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最高な妹と最低な姉

俺は星ヶ丘喜代孝。何の変哲もないどこにでもいる普通の高校性だ。

多少顔は怖いらしいが、中身は至って普通だと、思う。普通って考えれば考えるほど、分からくなるが、まぁ、得意なことはスポーツなど身体を動かすことだ、まぁ、好きではないが。


すまない。俺のことなどどうでもいいんだ。

俺には大切な人がいる、その人について語りたいのだ。

その人は容姿端麗で、笑顔が素敵な女の子なんだ。俺のことを良く理解していて、いつも助けられている。

恋をしている、のかも知れない。

いや、確実に恋をしているのだが、それを良しとしない世界なのだ。


「……おはよー、お兄ちゃん」

「っっ! お、おはよう、ございます…………」

「……? なんで敬語? 変なのー」


そう、俺の大切な愛しの相手は、妹の日和なんだ。

挨拶するのすら、テンパってしまう。いや、いつもは冷静でいるように心掛けているが、今日は日和の妄想をしていたので、つい、驚いてしまったのだ。

いかん。こんなことでは日和に変な兄貴と思われてしまう。ただでさえ、目つきの悪い俺だ。

日和に嫌われる可能性は少しでも減らしておく、必要がある。


「おーい、きよ? 飯は~?」

「……もうすぐ、出来るよ? 並べるの手伝ってよ?」

「嫌だ、私は食べる専門だから!」

「…………駄目女」

「あぁ! 今は姉に向かって駄目女っていった! いけーないんだ、いけないんだ! 先生にいっとこ!」

「はいはい、手伝えとはいいませんから、座ってて、邪魔しないで?」


この女は美乃梨。御年21歳のニートだ。あ、一応姉だ。

美乃梨は高校生の時から急に引きこもりだして、高校中退した後、そのままの流れで、ニートになった。

まぁ、本人も色々あったのだろうが、ニートになって言い理由はない。責めて、働いてくれと切に願う。


いや、すまない、本心を話そう。

正直、姉の存在が鬱陶しいのだ。ずっと家にいるし、五月蠅いのだ。そのせいで妹と二人っきりになれるチャンスがほぼない。

いやいや、妹と二人っきりになったからってそんなやましいことするわけじゃないぞ。ちょっと風呂場覗いて、お兄ちゃんのエッチ! みたいなイベントを繰り広げたいとか、全然思ってないし。あわよくば、ホラー映画見せて、お兄ちゃん、寝れないから一緒に寝よ? みたなそんなことは妄想だけ幸せだし。


「あ、料理運ばないと……」


 こんな妄想していては一日があっという間に過ぎていってしまう。俺は手早く朝食の準備を済ませた。

「お兄ちゃん、今日も美味しいよ! この卵焼きとか、ふわふわだよ」

「そ、そうか、日和に褒めて貰えると俺も嬉しいよ」

 なんだ、この生物は。天使か? いや、そんな生ぬるいものではない。神だ。ゴッドオアゴッドだ。これは神様が生んだ、奇跡の子。なんて可愛いのだろう。アーメン。

「そう? いつもと変わらないじゃん」

「…………」

 なんだ、このごみは。さっさと廃品回収で運んでもらおう。

「お姉ちゃん、今日の予定は?」

「はぁ? ニートに予定なんてあるわけないでしょう?」

「……そ、そうですよね、はは」


 おい、そこの生ごみ姉貴。妹に気を使わせるな。日和にどうすればいいか、分からなくて苦笑いしているぞ。

 てか、なんであんな堂々としてるんだろう。あいつにはニートであることを恥ずかしいとは思わないのか。

「……あ、お兄ちゃんもう時間だよ?」

「そうだな、準備していくか」

 姉のことはさておき、これから毎朝の楽しみが始まる。

 朝は妹と一緒に登校する。妹は中学生なので、途中で別れるがそれでも姉に邪魔されない非常に貴重な時間になるのだ。


「お兄ちゃん、何か悩み事でもあるの?」

「ん? どうしてだ?」

「朝、何か、違和感あったから、何か悩み事……?」

 妹に心配されるとは、嬉しいことではあるが、非常に情けない。というより、妹のこと考えていただけなので、とても恥ずかしい。

「……顔、赤くなってるね?」

「え! いや、その…………?」

「お兄ちゃん、もしかしてさ……?」

 いかん、もしかしたら、バレているのかもしれない。俺、たまに独り言で、可愛いな日和は、とか言ってしまう時あったし。

 やばい。このままだと、日和にあの言葉を言わせてしまう。

『お兄ちゃん、きもい……』

 やだ! そんなの絶対ヤダ! やだやだやだやだ! 日和からきもいなんて言われたら俺、生きていけないよ……。

「……好きな人、とか、いるの…………?」

 そう来たか、自分の口から言わせると、罪をここで曝け出せと、妹様はそう言うのですね。

「……はい、います」

「…………そうなんですね」

「…………」

 終わった。この間は死へのカウントダウン。くる、あの言葉来てしまう!

