004 合成魔法
お読みくださり誠にありがとうございます。
「試してみるか、水魔法と火魔法の付与、これで水とお湯は出せる……」
この魔法陣に魔力を供給する方法として電池式のようなものを考えていたのだが、それだと蛇口に付けるには大きなものになってしまう。
そこで魔法陣を2層構造にして……もう一つはこの世界にある魔力を集めてもう一方に魔力を供給する魔法陣。
いわゆる合成魔法をキッチンの混合栓に付与してみる。
「よし、水を出してみようか……」
シングルレバーを上げると水が勢い良く流れる。
1分……5分……
「上手くいったか?後は明日になってもこの効果が失わなければ成功か」
俺は右手で拳を作りながら独言る。
やはり、建築関係で働いているから少しでも住み良い住宅にしたいからね。
この世界に来てから3日目の朝、建築現場は水浸しだった。
魔力供給が続き、水栓が破裂したようだ。
「あっちゃー……上手く行くと思ったんだけどな」
風魔法を使い室内を乾燥させ、キッチンを作り直す。
「今日は探検じゃなくて、合成魔法の研究だな」
今度は破裂しても良いように屋外での実験だ。
熊五郎とにゃん太には近づかないように注意して水栓をいくつか作る。
そして魔力供給の魔法陣を変えて付与しそれを放置する事にした。
1つは水道使用時に魔力を供給するタイプ、次に魔力残量を一定に保つタイプ、そして魔力を集積しながら一定量の魔力を蓄積し水道使用時に魔力が不足した分を供給するタイプだ。
これで使用テストを繰り返せばいいかな。
今朝はご飯とウサギ肉と芋類のスープ。
ホーンラビットのお肉を軽く炒め、芋類も皮を剥いて軽く塩揉みして一緒に炒める。
そして水を入れて煮込む。
ご飯は普通に炊いて熊五郎とにゃん太のためにホーンラビットの肉を焼いておく。
スープは調味料類に入れて置いたコンソメスープを入れる。
「さあ、できたぞ!熊五郎!にゃん太!ご飯だぞ!」
2匹の皿にはこんがり焼けたホーンラビットの肉。
これを食べやすいように切り分けて……コンソメスープを少しかける。
「じゃあ、いただきますっ!」
「がうっ!」
「なぁん!」
にゃん太があまりにも食事を早く食べたいらしく、鳴き声が変になっている。
いや、2匹とも昨日より大きくなっているようだが……まあいいか。
いつもは少しだけ塩を振る程度だが、今回は塩の代わりにコンソメスープ。
さて、食べっぷりは……
「がふがふがふが……」
「うなうなななな……」
食べるのに夢中で、鼻息が激しい食べっぷりだ。
そんな姿に癒されながら、俺もスープをいただく。
うん。
胃に優しくたっぷり食べられるスープだ。
最後はリゾット風にして、少しバターを入れて醤油を垂らす。
「あー、これに卵があれば最高なんだけどな……後で全マップ探査でもして探してみるか!」
リゾット風はこれはこれで激ウマで熊五郎とにゃん太に少し分けてみると凄い勢いで食べていた。
さて、俺は家の外に貼るサイディングでも作ろうかな。
サイディングはデザインもそうだけど、素材などにより断熱をあげたり何より防水機能を高めることもできる。
いろんな素材があるけど、今回は土魔法で薄めのレンガを精製して、それを積んでいく事にした。
サイディング外壁は建物にぶら下がっている感じなのでその躯体には重量が掛かってしまう。
ところがレンガ積みは土台に積み上げるので駆体には重量が掛からないのだ。
厚さ5センチほどのレンガを多数作り、そして太さ1センチほどの孔を中央に作ってそこに鉄筋を通す。
そして、セメントを塗って積み上げていくのだ。
こうすると駆体との間に通気層ができ建物も長く持つようになる。
所々、引っ張り金具を設置してレンガと駆体を結びつければ壁が崩れ落ちる事もなくなる。
そして最後に厚さ7センチの木製ドアを填めれば外見は完成だ!
