049 暗殺未遂(補追版)
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審判による「勝者、ユヴァスキャラ王国!」の宣言とともに再び会場は地鳴りにような歓声と足踏みで揺れる。
「エルミ様ぁぁぁっ!男なんて、撃ち抜いちゃえ!」
「エレオノーラ様ぁぁぁっ!生意気な男を不能にしちゃえぇぇぇぇっ!」
この試合で一気に女性の支持を得た2人だが、会場に来たジュンイチとピルッカを見て、彼女らは乙女の如く駆け寄り、自分たちの愛する男性に抱きつき、そして唇を重ねる。
それを見て、男性たちはホッとして男性のアイデンティティを失わずに済んだのだった。
エレオノーラは今晩、ピルッカに組み伏せられて「もっと〜っ!」と絶叫する事を妄想し、エルミはジュンイチの作る料理をで頭一杯だった。
だが、観客席からは2人は蕩顔であり、男性はまだ「女性に支配されていない」と安堵するのだ。
結局、総合優勝はユヴァスキャラ王国、第2位はドワーフ族の国ミッケリ王国、第3位は獣人族の国クオピオ連合国という結果になった。
そして優勝旗と選手それぞれに金95、ミスリル5の合金でできているメダルを貰い、観客に手を大きく振る。
観客席を埋め尽くすユヴァスキャラ王国民からは惜しみない拍手と声援が……そう思っていたらいつの間にか総合優勝の一報を耳にした国民が会場周辺に押し寄せており、外からの声援が会場全体を揺るがしていた。
何せ、総合優勝は建国以来初めての快挙。
特にエルミ、ピルッカそしてエレオノーラはエルフ族だからか声援の多くはこの3人に集中する。
しかもチームをまとめている引率教師もエルフのセラフィーナなのだ。
結局、この日、俺は転移で王城へ向かおうと思っていたのだが、急遽、王城騎士に先導され馬車で戦勝パレードを行う事になったのだ。
俺はアイテムボックス内でパレード用の馬車を2台作り、国民の要望に応えて、1台目はエルミを中心に左右にピルッカとエレオノーラの3人乗り、2代目は前列が俺とセラフィーナ、2列目が由香と麻衣が乗る馬車だ。
俺たちは制服に着替えて、街道を埋め尽くす群衆の間を通って王城へと向かう。
いつもであれば会場から王城まで馬車で10分ほどなのだが、群衆が溢れんばかりに集まってきている事で恐らく1時間はかかるであろう、という速度で馬車は進んでいた。
騎士の騎馬が馬車の前後に各10騎、また、街道の交通整理のために王都の衛士が300人ほどが馬車が通る道に人が入り込まないようにしていた。
「一応、みんなの制服に様々な付与を与えているけど警戒してな」
馬車に乗り込む前に全員に注意を促す。
特に、エルミとピルッカ、エレオノーラは俺とは違う馬車なので少し心配なのだ。
それというのもヴァンター王国の魔術代表選手についていた教師が試合の直後から見当たらなくなったのだ。
彼らは俺とエルミの暗殺が目的の一つだった筈だ。
そうなると、その教師はこのパレードの最中に仕掛けてくる可能性が高い。
「ついでだから、多重結界もかけてよ」
エルミが甘えてくる。
だが、多重結界は感知できる者がいれば相手の警戒を高める事になる。
「いや、制服にも付与を行なっているのだからそこまでする必要ないよ」
彼女に襲われる可能性がある事を告げると緊張してしまうので適当にそれらしい理由を付けておく。
試合直後のパレードという一番気の抜けるタイミングを演出し、襲わせやすくする。
これによってヴァンター王国は絶好の好機到来!と思うだろう。
さぁ、来いっ!いつでも待っているぞ!
