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006 エルミ ※

いつもお読みくださり誠にありがとうございます。

「あ、あなたは誰?私をどうする気?」


エルミは震えながら俺に最大の警戒を向けていた。


「あっ、目が覚めたのかな?もう、身体は大丈夫かい?俺はジュンイチ。イトウ・ジュンイチって言うんだ。君が狼に襲われていたのを助けたんだけど覚えているかい?」


「狼?オオカミ……そう、私、狼に追われて逃げていて、追い詰められて……っ!いやぁぁぁぁっ!」


俺は急いでエルミを抱きしめる。

きっと目覚めたばかりで記憶が混乱してパニックを起こしたのだろう。

彼女の細い身体が恐怖で打ち震えており、俺はその震えを打ち消すかのように強く抱きしめた。


「大丈夫だ。もう狼はいないよ。それに君の怪我も治して。だから安心して」


エルミは次第に状況が理解できたようで落ち着いてきた。


「ご飯ができるんだ。一緒に食べないかい?」


エルミはコクンと頷く。

俺はゆっくりと彼女の体から離れ、「食事はこっちだよ」と言って手招きをする。

そして、できた料理を次々とよそっていく。


「やっぱり飯盒より土鍋で炊いた方がうまそうだよな」


熱々のご飯を茶碗によそっていく。

ポトフとニジマスの塩焼きにホーンラビットのグリル焼き。

熊五郎とにゃん太にはホーンラビットの肉を1.5キロずつにポトフを少し掛けてあげる。


「こんな……」


「ん?食事だよ。君の分もあるから一緒に食べようか」


「こんなご馳走をいただくには……」


「いや、これがウチの普通の食事だから。いいから座って。料理が冷めるだろ?」


エルミはそう言われると黙って座る。


「さあ、頂こうか。いただきます!」


「いただきます?」


「ああ、これは俺のいた国の挨拶で、お肉や魚、野菜などから「命をいただく」ことで俺たちは生かされるんだ。それに感謝する、という挨拶だよ」


「素敵な考えですね。いただきます」


「がぅっ!」


「にゃん!」


「ふふふ。この子たちも挨拶するんですね」


「ああ。こいつら結構、賢いんだよ」


そう言いながらエルミは何気にポトフを口にした。


「ん?どうしたんだい?」


エルミが固まっていたので声を掛けたのだが、彼女は意識があるのだがその意識はどこかへ行っているようだ。


「……美味しい」


「ああ、旨いだろ?」


「あなたは宮廷の料理人?」


「いや。俺はどちらかというと建築家だ」


「建築家?」


「家とか建物を建てる仕事さ。良いから先に食べないかい?」


「すみません……」


だが、エルミは1口食べるだけで驚く。

ニジマスの塩焼きですら「美味しいおいしい」と言って感動していた。


食後、お茶を出して話を聞く事にした。

後片付けは「収納」するだけ。

グリルやオーブンには「洗浄」「浄化」を掛けるので2分も掛からずに後片付けが終わる。


「えっと、名前を聞いても良いかい?」


「……!すみません、ここまでして貰ったのに名前も告げずに……私は、エルフの国、ユヴァスキャラ王国の第2王女エルミと言います。姓があるのは人族の王族くらいだと聞き及んでいますが、ジュンイチ様は王族なのでしょうか?」


「いや、一般人さ。で、エルミ王女はどうしてこんな森に?ユヴァスキャラ王国ってここからだと歩いて250キロ、森の中だけでも200キロもあるんだから普通に歩いていても5週間は掛かる距離だぞ?」


