041 国別対抗戦7 ミッケリ王国、そしてヴァンター王国
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俺とピルッカは控え室に戻り、軽くサンドイッチを摘む事にした。
部屋にはエルミ、セラフィーナ、由香、麻衣、エレオノーラが先に待っていてくれた。
「ジュンイチ、ピルッカ、今回の試合……本当にお疲れ様」
「本当、精神的に疲れたよ。あれが策略だったのかな?」
「ジュンイチも良く腹立てなかったな」
エルミの労りの言葉に俺とピルッカは答えた。
エレオノーラは「使徒様に向かって何て物言い!」と怒っていたが、
「ダーリンはあれぐらいで腹を立てないものね?」
「お兄ちゃんはやっぱりお兄ちゃんだよね!」
「お兄様は本当にお強くて……素敵です!」
麻衣のお兄様ラブ度が何だか少し上がってきているようだけど、この3人は基本、「さすがダーリン」「さすがお兄ちゃん」といった「サス兄」系だ。
正直持ち上げ過ぎのように感じるけどね。
テーブルの上にサンドイッチとりんごジュースを用意して小腹を満たす。
この国、いや、この世界には真っ白な食パンはないのでここまで柔らかなサンドイッチは存在しない。
しかもお手軽簡単にできるマヨネーズやハムやベーコン、ソーセージといった加工肉もないのだから、卵サンドやハム・チーズサンドはご馳走に思える程だ。
「ジュンイチのパンって本当にふわふわで美味しい!」
エルミはとっても可愛くて抱きしめたくなる。
「ダーリンもアーンっ!」
セラフィーナは大人の魅力たっぷりに奉仕をしてくれる。
「お兄ちゃん、とっても美味しいよ?」
由香の妹系の可愛さはもう最強じゃないかって思う。
「お兄様、私、とーっても幸せです!」
ラブ度マックスの麻衣の依存度もまた悪くない。
そんなラブ兄ワールド全開の2人を見て、ピルッカは思わず、「いいなぁ」何て言ってしまったのだ。
「ねぇ?ピルッカ?あなたは使徒様ではないのだからハーレムなんて1万年早いわ!」
「1万年なんて、死んじゃってるよ……」
「その分、私がいるんだから、ね?」
「じゃあ、対抗戦が終わったら……」
「うん……」
2人は2人で猿になる約束をしたようだ。
そう言えば、セラフィーナは成人しているから、本当は……なんだけどやっぱり初めてはエルミ、だよね?
「そろそろ時間になりますので、ジュンイチ選手、ピルッカ選手、準備をお願いします」
1か国が居なくなったので順番が早いな。
ちなみに、クオピオ共和国とポルヴォー共和国は俺たちに剣を斬られた事もあり、次の試合は不戦敗だったようだ。
次の試合はミッケリ王国。
ドワーフの国だが、ここの代表が使う剣はブロードソードではなくグレートソードを使う。
ブロードソードは2キロあるかどうかという重さなのだが、彼らが使う剣は通常のグレートソードの重量である5キロを大きく超えるメガグレートソード、20キロもの重さがあるのだ。
彼らは自分が使う剣は自分の鍛治スキルで鍛え上げるのだそうが、使い方は斬るというより打ち付けるに近い。
普通のブロードソードであれば撃ち合うとポッキリ折れてしまうだろう。
そんなメガグレートソードを右肩に担ぎながら、150センチほどでずんぐりむっくりした体型のドワーフが2人並んで立っていた。
顔がそっくりで恐らく双子なのだろう。
「兄者、彼奴らの剣も折ってしまおうぞ!」
「弟よ、彼奴らの剣も折ってしまおうぞ!」
何だか、試合よりも剣を折る事に執着しているようだ。
そこは鍛治魂が剣の勝負に勝るのだろう。
俺とピルッカは相変わらず剣も持たずに突っ立っているだけ。
彼らは右肩に剣を背負って斜めに立ち「俺たちってカッコいいだろ?」って雰囲気を醸し出している。
試合開始という感じではないそんな4人を見て、審判はため息を吐きながら、
「えーっ、試合開始していいかな?いいよな?開始!」
次の瞬間、ドワーフ兄弟は体型に似合わずケルピー人化族並みの速度で間合いを潰し、メガグレートソードをブロードソードかのように軽々と撃ち下ろしてきた。
もちろん、俺たちはそれをミリで見切り躱してしまう。
彼らの剣はそのまま地面に叩きつけられ、大きく会場を抉る。
「すごいな。感心するよ」
