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暴走…そして決着




 俺としての意思と何かが混ざり合った感覚を感じながら、普段手にしていた星武器とは異なる得物を握る。



「神槍…!」


 リンは心底驚いたように声を上げるが、今の俺にはそう驚くべき事では無かった。寧ろ、神克(しんこく)の先に在る技、その技に至り手にした力の正体がこの槍だという事にある種の納得を得た。


 セイの棒術を時に受け、時に躱し、時に打たれていて良かった。初めて振るうのに手が馴染む。


「アンナ様…私達の想定よりもずっと早く神槍を扱えるように」


「…往くぞ、リン…」


「先程よりも速い…いえ、これは…」


 確かに俺の口から衝いた言葉だったが、確実に俺ではない“ダレカ”の意思が介在した口調で空間を跳躍し、一瞬で槍の間合いに入り突きを繰り出していた。



◆❖◇◇❖◆


 一方、モニター越しにアンナの戦いぶり、そして変化した星武器のデータを採取していたシュリは普段のおちゃらけた様子はなりを潜める。


「時間?いや、空間魔法…?速いとか速くないの次元じゃない、それに突きを繰り出す際の動き自体が一切の無駄がない。…然も、あの槍、魔力の濃度が濃すぎて計測器が振り切れてるよ」


「速いだけじゃない、一突き一突きが直撃すればフィールドを容易く破壊出来る攻撃力を示している…!」


 ルドルフの名を受け、シュリの手伝いをしていたシュバルツもその規格外の攻撃力に驚嘆しているが、此の儘、試合を続ければ死人が出る…否、下手をすればこの学園自体が壊滅すると判断し顔を青ざめさせている。


「シュリ先輩、今はリンさんが何とか捌いていますが危険過ぎる…即刻試験を中断させるべきです!」


「それは不味いかも」


「シュリ先輩…?」


「フィールドが展開しているお陰で二人の戦いの余波が来ないだけで、もし今中断したらその余波は辺りにどんな影響を与えるか分からないよ、良い感じにガス抜きさせなきゃ、ね…?」



 今の2人を覆うフィールドは、言わば限界まで空気が入った風船のようなものだ。その風船の中身を何とかしない限り、中断しても被害は免れないだろう。



「それはそうですが…しかし「それに、」…?」


「今この戦いを止めたら、アタシ達は一生リンちゃんに恨まれるよ、星騎士同士の誇りを掛けた戦いに水を差した、って」


「誇り…」


「もし、アンナ様が本格的に暴走しそうになったらアタシやレイちゃん、セイちゃんにハクちゃんとで止めるから…やらせてあげて」


 深々と頭を下げるシュリを前に、ルドルフは彼女の覚悟と決意を確認し、現理事長として一つの決断を下す。


「…分かりました、一応、医療国家エキナセア国の医療機関に連絡を、此処の設備では身体の傷は治せても精神的な異常には対処は出来ないですから…」


「ありがとね、ルーくん」


◆❖◇◇❖◆


 一突き一突きが膨大な魔力と氣を消費する一撃は、それだけでフィールドを穿つ力を示しながらも、その一撃を受け流し、逸らし、躱すリンにも疲れの色が見え始めた。



「は…っは…っ…」


「…一突き事に魔力と氣を消費するな…未だ強くなれる…強くなる理由がある…!」


「善良な弱者が真っ当に生きられる世界…ですか…初めて貴女様の願いを知れた気がします」


 未だ強くなれる、それは俺の口から出てくる言葉ではあるが、言葉に込めた想いは俺ではない、別のダレカのものだった。俺に出来るのはそのダレカに呑まれない様に踏み止まるだけだ。


 そんな状況下で、リンは穏やかに微笑んでいた。


「誰にも負けない強さが欲しい、と言ったはず「違います」……」


「強さを欲するのは“手段”に過ぎない、アンナ様が本当に欲しいのは、“誰もが優しさを忘れない世界”ではありませんか?」


「……否定はしない、だが、それは今は言っても詮無きこと…強さを示し続ける、それが()の在り方であり祈りだ」


 そう、否定はしない。

 あの日、護れなかった自分も、護ってくれなかった世界(周り)も世界の側面だというのであれば、そんなものは必要無い。


 その醜いものを抱えて、俺は俺が護れるものを護り続ける。


 在り方であり、祈りであり、…贖罪なのだから。



「……なら、私は私が掲げた騎士道の元、貴女様に道を示すとしましょう…!」



「望むところ…! 咆哮せし者(ルドラ)!」

「絶剣参之型・天叢雲剣…!」


 槍にありったけの魔力を込めて音速を超える速度での投擲に合わせ、さっき魔力を斬った時の気配を“同時”に九つ、振るい束ねた斬撃の大波がぶつかり合う…!!


◆❖◇◇❖◆


 異なる力と力がぶつかり合い、永遠とも一瞬とも捉える事が出来る競り合い…直後、訪れる沈黙の元、映し出された映像は倒れ伏した2人だった。


「九つの斬撃が重なり合い神槍とぶつかり合った…!」


「凄い破壊力だ…フィールドが完全に破壊された処か衝撃波が此方にまで…!」


「……良かった、生きてるみたい…リンちゃん、魔力を祓う斬撃を放って被害を最小限に抑えたみたいだね、二人共凄い怪我で気絶してるけど」


「救護班は至急御二人を生命維持装置へ、エキナセア国からの返答は?」


「受け入れ、問題無いようです、転移ゲートも解放済みです」


「ご苦労様です。…大変な事になりましたね」


 シュバルツの迅速な対応で既に二人の治療は行われる事に。一先ず生命の危機は脱したが…問題は試験中に神槍が発現したという状況だ。


 誰も到達する事が無いと思われていたG級、神槍を自由自在に扱える様になったアンナは文句無しに、それに該当するだろう。…だが、今は自在には扱えていない、それは扱いを間違えれば危険な力を有していると言える。



「そうだねぇ~、で、アンナ様を受け入れるのが怖くなった?」


「…怖くない、と言えば嘘になりますが、同時にアンナ様の様な力を野放しには出来ないでしょう?…シュリ先輩…いえ、前理事長」


「あはは、今は君が理事長でしょ?…大丈夫、私達も支えるから」



 懐かしい呼び名に思わず笑みを零してはウィンクをするシュリ、学生時代から見てきた変わらぬ様子にルドルフは笑みを浮かべる。



「…っ、はい!」


「さぁて、アタシは入院の準備をしなくちゃ、忙しい忙しい」


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