第十三話 道具屋を開きたい①
冒険者でSランクになったのは良いんだけど、そのせいで暇になってしまった。
Sランク冒険者はギルドでも数少ない、最高戦力。
本当に危機的な状況にならない限りはSランク冒険者は動かさないのが、ギルドの共通の方針らしい。
ちなみにメリッサはクエストに出ている。
アイリーンへの貸しを返すためにクエストに出ているのだ。
なのでユーグは今、暇を持て余していた。
ただちょうどいい機会だ。
あの計画を進めるとしよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
仕事も無いのに冒険者ギルドにやって来た。
相変わらず賑わっているが、ユーグが用事があるのは二階の執務室だ。
「アイリーンさん、例の件はどうですか?」
机に向かってデスクワークをしている、美しい赤髪の情勢、【未知の足跡】副団長のアイリーンに聞いた。
「ああ。見つかりはしたけど、改装に二ケ月くらいはかかるかしら」
「全然いいですよ。むしろ、こんな無茶ぶりを聞いてくれて感謝します」
「ふふ。あの子の無茶に比べれば可愛い物よ」
「あぁ……」
ユーグもアイリーンも、まったく同じ人物を頭に思い浮かべた。
メリッサは自由人で、俺をこのギルドに連れて来た所でも軍事施設を破壊とか、物騒な事を聞いた。
その後始末に比べれば、物件探しなんて凄く簡単な事だろう。
「まあ、別にいいのよ。マザートレントの一件でも大きな借りが出来たわけだし、それが無くても貴方はこのギルドの仲間なんだから、仲間が困っていたら手を貸すのは当然でしょ?」
その言葉で泣きそうになってしまう。
昔の上司とは大違いだ。
本当にこのギルドに来てよかった。
「Sランク冒険者が開く道具屋、私も楽しみにしているから頑張ってね」
思わずドキッとするくらいの笑顔でそう言われて、慌てて目を逸らす。
上司に何て感情を……。
結局、ユーグがギルドを出た後もドキドキしっぱなしだった。
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