第八話 神剣
謎の蔓は俺を振り回しながら、どこかに引きずって行く。
身体がめり込むほど木に叩きつけられたり、地面に投げられたり。
俺は気を失った。
気がつくと俺はそこにいた。
空は見えない。代わりに苔だからけの天井や壁がある。湧き水が周りに溢れ、中央の台に一本の剣が刺さっていた。
神秘的と言える光景の中で、その剣だけが輝いていた。
自然とその剣に惹き付けられる。
光沢のある刃。無駄な装飾は無く、金と銀の二つの色しかない。
俺はその剣を握った。
その瞬間、景色が変わっていた。
何もない。雲の上に立っているような足場だが、空は無くどこまでも白が続いていた。
「初めまして」
「ッ!」
突然誰かが現れた。
さっきまで、そこには誰もいなかったのに。
「ふふふ。慌てないでちょうだい」
「誰だ……? まさか、あの木の蔓はーー」
「それは違うわ。やったのは、マザートレント。まあ、貴方を助けたのは私だけどね」
俺を助けた?
そう言えば、木を失う直前に不自然なほど木の蔓が緩まったけど……。
いや、それよりも気になる事を言っていた。
「マザートレント? そんな魔物、聞いたことも……」
「そう。まったくの、新種の魔物よ。神獣とでも呼ぼうかしら。マザートレントは怒れる自然が感情を持った成れの果てよ」
新種、しかも、神獣だと?
自然が感情を持つ?
その成れの果て?
「なんでそんな事が分かるんですか? 貴女は一体……」
「私は愛の女神アフロディーテ。世界を創造した、女神の一神よ」
その人、アフロディーテは俺の手を握った。
「貴方は新たな神剣の使い手に選ばれました。さあ、共に世界を救いましょう」
俺の身体はまた、光で包まれた。
気がつくとさっきの剣があった場所に戻って来た。
台座に突き刺さった剣を、俺が引き抜いている事実のみ。
全身に力が漲る。
そうか。これが、神剣。
「さて。行こうか」
神剣を振るい、天井を切り裂いた。
割れ目から差し込む光に懐かしさを覚えながら、這い上がる。
森。森。森。
どこを見渡しても森。木しかない。
と言うよりも、トレントばかりだ。
絶体絶命。
だけど不思議と恐怖を感じない。
神剣があるから。
俺は神剣を振り上げ、一気に振り下ろした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
「神剣だああああああ!!!」
「女神様ぁあああああ!!!」
「続きが読みたい、気になる」
と言う方はブックマークや評価(★★★★★)をよろしくお願いします。
作者のモチベーションが上がります。