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01ー目覚めた者

 "別"な世界で、"別"な自分になって暮らしたいーー


 そんな切実な思いを溜め込む少年がいた。


 現代日本に暮らす少年は、17歳の高校生。


 代々受け継がれてきた"天龍一心流"宗家の一人息子として生まれ、大事に育てられてきた。


 身長は190cmと大きいが、体格はもやしのようにひょろひょろと華奢。


 そして、当の少年は、剣術だけではなく武道全般やスポーツにも興味はなかった。少年が向かったのは、"可愛い"物。


 人形に小物、アクセサリーや化粧に興味を持ち、兎に角可愛い物が大好きだった。


 そんな姿を見て、両親、特に天龍一心流当主である父は、ガックリと肩を落とした。


 自分の代で天龍一心流は終わるのか、そう思うと切なさはあったが、可愛い我が子が幸せならばと、少年に何か言う訳でもなかった。


 しかし、少年が幸せを感じるのは可愛い物で一杯の自室だけで、外では苦痛を感じていた。


 学校で浴びせられる暴言の数々。

 時には、限度を超えたイタズラもされていた。


 別に好きでデカくなった訳ではない。


 もっと小さくなりたいし、女の子になれるならなりたい位だと、暴言を吐かれる度に思っていた。


 学校や心と体の不一致によるストレスで、少年の心は限界に近かった。


 毎日寝る前に願う。

 朝目覚めたら女の子になっていないかなと。


 そんな、切なる願いを繰り返しながら眠りに就いていた……。


 そして、別の世界でも葛藤を持つ少女がいた。


 ★☆★☆


 魔法や魔物が存在するファンタジーな世界で暮らす少女の名は、"アリーシャ=ベルゼウス"17歳の王女様である。


 ベルゼウス国の第一王女として生まれ、それはそれは大事に育てられてきたのだが、


「王女様っっ!! その怪我はどうなされたのですか!?」

「また、公家のご子息様と喧嘩を……」

「また婚約者のご子息を殴って破談に……」

「どうしてそんなに喧嘩っぱやいのですかっっ!!」


 侍女達は男まさり過ぎるアリーシャに手を焼き、王や王妃は頭を抱える日々。


 そろそろ婚約者を決めねばならない歳を迎えてはいるが、自国の子息達は全滅状態。


 他国に嫁がせたら外交問題にも発展は間違いない。

 それほどまでに気性が荒かった。


 婚約者が決まる度に、自分より弱い奴と婚約などしたくないと、すぐに決闘を申し込み血祭り。


 そんな事が続けば、アリーシャに婚約を申し込む者など現れる筈もない。


 アリーシャ自身も結婚などしたくないと思っていた。

 わざと破談にさせるように仕掛けるほどに。


 しかし、その行いは当然の如く批難の対象となる。

 

 第一王女としての責務、振る舞いがなっていないと、公族や貴族から批難の嵐だ。


 毎日のように王である父や王妃である母から説教を受け、アリーシャは辟易していた。


 王女らしく振る舞え、王女の責任と責務を全うしろ。


 そう言われ続ける度に、王女に生まれたくて生まれた訳じゃない。


 どうせなら王子として生まれ、この国を守るために戦いたかった。


 そんな思いが、日に日に強まっていく。


 アリーシャも、別の世界で暮らす少年と同じで、心と体の不一致に悩んでいたのだ。


 毎晩、月夜に照らされながら振るう剣。

 剣を振らない日などなかった。


  勉学や習い事。作法の時間は苦痛でしかなく、体を動かし、戦う事がアリーシャにとっては生き甲斐だった。



 別々の世界で同じような悩みを抱え、モヤモヤとした日々を過ごす少年と少女。


 そもそも、その悩みの原因は"魂の入れ違い"によるものだった。


 ある時、それに気づいた神様は、こっそり二人を戻す事に。謝罪の意味も込めてギフト(チート)付きで――


「王女様、起床の時間でごさいます」

「ん……んぅぅ……おはよう……」


  珍しく侍女の一声で眠りから覚めるアリーシャ。


 いつもなら何度も声をかけた挙げ句、「うるせぇぇっっ」と、罵声を浴びながら起こしていた嫌な行事だったのだが、いつもと違う光景に侍女は異変を感じていた。


 女の子らしい細く透き通るような声で朝の挨拶。


 長いブロンドの隙間から見えるパッチリとした蒼い目を、可愛らしい仕草で擦る姿。


 それを見た侍女のハートは、突然の落雷のように鷲掴みされていた。


「どうなされたのですか王女様っっ!? そ、その、なんというか、凄く可愛らしくなってしまって……」

「可愛い? あ、ありがと……ん? あれ? 所で、貴女は誰?」


 寝惚けているのか分からないが、はにかんだ笑顔でお礼を言うアリーシャの姿に、侍女のハートは限界突破。


「ずっと、この王女様でいて下さいませーぇぇっっ!!」


  それを表すが如く、侍女の心の声は駄々漏れであった。


「王女様?」


 軟弱で可愛い物が大好きだった少年が、異世界の王女様になれたと分かるのは、時間の問題だ。

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[良い点] ああ、今起きて! よーし、行くぞ! 私はこれらの主人公を感じます。 プリンセスと私たちの主人公の両方の側で、型に収まらず、いじめられるのは本当に難しいです。 元の王女に何が起こったのか、…
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