道のない森をあるけばどうしても時間が掛かる。

普通の人なら1時間に1キロ進めば良い方だろう。

それを1日に6時間進めたとしても相当な日数が掛かる距離だ。

だが、この森はモンスターが多い事からこの子が無事にここまで歩いてこれる筈がないのだ。


「いえ、私は迷宮と呼ばれる場所を探索していたのですが、裏切り者によって強制転移をさせられたのです」


「ーそれは……。で、これからどうするんだい?」


「できれば国に戻りたいのですが……」


「うーん。でも、君はどうやって国に帰るんだ?」


「……」


俺もスキルで転移できそうなのだが、マップ上における転移可能地点の中にユヴァスキャラ王国が含まれていない。

それにこの家も建築途中だし、それを放ってまで連れて行くだけの義理もない。


「……できましたら護衛をジュンイチ様にお願いできますでしょうか?報酬は国に着いてからお支払いしたく……」


「うーん……それは……今、建築途中の家屋が完成してから考えても良いですか?見ての通り、まだ作り掛けなんですよ」


エルミは目を瞑って熟考し、その上で俺に護衛を再度依頼してきた。


「分かりました。宜しければ家作りが終わりましたら、護衛をお願いできますでしょうか?」


「分かりました。それではそのように致しましょう。なるべく早めに完成させたいと思います」


エルミは俺の手を取り感謝するが、異性の手を取った事に気が付き顔を赤らめるのだった。

話し合いを終えたら、俺はコカトリスとエアレーの寝泊りできる場所を作る事にした。

そして餌置き場と排泄場所、牧草地を作り、それを教える。


「コケ、コッコ、ウンチなどはここでするんだよ」


「「コケーッ!」」


「太郎、花子、ウンチとオシッコはここでするんだよ」


「この牧草は食べていいからね!」


「「もぉー!」」


何せ従属化をすれば知能も上がりこちらの指示通りの場所に排泄をする様になるんだよね。

その排泄場所に洗浄・浄化魔法を常時発動できるようにしたので、家畜臭はしなくなるだろう。

ついでにコケとコッコから生毛を少し分けてもらった。

部屋に戻った俺は1メートルほどの高さの腰壁を個室2部屋に貼り付けて、それより上には漆喰を塗っていく。

天井も同様に塗り、床と天井にはデザイン幅木を巡らせた。

デザイン幅木があるだけで部屋が引き締まり高級感が出てくるんだよね。

それから家具作り。

木工スキルを獲得し、ダブルベッドを作る。

無骨なデザイン性のないものも良いが、エルミが使うのだから象嵌や彫刻も入れて少し凝ったものを作る。

ベッドマットは作るにはちょっと時間がないので、大きさや形状、固さ、弾力などを頭に思い浮かべてから創造した。

そして「紡績」「生地作成」「縫製」スキルを得て、アイテムボックス内で綿花を複製し、蚕の繭を解体で糸、コカトリスの羽毛を洗浄した。

それらをもとにベッドマット、羽毛布団に枕を作り、ベッドシーツと掛け布団カバーに枕カバーを作った。

ベッドの隣にはナイトテーブルと照明を作り、窓にはカーテンを取り付けた。

クローゼットも作り、それも設置すれば部屋らしくなった。


「これでどうにか個室は完成したか」


いや、ベッドだけで言うなら俺が元の世界で使っていたベッドよりも確実に寝心地が良いベッドだ。

仕上げに洗浄・浄化を行い埃っぽさを取り除いた。


部屋作りの様子をずっと見ていたエルミは驚きのあまり固まっていた。


「エルミ様、丁度、あなたに泊まってもらう部屋ができたところです。今晩からこちらでお休みくださいね!」


「あの、ジュンイチ様……こんな部屋を数時間で作ったのですか?」


「ん?そうですが?」


「普通は1人で作ると2〜3か月は掛かりますよ、それを……」


ジュンイチは魔法が普通に使えてしまい、しかも他人と比較したことがないのだから規格外になってしまっても気が付かなかったのだ。


「まあ、それは良いじゃないですか。さて、これから晩ご飯の準備でもしようかな」


淳弥はそういうとキッチンへ向かった。


「ふーっ……まあ。自重するのも気を使うからそれも嫌だなぁ……」


そう言いながらアイテムボックス内で小麦粉を水で練ってうどんを作る。

中で生地だけ1時間経過させてしっかり寝かせて切っていく。

そして1人前200グラムと少し多めに小分けしておく。

たっぷりのお湯を沸かしうどんを茹で、同時に玉ねぎを切って牛肉は細切れにして塩胡椒で炒める。

2匹のためにメタルボアの肉を4キロ焼く。

なんだか成長がとーっても早く、にゃん太は猫なんか大きさでなくなっている。

醤油とみりん、砂糖それに出汁でうどんのつゆを作り、そこに炒めたものを入れて一煮立ちさせる。

茹で上がったうどんを丼に取り、そこにつゆを入れて肉うどんの出来上がりだ。


「エルミ様、食事ができましたので……!」


俺が振り向くと後ろにエルミが立っていた。


「そ、それは魔導コンロ?それに水を出す魔道具に……」


「えーっ、驚くのは良いんですが、ご飯が冷めてしまうので……」


「はっ!そ、そうですね。それでは……」


エルミは席に着き、俺は肉うどんをエルミの前に置いた。

箸を用意して、「いただきます」をした。

熊五郎とにゃん太もそれぞれ、「がうっ!」「にゃん」と挨拶をする。

その様子を見てエルミは微笑んでいた。

食事は初めての箸に彼女は苦戦していたが、俺が使っているのを見て何となくコツを掴んだようだ。

ただ、麺を啜るという行為がなかなか馴染まないようで、


「エルミ様、麺を啜った方が香りも良いですし美味しく感じますよ」


俺が勧めたので取り敢えず試してみた。


「……!ジュンイチ様!啜った方が美味しいですっ!」


そういうとエルミは少し遠慮しながらも麺を啜って食べる。


「初めて食べましたが、本当に美味しい料理ですね!」


「お口に合って良かった。うどんという料理ですよ」


たっぷりのお肉入りの肉うどんにエルミもお腹一杯になり、俺は食後のデザートとしていちごを出す。

そのいちごを見て、エルミは再び固まっていた。


「どうしたの?」


「……!これ……いちご、ですよね?」


「いちごですが、それがどうしました?」


「……王都では1粒で金貨1枚するんですよ……」


「……まあ、気にしないで頂きましょう」


エルミは幸せそうな顔をしながらいちごを10個ほど堪能していた。

この後、トイレで驚きお風呂で驚き、布団で驚くエルミだった。



※ スキルの変化


スキル : 剣術、棒術、槍術、体術、弓術、魔法(全属性)、付与、転移、眷属化、従属化、収納、鑑定、隠密、結界、鍛治、錬成、錬金術、重力操作、創造、治癒、回復、裁縫、調理、農業、狩猟、建築、自動地図、索敵、全マップ探査、身体強化、漁業、洗浄、浄化、話術、交渉、スキル獲得、健康体、複製、木工(NEW)、「紡績」(NEW)、「生地作成」(NEW)、「縫製」(NEW)

加護 : オーヴァージェン主神の加護


感想を頂けると、書くときのエネルギー源になります。

ぜひぜひ、いろいろお待ちしております!!

ブクマ、レビュー、評価なんかは涙が出るくらい頂けたら嬉しいです。

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