「いやあ、見た目は悪くないんじゃない?」
そう自画自賛していたら、既に空は茜色に染まってきた。
いくら魔法を駆使したとしてもこれは結構時間の掛かる作業なのだ。
俺は晩飯の準備に取り掛かる事にし、今ある素材だと肉類は豊富だけど野菜類はほうれん草に似たものと芋類だ。
食材を増やさないと、食生活が貧しくなりそうだ。
そう悩んでいたら、一つ閃いた。
「そうだ、ニジマスご飯にしよう!」
ニジマスは7匹取り出して、1匹は頭、内臓、ヒレを取り、飯盒の中に2合のお米と調理酒と昆布だし、そしてニジマスを投入して炊いていく。
調理酒を入れると生臭さが解消するので覚えておきたいテクニックだ。
残りの6匹を焚き火で焼いていき、そのうち2匹は塩焼きだ。
それとグレートベア肉の表面を軽く焼いてからコンソメスープで煮ていく。
たっぷり煮ると歯茎でも潰せるくらいに柔らかくなる。
「うーん、良い匂いだっ!」
炊き上がったニジマスご飯を軽く掻き混ぜて茶碗によそって、ニジマスとグレートベアのスープも盛り付ける。
熊五郎には悪いが、俺が食べたいから許してくれっ!と思うが、熊五郎は首を軽く傾げてあざとい可愛さを演出する。
2匹にはお皿にニジマスの塩を振っていないものとグレートベアの肉を煮込んだものを500グラムにスープを少し掛けたものだ。
2匹は早く食べたくて俺の顔をじっと見つめている。
「よし!いただきますっ!」
そういうと俺たち1人と2匹は目の前の料理を一心不乱に胃の中に収めていく。
今回初めて作ったグレートベアのスープは肉も柔らかくて一気に食べる。
これだったらもっとたくさん肉を入れて作れば良かったよ……
食事が終わったら鍋や食器類を「収納」する。
「収納」すると自動で洗浄して生ゴミなども勝手に処理してくれるのでとっても便利だ。
俺は焚き火に薪を焚べて、実験の様子を確認しにいく。
「あー……、1つ破裂か」
水道使用時に魔力を供給するタイプが破損していた。
放置と付与魔法使用を繰り返していたら魔力消費前に魔力の補充が始まり、使用する度に魔力が溜まってしまい破裂を迎えたのだ。
「んー……、やっぱ、魔力を集積しながら一定量の魔力を蓄積し水道使用時に魔力が不足した分を供給するタイプだな」
実は、「魔力残量を一定に保つタイプ」は元の魔法陣に込められた魔力がなくなってから魔力の供給が始まるので、水流が不安定になったりお湯の温度が不安定になるのだ。
そこで淳弥は3番目の方式を採用して屋内外の水栓に魔法付与を行った。
同じ方式を使い、様々な魔法付与を行う。
例えば、照明や室内の温度、湿度の調節。
1日に1回の洗浄・浄化魔法の発動。
屋内外の自動修復に劣化防止、物理攻撃・魔法攻撃無効、状態異常無効、それに防虫・除虫魔法の常時発動を付与する。
そして、敷地を覆う結界にも同じく常時魔力供給を加えた。
「おー、これでかなり家らしくなったな。明日、室内に漆喰でも塗って家具でも置くとするか」
いったん外に出て寝袋を回収し、今日は家の中で寝ることにした。
すると、熊五郎とにゃん太も家の中で寝たいと甘えてきたので、2匹に洗浄魔法と虫取りを行ってから家の中に入れる。
今日はリビング予定の場所で寝ることにしよう。
すると熊五郎とにゃん太も寄り添ってきたので寝袋なしで2匹に包まれて寝ることにした。
「もふもふ、あったかいなぁ。寝袋よりも寝心地が良いかも」
最高の抱き枕を得た俺は、異世界に来て人生最高の寝具を得たのだった。
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