ。


「……で、今日はここまで、宿題は…………」


 あ。また一歩、告白まで近づいちゃった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「食堂行かないの?」

「……あぁ、食欲ない」

「……そっか。じゃ、僕も購買でパンだけ買ってくるよ」

「いいよ、食堂で食べて来いよ?」

「落ち込んでる親友を置いて、呑気に食事楽しめないよ」

 薫ってやつ本当にいいやつだな。そこまで気を使わなくてもいいのに、って言ってやりたいが、今は素直に甘えておこう。

「……ありがとう、待ってる」

「うん、待ってて!」


 薫が購買にパンを買いに行っている間、俺は相変わらず、日和のことを考えていた。決心は未だにつかないままだが。

 どうにかして日和を大好きな俺を殺して、良き兄として見られるか。

 うーん。

 薫はいっそのこと告白してしまえと言っていたが、そうではない。俺は兄として妹を眺めているだけで、幸せなのだ。

 勿論、もっと親密な関係になりたいなんて死ぬほど考えた。しかし、それは日和を悩ませる種になるのなら意味がない。

 俺は何の策も浮かばないまま、その時待った。


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