「…………帰ったら、詳しく聞かせて、ください、それまでに覚悟を決めておきますので!」

「え、日和!」


 日和は中学校の方向へ走って行ってしまった。

 覚悟を決めるとはどういうことなのだろう。

 …………。

 あ、なるほど。俺はわかってしまった。

 日和は俺のことを思ってくれたのか。このまま、兄を軽蔑することは容易い。しかし、それだと兄は成長しない、だから、ここで軽蔑するではなく、今日という時間を使い、考え治せとそういうメッセージだ。

 もし、今日という時間を使っても、日和のことを好きな俺だった場合、覚悟を決める。

 つまり、俺はあの言葉を叩きつけられるということか。

 なんて、優しい妹なのだろう。みたか! 日和はここまで慈悲深い。こんな妹大好きシスコン野郎に猶予を与えてくださった。

 ならば、俺は大好きな妹とこれからも変わらない日々を送るために、妹を妹として、見るようにしなくてはならない。そこに「好き」という感情を抱いてはいけないのだ。


 これがラストチャンス。妹とこれからを生きていけるように、ここでしっかり、兄になろう。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 なんてことなの。お兄ちゃんに好きなひとがいたなんて。

 挨拶の時点で変だなって思ったの。だって、いつも爽やか挨拶なのに急にどもってしまうし、敬語だし。これは何か悩み事でもあるのかなって思っていたら、卵焼きがいつも以上に甘かったの、きっと考え事していたから砂糖を入れ過ぎたのね。

 そこまで言いの。甘い卵焼きのほうが私好きだし。

 でも、登校中ずっと気になって……。

 だから、聞いた。

 悩み事あるのって。そーしーたーら!! 顔真っ赤にして! 絶対恋してるって思って好きな人いるか、聞いたら、真剣な顔でいますって、知らなかった。でも、誰なんだろう。お兄ちゃんカッコイイし、スポーツ万能だし、女の子にモテるとは思ってたけど、でも、お兄ちゃんが他の誰かに捕られるなんて許せない。

 だって私は、お兄ちゃんのことが大好きなんだもん。

 可笑しいよね、兄妹なのに。わかってる、私だってもう、子供じゃないし。

 でも、好きなの!

 …………。

こんな日が来ることはわかっていたわ。

 いつか告白しなくてはならないって。

 覚悟決めなきゃ。きっと、お兄ちゃんのことだもん、傷つかないように、丁寧に断るんでしょうね。でも、この思いは止められないわ! 確率がゼロだとしても、誰かに捕られる前に気持ちだけでも!


「よ! おはよー、日和!」

「わぁ! びっくりした……」

「え? びっくりさせるつもりなかったけどな……?」

「いえ、考え事してたの、ヒカリのせいじゃないけど」

「へぇ~、もしかして恋の悩みとか??」

「うぇ? そ、そんなじゃない、けど?」

 ヒカリは私の一番の親友。水泳部ですごくスタイルが良くて、胸が驚くほどでかい。

 そんなこと別に気にしてないけど。お兄ちゃんはきっと貧乳好きだと思うし、だってお姉ちゃんの裸を見ても何にも気にしないのに、私の裸は絶対見ないようにしているもの。


「日和は分かり易いなー、で? 誰が好きなんだ?」

「お兄ちゃん……!」

「お兄ちゃん??」

 やばい、口が滑っちゃった。

「……いや、お兄ちゃんとは違うタイプがいいかなってー」

「……まぁ、そりゃそうだな、兄貴なんてくそうぜぇだけだし」

 ヒカリは何もわかってない。お兄ちゃんは最高です!

「それで誰が好きなんだ?」

 うーん、困ったなー。適当に言って場を誤魔化すしかない。

「……隣の結城くん…………?」

「へぇー、結城のこと好きなのか! わかったよ、私が協力してやる!」

「え、いいよ、自分でするから~」

「遠慮するなって! 私がどうにかしてやるよ!」

「ヒカリ、お願いだから、何もしないで……?」

「……お、おう。わかったから、そんなに睨まないで」

 分かればよろしい。

キーンコーンカーンコーン。

「あ、やばい! 日和、早く教室行こう!」

「そうね、ヒカリこれ以上遅刻すると居残り掃除が……?」

「言わないで!!」

 ふう。それにしてもどうしましょう。お兄ちゃんに気持ちを伝える覚悟はできたものの、その後の関係は。

 ……気にしても仕方ないですね、きっとお兄ちゃんのことだから変わらずいつも通りに接してくれる。

 そう言い聞かせないと心が落ち着かないの。


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