◇
「まさか、ここまで実力差があるとは……」
俺は生徒の1人が大衆の面前でポークビッツを曝け出しているのを横目で見ながら、会場の外へと向かった。
普通なら生徒の安否確認とともに戦いに敗れた生徒のケアに向かうのだろうが、俺たちの目的は使徒及び聖女抹殺。
その準備のために会場を出たのだ。
「あの王のことだ。戦勝パレードを行うだろう。コースは……会場から王城へ向かうルートの中でパレード向きの道はここしかない。そうなると、狙撃ポイントは、ここしかないな」
狙撃ポイントは群衆が射線上に入り込みにくい場所を選んだ。
万単位の群衆が一目でも見ようと集まってくるだろうが、多くは会場の近くか王城の近くだろう。
俺は群衆が一番少なくなるであろう場所を予測し、また、自分の姿が見つかりにくい場所をセレクトする。
狙撃はもちろん魔力レーザーで行うのだが有効射程距離はせいぜい250メートルほど。
長距離狙撃には向いていないがその代わり試合で確認できたが多重結界を貫通することができる。
「あの屋根の上なら射程距離内だし、煙突の影に隠れれば見つかりにくいだろう」
俺は屋根の上に登り、彼らがやってくるのをじっと待つことにした。
◇
3人の人気は凄まじい人気だった。
やはり一番人気はエルミ。
この国の王女であり、しかも、圧倒的な魔力量で魔術の優勝候補であるヴァンター王国の選手を下したのだ。
しかもヴァンターの選手は「死ね」などと使ってはいけない言葉を使い、王女を侮り、何よりこの国を侮辱した。
そんな相手を蹂躙した事もあり、エルミを一目でも見ようと群衆が集まったのだ。
その両隣にはピルッカとエレオノーラが座り集まってきた群衆に向かい手を振る。
完全に群衆は彼らを「英雄」として迎えたのだ。
(これって俺にとって最高の展開じゃね?)
思うままに生きるためには余計な柵が少ない方が良い。
英雄として見られない、という事はそれだけ自由度が増す事になるのだ。
名声をピルッカに肩代わりさせておけば、俺は……自由だ!
ピルッカは生まれ持ってのお調子者という事もあり、きっと彼は思惑通り「英雄」として振る舞ってくれるだろう。
(いや、ピルッカの笑顔、本当に素晴らしいよな。できれば存在進化をもう一度させてエルフソルジャーからエルフジェネラルくらいになると英雄どころか「勇者」になりそうだ)
俺は自分の今後のことも考えて、ピルッカの強化計画を練るのだった。
馬車は思いの外遅く、時速2キロほど、馬なのに牛歩のような感じで進んでいた。
(ん?屋根の上に……ヴァンターの教師じゃないか!)
全マップ探査で警戒を続けていたら、反応がありそちらに目を向けると屋根の上にある煙突の影に人影が見えた。
(俺もこの世界に来たら随分と視力が上がったなぁ)
そんな事を思いながら、由香と麻衣、そしてピルッカに念話を送る。
《由香、麻衣、ヴァンターの教師が建物の煙突の陰にいる。直ぐに動ける準備をしてくれ》
《お兄ちゃん、任せて!》
《お兄様の身は私が守りますわ!》
《俺はどうすればいい?》
《ピルッカは魔力レーザーを撃たれたら俺が煙突まで運ぶからそこでヴァンターを捕縛してくれ。由香と麻衣hピルッカの援護だ》
エルミに伝えると緊張のあまり顔が強張るだろうから、彼女とエレオノーラには黙っておく。
多重結界は貫通していたが神力鎧は無傷だった。
念のために神力鎧に付与を加えて強化をしておいた。
教師までの距離200。
まだ、動きが見られない。
距離150。
煙突からヴァンター王国の教師が姿を現し、エルミに向かって魔力レーザーを放った。
それと同時に俺はピルッカをその教師の側に転移させ、由香と麻衣は自分たちで中距離転移を行う。
レーザーはエルミに向かい真っ直ぐ突き進み、彼女の肩に直撃した……ように見えた。
その瞬間、群衆から悲鳴に近い声が一斉に上がるのだが、エルミは馬車から立ち上がり、
「私は無事です。そして狙撃をしたヴァンター王国のテロリストは「英雄」ピルッカが見事捕縛しました!」
エルミにはピルッカを転移させる前に念話で説明していたのだ。
そして、群衆に対してどう話すかについてエルミに指示を出したので、彼女はそれに従い「英雄」という言葉を口にしたのだ。
この瞬間、「英雄」ピルッカが誕生したのだ。
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