第四話 《未知の足跡》
俺が働いていたユーリンズ王国から、《未知の足跡》が拠点を置いている隣国のドランバルト王国に来た。
「ここが私達のギルドだ!」
冒険者ギルドは街の端の方にあった。
木造のボロボロの酒場の様な建物だった。看板には《未知の足跡》と大きく書かれていた。
「ただいまー!」
メリッサさんはバンっ、と扉を開けて入っていった。
俺も慌てて後に続くと、イメージ通りの冒険者ギルドの風景が広がっていた。
「おう、メリッサ!」
「おかえりー!」
「また派手にやったみたいだな!」
「アイリーンさんがブチギレてたぜ?」
ギルドの中で酒を飲んでいた冒険者から、メリッサさんに声がかかる。
「うえ、アイリーンがいるのか!?」
「おう」
「ヤバイ! 逃げるぞ、ユーグ!」
その時だった。
ギルドの奥にある階段からギシッ、ギシッ、と音が聞こえた。
「どこに行くのかしら? ねえ、メリッサ」
現れた女性は、笑顔で言った。
「「ひいいいいい!?」」
メリッサさんが悲鳴をあげるのは仕方がない。
だって、鬼の様な笑顔だったからーーー。
「あのねえ、またギルドに苦情が入ったのよ!? これで何件目だと思ってるの!?」
「さあな? 両手の指の数を超えてからは数えてないな」
「十七件よ! しかも、全部多額の請求書と一緒にね!」
「それはすまないと思ってる」
「そう思うのなら、少しは大人しくして!」
「無理だな。冒険が私を呼んでいるんだ」
副ギルドマスター室に通された。
俺はソファで座ってるが、メリッサさんは正座させられて、怒られている。
「はあ。まあ、いいわ」
「やった」
「でも、しばらくはそこで正座!」
「え!? いつまでだ?」
「私の気が済むまで」
「むぅ……」
メリッサさんを怒っていた女性が、机を挟んで対面に座った。
「初めまして。私は《未知の足跡》の副ギルドマスター、アイリーンよ」
アイリーンさんは金髪碧眼の美女だった。キリッとした雰囲気で、いかにも仕事ができそうな女性だ。赤縁の眼鏡をくいっと上げる仕草が様になっていた。
「それで、ウチのギルドに入りたいみたいね」
「はい」
「勿論、歓迎させてもらうわ。Sランク冒険者のメリッサからの推薦だしね」
「ふふん! ユーグ少年は凄いぞ!」
「貴女は黙ってなさい」
「はい……」
アイリーンさんの一喝でメリッサさんは黙ってしまった。
Sランク冒険者を黙らせるとは、何者なんだ?
「さて。これから貴方は《未知の足跡》の一人よ。けれどギルドに入ってからは上級冒険者の引率のもと、研修が義務付けられているの。だから、誰か手の空いている冒険者がいればいいのだけど……」
手元の書類をペラペラとめくり、ため息を吐く。
「残念だけど今は上位冒険者は全員、出払ってるのよね」
「私がいるだろ!」
「申し訳ないけど、研修はまた今度にーーー」
「わ・た・し・が! いるだろ!」
「………本当に引率できるの?」
「できるぞ!」
少しの間、見つめ合う二人。
そしてアイリーンがため息を吐いて。
「仕方ないわね。Sランク冒険者メリッサに、Fランク冒険者ユーグの引率を命じます」
ポンっと書類にハンコを押した。
ここにSランク冒険者とFランク冒険者の臨時パーティが結成された。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
「メリッサ暴れてるな〜」
「おっ、新しい魔道具だ!」
「続きが楽しみ!」
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