039 国別対抗戦5 ハルムスタッド戦
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5日目、6日目は予告通り、地獄の鬼ごっこ。
ピルッカとエレオノーラ、セラフィーナも森の中を自在に動けるようになり、6日目は流石に疲れてはいたが倒れ込むようなきとはなく普通に夕食を食べる事ができていた。
魔族たちはどうにか5日目の夕方に森を出る事ができ、無事に保護されたようだ。
そして俺たちは1週間の休学期間も終え学生寮へと戻る。
「無事に合宿から戻ってきました」
「ほう、みんな顔つきが変わったね。特にピルッカとエレオノーラは別人のようだよ。合宿はどんな事をしてきたんだね?」
セラフィーナが学園長のティニヤに報告をする。
タンペレ迷宮を踏破し、大陸中央の森の中でクゥアールやグレートベアと鬼ごっこをしていたとそのままの事を伝えたら、それにはティニヤは開いた口が塞がらなくなり、
「ふーっ……流石、ジュンイチだよ」
そう呟くと遠い目をしながら視線を窓の外に向けるのだった。
◇
そして、いよいよ初等部国別対抗戦の日がやってきた。
初日が剣術、2日目が体術で3日目が魔術による総当たり戦だ。
ユヴァスキャラ王国は初戦で同じエルフ族の国ハルムスタッド王国と戦い、獣人族の国クオピオ連合国、人族の国ポルヴォー共和国、ドワーフ族の国ミッケリ王国、そして魔族の国ヴァンター王国の順で戦って行くことになった。
これは剣術、体術、魔術による違いはない。
装備は各国の自由であり、原則、相手選手を戦闘不能にすれば勝利だ。
但し、剣術と体術は魔法の使用が禁じられ、これには身体強化魔法も含まれていた。
試合会場には特殊な付与が施され、耐衝撃に耐魔法が施されていたので余程のことがなければ会場が破壊されて観客に危険が及ぶ事はないのだ。
各国の選手やサポート、学園長などは転移ゲートを使いユヴァスキャラ王国に来ていた。
2万人は入る会場が満席で9割近くが……相手国の応援団だ。
何せユヴァスキャラ王国の戦績が悪く、応援しようという人がどんどん減ってしまったのだ。
「どうせ今回も最下位なんだろ?」
「まあ親戚が出るから一応応援するけど」
「あのエルミ様が出るんだ。今年も試合を捨てたようなものだろうな」
下馬評としても最下位で、ホームな筈が完全にアウエーのような試合になる事が予想される。
そんな事を思いながら、俺とピルッカは試合会場へと向かう。
そこには俺たちを含む6か国の代表選手が揃っており、開催国という事で選手宣誓を行う。
「主神オーヴァージェンに誓い正々堂々と戦います!」
俺の宣誓に多くの者が驚いた。
何せ6か国の中でオーヴァージェンを祀らない国としてヴァンター王国が知られていたが、ヴァンター王国と双璧を形成するほどオーヴァージェンを祀らない国としてユヴァスキャラ王国が知られていた。
その国の代表がオーヴァージェンに誓った、と言うので驚きの声が方々から聞こえたのだ。
「さあ、第1試合だ。ピルッカ、頑張ろうな」
「ああ。奴らの度肝を抜いてやろう!」
開会式を終え、俺たちは第1試合でハルムスタッド王国の選手と対峙する。
ユヴァスキャラ王国の兄弟国で同じエルフ族の国。
相手選手の闘志は並々ならぬものを感じさせる。
「おう、宜しくな」
「まあ俺たちが負ける事はないがな」
ハルムスタッド王国の選手が試合会場の中央で話しかけてくる。
相手はアダマンタイト鋼のプレートアーマーに同じくアダマンタイト鋼のブロードソードだ。
一般で手に入る装備としてこれ以上はそうは望めないだろう。
「俺たちは普段どうりだな?」
「そうだな」
