想いと願い
俺達にとっては大昔の、然しユイ様にとっては確かにその瞬間を生き抜いた過去を話すユイ様は暗い表情を浮かべながら話を続ける。
「そう、それが星騎士の始まり。そしてその星騎士が星武器という神秘を扱える理由」
「世界の歴史を何度も巻き戻しているのだから、現在実現が難しい機構の武器も展開が可能、という訳ですね…私の双剣銃のように」
始祖神が本当に星の歴史を何度も繰り返してきた神なのであれば、今よりも技術が発達した世界も見てきたのであろう、それならば今よりも発達した銃火器が星武器として展開されるのも有り得る話だ。
「そういう事ね、…そして、此処からが『星々の騎士団』の活動内容になるわ」
「…ッ、矢張り私は納得出来ません!アンナは未だ8歳なのですよ?!そんな娘に危険に身を置けという親が何処に居るというのですか!!」
「落ち着け、フリードリヒ。…御前も分かっているのだろう?アンナがあの神槍に選ばれた時点で何時かはこうなると」
色々と、点と点が線になっていくのを感じユイ様の言葉を待っていると、今まで何も語ろうとしなかったフリードリヒが話を遮り、ユリウスの爺さんがそれを咎めるが…正直、此処まで聞ければフリードリヒの真意は予想は付く。
寧ろ、矢張り、この男は愛情深い父親だった。
「しかし…!「お父様」…アンナ…」
「私は大丈夫です、寧ろこの3ヶ月…私はお父様を誤解しておりました。私はお父様に愛されていないのでは…と」
「何を馬鹿な…私はどんなになってもアンナ、御前を愛している。優秀な星騎士の育成に力を入れていたのも全ては…「私の為、なのですよね?」…っ…」
「色々と分からない事だらけでしたが、ユイ様から星騎士の起源を聞いて、なんとなくですが得心を得ました。でもお父様、私は大丈夫です」
「アンナ…」
「お父様が私にS級以上の星騎士になって欲しくなかったのは偏に、私に重荷を背負わせない為と、危険な目にあって欲しくないから。G級ともなれば、また何時リンとの対戦の時の様な危険な目に合うか分からない…ですよね?」
「……」
沈黙は肯定、と捉えて良いのだろう。
S級以上の星騎士は皆、『星々の騎士団』に所属するという事はS級同士で競い合う事で技を磨き、力を付け、外宇宙の神がまた何時行動を再開しても良いように備える、という側面がある。
現に、S級星騎士同士が競い合うリーグが存在するのが第一の理由だ。
そして、セイやハクのようにS級星騎士が軍と警察という機関にトップとして所属しているという事は、恐らく高い確率で何らかの機関にS級星騎士が所属するのが多い傾向にあるのだろう。…多分、シュリも元々は何処かの研究者か教師だった可能性もある。
何より、今までの話を聞くに、確信を持って言える事を口にする。
「内政として福祉関係が疎かになっていたのも、優秀な星騎士を一人でも多く育成する為…ですよね?恐らく私を戦いの場から遠ざける為に」
「…それについては儂からYES、と答えよう。実際此処数年を遡ってみると、儂が携わっていた頃よりもA級星騎士は倍近く排出されておる」
フリードリヒの代わりに、ユリウスの爺さんがデバイスを取り出し、床に向け光を照射すると立体的な映像と共にグラフが表示される。
それによると、確かにある時期からノワール国が排出するA級星騎士の数が増えていた。…丁度8年前、俺が生まれた年だ。
フリードリヒ…否、親父へと身体ごと振り向き腰を曲げ、頭を下げる。今まで、恵まれた環境で見守り、護ってきてくれた父親に感謝の言葉と───それ故に、もう充分だという事を告げる為に。
「お父様…私を護ろうと必死になって下さりありがとうございます、でも…私はこう思います、エミル達の様な小さな子達が笑顔で暮らせない国に、はたして価値はあるのか、と」
「ッ!」
「…確かに、何かを護る為には力が必要なのは認めます。でも、力を付ける為に他の何かを…それも力の弱い存在を犠牲にするのはユイ様を始め、先祖が護り育んできた生命を切り捨てるという事に違いないのではありませんか?」
前世で極道の道を歩んだ俺だからこそ、力の重要性は嫌という程知っている。
どんなに綺麗事を言おうと、力が無い奴は生き方も、死に方も選べずに死んで行くのは何度も見てきた。
だからこそ、この娘思いの良い父親には、俺が歩んだような道は歩いて欲しくない。
「アンナ…」
「…だから、お父様。私なら大丈夫です、星騎士の育成よりも福祉に…力の強弱は関係なく、民が笑顔で居られる国を創る為に力を注いで下さい」
「…アンナは強くなったのね、これなら星々の騎士団としての任務を遠慮なく下せるわ」
親父が俺を呼ぶ声を耳にしながら、嘗ての俺と今の私が望む国作りを口にする。間を開けてユイ様が俺に命じようとする任務の件をユリウスの爺さんが問う声が聞こえた。
「ユイ様、倅が話を遮ってしまい申し訳ありませぬ。…して、その任務とは?」
「今から言うわ。…アンナ・ノワール。貴女をG級星騎士として認め、貴女の中に宿る神槍を完全に使いこなせるようになるまで、ユリウス・ノワール、並びにフリードリヒ・ノワールの補佐と学園生活を両立する事を命じます」
厳かな空気を纏い、俺に星騎士としての任務を下すユイ様の言葉の裏にあるものを、今の俺は読み切れずにいた。