地面に叩きつけられても曲がらない剣と身体強化なしでそれを軽々と扱う膂力を持つ彼らを素直に褒め称える。
鑑定しても彼らの剣はミスリルとかアダマンタイトといった希少金属ではなくただの鋼鉄製。
それを同じ初等部の生徒なのだから感嘆すべき事だろう。
「兄者、褒められているぞ」
「弟よ、褒められているぞ」
「「だが、手心は加えないのだ!旋風剣!!」」
ドワーフ兄弟はメガグレートソードを構え、斬り掛かってきた。
20キロもの剣を振り回せば、それだけで風が捲き起こる。
彼ら兄弟を風の渦が取り巻くように包み、そのまま突っ込んできた。
「ピルッカ、鳩尾が台風の目だ!」
「任せろ!」
俺とピルッカは剣を構えて、彼らの鳩尾に一閃、突きを入れる。
ガンッ
金属音が鳴り響くのと同時に彼らのメガグレートソードが吹き飛んだのだ。
彼らはそこに互いの顔を見つめて立ち尽くしていた。
「兄者……旋風剣が敗れた……」
「弟よ……旋風剣が敗れた……」
2人は吹き飛ばされた剣を取りに行き、剣を確認する。
グレートソードはひしゃげており、剣としては使い物にならないほどだった。
「兄者、剣も曲がった。ドワーフ魂が通じなかった」
「弟よ、剣も曲がった。ドワーフ魂が通じなかった」
言葉は悲壮な感じを醸し出してはいるが、彼らの顔はどこか晴々としており、俺とピルッカに向かい膝を突く。
「「ワシら兄弟の負けだ。後でその剣を見せてくれないか!」」
「剣か?良いぞ。試合が終わったら剣に付いて語り合おう!」
俺がそういうと、兄弟はニッカリと大輪のひまわりのような笑顔を向け、
「「約束だぞ!楽しみだ!たのしみだ!」」
そう言うと審判が勝敗を宣言する前に会場を下りようとしたので慌てて審判が「勝者、ユヴァスキャラ王国っ!」と宣言した。
そして、次の試合は本当で有ればミッケリ王国とヴァンター王国との対戦だったがドワーフ兄弟の剣が使い物にならなくなった事もあり、次の試合は休憩なくユヴァスキャラ王国と魔族のヴァンター王国との戦いとなった。
「連続の試合で大丈夫か?」
「問題ありません」
「大丈夫ですよ!」
審判が少し心配して尋ねてきたが、俺たちは全く問題ないので休憩を挟まずに連戦する事になった。
会場の中央には俺たちと魔族の2人。
1人はウルフに噛まれた少年ともう1人は太ももを噛まれた少女だ。
会場には剣を持たない4人が対峙していると言う、剣の勝負とは思えない光景が広がっている。
「構えなくて良いんだな?本当だな?それでは試合開始っ!」
魔族は流石魔人なだけあり、身体強化が上手い。
これでは魔法を使っているようには思えないだろう。
そんな俺らは相手が魔族という事もあり、事前に付与魔法で多重結界と身体強化を行っているのだから相手をとやかく言う権利はない。
魔人の少年少女は、魔人剣を構えて俺たちに突っ込んで来た。
先ずはお手並拝見といこうか、とピルッカと視線で伝えるとピルッカも首肯で応えた。
「「死ねっ!」」
随分と物騒な単語が彼らの口から発せられたので、意趣返しとして、
「狼が来ているぞ?」
と彼らに聞こえる程度の声で囁く。
その瞬間、彼らの体は引き攣り、身体をガクガクと震わせながらヒューヒュー喉から呼吸音を鳴らす。
恐怖のあまり身体が痙攣を始めたのだ。
「ジュンイチ、こいつらどうしたんだ?」
「いや、分からないなぁ」
ピルッカは何をしたのか分からないが、俺が何かをしたのだろうとあたりを付ける。
地面でビクンビクンと陸に上がった海老のように痙攣している2人を見た審判はそのまま、
「ヴァンター王国選手が試合不能のため、勝者、ユヴァスキャラ王国っ!」
と宣言する。
俺はどさくさに紛れて魔人剣をアイテムボックスに回収して複製してから戻しておいた。
そして、唯一の5戦5勝だった俺たちの優勝という事で、剣術部門を終えた。
その後、ドアーフ兄弟がやってきて、一晩中、鍛治について俺と3人で語り合い、ピルッカとエレオノーラは約束通り猿った夜を過ごすのだった。
エルミたち?
彼女らはジト目で俺の事を見ながら、明日の体術について話していた。
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