俺とピルッカは試合会場に入っていると言うのに鎧どころか剣すら装備していなかった。
「ふん、最弱国は剣すら買えないのか」
そんな事を呟きながら勝ちを確信している顔をしていた。
「始め!」
審判の声と同時に、ハルムスタッドの選手が一気に距離を詰め斬り掛かってくるのだが……
「トロいな」
「ふあぁ……ああ欠伸が出ているよ」
只管斬り掛かってくる剣先は最小限の動きだけで全て躱してしまう。
観客席からだと俺たちが動いているようには見えないだろう。
「くそっ、何故、剣が届かん!」
「もっと早く撃ち込めばっ!」
彼らは、スキルをフルに使用して斬りかかるがどれも俺たちには届かず、全て躱していく。
剣の重量は2キロほど。
プレートアーマーは20キロを超える。
そんな装備をしながら2キロの重さのある剣を全力で振り回していれば5分もしないうちにバテてしまう。
案の定、2人は肩で息をしながら剣先も下を向いてしまっていた。
「それじゃあ、こちらも装備を身に付けようか?」
「そうだな。そうじゃないと体術の試合になってしまうしな」
俺とピルッカはそう言うと神力鎧と神力剣を装備する。
この装備は常時装着状態であり、願う事で顕現状態となる。
俺たちは剣を構えて軽く一閃すると、彼らの剣は斬り落とされ鎧は斬り裂かれてしまい、これで勝敗を決してしまうのだった。
「勝者、ユヴァスキャラ王国!」
審判の宣言を聞き、俺たちは審判に1礼をし、観客席のユヴァスキャラ王族の座っている方向へも一礼をし会場を後にした。
「全く疲れなかったな」
「ウォーミングアップにすらならなかったよな」
そんな事を話していたらハルムスタッドの連中が近寄ってきた。
「お前ら、魔法を使ったルール違反をしただろ!」
「卑怯者め!」
負け犬の遠吠えの如く俺たちを罵ってきたのだが。
審判が問題ないと判断したのだ。
俺たちは彼らを無視して控室に戻ろうとしたが、その道を塞いで立ちはだかった。
しかも、彼らは教師たちと一緒に4人が剣を握っていた。
警備員がその様子を見て止めに来たのだが、剣術の教師が相当の装備をしていれば警備員が止められる筈がない。
「よくも恥をかかせたな!死ね!」
俺とピルッカに4本の剣が襲いかかってきたのだが、俺たちは左右の人差し指と中指でその剣を挟み、そのままへし折ったのだ。
「ば、バケモノっ!!」
彼らは剣を捨て逃げようとしたがそのまま俺たちに無力化され、応援に来た警備員に引き渡され、そのまま失格となったのだった。
控室に戻ると、エルミが俺に、エレオノーラがピルッカに抱きついて来た。
由香と麻衣、そしてセラフィーナも俺に抱きつく。
「初戦勝利おめでとう!」
エルミの言葉を皮切りに女性陣は俺とピルッカの勝利を讃えてくれた。
「まあ、相手はハルムスタッドだからな。試合後にまさかの襲撃があって、彼らは失格になったよ」
「返り討ちにしてやったし、襲撃なんてしたら犯罪者扱いとなって裁かれるんだけどな」
「次はクオピオ連合国か。見た感じ、彪人属とケルピーだな」
「ケルピーか……人化できるからな。少し手強いかもな」
そんな話しピルッカとしていたら、次の試合が始まると呼びに来たのだ。
ハルムスタッドが失格となり試合が減った関係で全体的に試合時間が前倒しになったのだ。
「ジュンイチ、頑張ってね」
「ピルッカも頑張って」
「ダーリン、優勝したら……ご褒美を用意しておくわね」
「お兄ちゃん!応援してる!」
「お兄様なら寝ていても勝てますわ!」
そんな声援を背に受け、俺たちは再び試合会場へと向かうのだった。
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