第十一話 Sランク
マザートレントの討伐が終わり、俺とメリッサさんは街に急いだ。
メリッサさんは大丈夫だと言ってたけど、やっぱり心配だ。
ところが、街に着いた頃には全てが終わっていた。
街の前には、数千を超えるトレンドの残骸が転がっていた。
粉々に粉砕されたり、真っ二つに割られたり、どうやったらこんな光景になるんだ、というぐらいだ。
「あら。遅かったのね」
そして、このトレント達を倒したであろう、アイリーンさんがいた。
埃一つ付いていない綺麗なスーツと赤縁の眼鏡、そして手袋をして優雅にワインを飲んでいた。
「はははっ! 大変だったぞ!」
メリッサさんは大笑いしてるけど、本当に大変だった。
「そうね。でもね、こっちも大変だったのよ?」
ゾワッと背筋が凍るような寒気に襲われる。
アイリーンさんの殺気だ。
「数千のトレントが来るって言うから、街の住民を非難させたり、警備部隊や騎士団のお偉い様達と話し合ったり、私が手を下さないといけなくなったり………」
なんだか、気温が上がってるような気がする。
暑いというより、熱い。
「ねえ。説明してくれるわよね、二人とも?」
にこりと笑うアイリーンさん。
けど、その笑顔はとても怖かった。
《未知の足跡》副ギルドマスター室で、俺とメリッサさんは現場での事を事細かに説明した。
すると、アイリーンさんは頭を抱え出した。
「新種の魔物? 新しい神剣? 愛の女神? 自然の怒り? なになになになに、何なのよ………。なんで、私ばっかりこんな面倒事に………」
ブツブツと虚な眼で言うアイリーンさんは誰がどう見ても疲れ果てていて、仕事をしていい感じじゃなかった。
「はあ……。とりあえず、ユーグ君が神剣の使い手になったのは間違い無いのよね?」
「はい」
「なら、この事を国に報告しないとね」
そう言って書類をペラペラとめくった。
神剣の使い手が発見されると、直ちに国に報告しなければいけない。
どこの国でも、法律で決まっているみたいだな。
「あの、アイリーンさん。その報告はしない、って事は出来ないですよね……?」
「どうしてかしら?」
「えっと、その、夢があって……」
「ふーん……」
神剣は世界で三本しか無い。
その使い手に選ばれた人物は、英雄扱いされ、国で国賓として扱われる。
だが、俺の夢を叶えるにはそんなのは邪魔なだけだ。
「まっ、いいわ。貸し1って事でね?」
「っ、ありがとうございます!」
深く頭を下げる。
わがままを聞いてもらった。
「その代わり、貴方にはSランクに昇級してもらうわ」
けど、次の言葉が衝撃的すぎた。
Sランク? 俺が?
「そんな、いきなりですか……?」
「冒険者業界はいつだって人手不足。特にSランク現在、世界で10人もいないわ。神剣の使い手だし、Sランク相当のマザートレントを倒してるんだから、充分に資格はあるわ」
確かに、神剣の使い手ならSランクでも誰も文句は言わないだろう。
「………わかりました」
少し悩んだけど、Sランクになることにした。
後で聞いた話だけど、Sランク到達の過去最速記録だったらしい。
「それじゃあ、ユーグ君。同じ Sランクとして歓迎するわ。ようこそ、“頂き”へ」
手を差し出され、握り返した。
アイリーンさんの眼を見ると、俺を歓迎すると同時に、Sランクの厳しさも分かる。
まあ、そんな空気はガラッと変わり。
「さあ! お酒飲むわよ!」
「えっ!? 職務中じゃ……」
「あれだけの大仕事をしたんだからいーの! ほら、メリッサも飲むわよ!」
「おー!」
「ユーグもぐいっと行きなさい。ぐいっ、と!」
「え、いや、そんな、沢山………」
こうして俺はSランク冒険者となり、新しい神剣の使い手となったのであった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
「アイリーン様ぁあああ!」
「メリッサねえさんっ!!」
「うおおおおおおおっ!!」
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