031 ドラゴン肉
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5階層へと転位したらもう6階層へは行けなくなっていた。
俺自身は20階層へと自在に転移できるので、もう、他のひとは20階層まで行くことはできないだろう。
特に今回は学生の実習という事もあり、他の冒険者や採取者は入っていなかった。
それ故に5階層は自分たちだけ、ではなかった。
そこにはセラフィーナがソロで5階層に来ていたのだ。
「ダ〜リ〜〜〜〜ンッ!!」
セラフィーナが走って淳一のところにやってきた。
イモムシ、ダンゴムシ、ナメクジ、ゴキブリをたった1人で斃してきたのだろう。
装備は傷み、彼女の身体も傷だらけだった。
「セラフィーナ、大丈夫か?「治癒」」
セラフィーナの身体にあった傷は全て癒される。
淳一に癒されてようやく落ち着いたのか、
「もう、ダーリンったら、どこ行ってたの?」
「えっ……迷宮踏破だよ?」
「なんで疑問に対して疑問形で答えるの!……って、迷宮踏破!?」
「迷宮踏破して迷宮核を破壊したら6階層から先は埋まってしまったんだよね。そして5階層に強制転移されたんだ」
「だから、6階層への階段がなくなっていたんだ……で、その美少女やら美女はどちら様なのかなぁっ?」
セラフィーナの殺気に、由香と麻衣が一瞬たじろぐ。
「この子たちは俺の眷属だよ。階層主だったオーガカイザーの由香とエルダードラゴンの麻衣」
由香と麻衣はセラフィーナの前に立ち、
「15階層主だった由香だよ」
「20階層主でした麻衣です。初めまして」
2人の挨拶の内容に驚くが、礼儀として2人にも自己紹介をする。
「本当に踏破したのね。宜しく。私はダーリンのフィアンセ、セラフィーナよ」
自己紹介を済ませ、今の時間なら1階層に戻るのはギリギリだが生徒たちが多い2階層か3階層に戻らないか、とセラフィーナが提案してきた。
「いや、そんな事をしたらちょっとした秘密がバレちゃうから……転移!」
セラフィーナを伴い6階層の拠点へと転位した。
まさか淳一が転移できるのとは思ってもみなかったのだが、それ以上に迷宮内に家がある事にもセラフィーナは驚く。
「これってダーリンが……作ったの?」
「そうだよ。俺は元々、建築が専門みたいなものだからね」
「そうなんだ……そう言えばダーリンは試験の時、ボクって言っていなかった?」
「ん?試験の時はやっぱり、ね」
エルミたちはセラフィーナの質問攻めに全く付け入る隙を見出せずに、7人いると言うのにまるで2人しかいないような感じでマシンガントークが続いていた。
ようやく話も落ち着き、6階層の拠点の拡充を始める。
部屋は4部屋しかなかったので、セラフィーナと由香&麻衣の2部屋を追加して、お風呂を男風呂と女風呂にして浴室を大きく、そしてトイレも4か所に増やした。
リビングも8人同時に座れるように部屋を拡大してからソファーも追加。
ダイニングも同様に8人掛けに作り替えた。
「こんなものかな?エルミ、何を食べたい?」
増改築と改装も終わり、食事の準備をしようとリクエストがないか尋ねた。
すると、今まで淳一と話せなかったエルミは食欲も手伝い、
「はいはいはい!今日はドラゴンステーキ1択でしょ!」
まっ先にリクエストを出したのだ。
これにピルッカたちも賛同して、
「賛成!俺もそれを食べたい!」
「私もそれでお願いします!」
「お兄ちゃん!私も!」
「お兄様。それが至高かと」
と答えたのだが、
「ねえ、ドラゴンステーキってそんな高級食材、滅多に手に入らないのよ?」
セラフィーナの言葉に、エルミたちは顔を互いに見合わせて、
「20階層の階層主を斃した事になったから、エルダードラゴン肉をドロップしたのよ」
「それってどれくらいの量があるの?」
エルミの答えに再び質問を投げかける。
それには淳一が答えた。
「20キロですから、全員が十分に食べられますよ」
「でも……エルダードラゴンの肉なら100グラム金貨10枚くらいで買い取って貰えるわよ。それでも食べるの?」
買取はおよそ売値の半額くらいなので、およそ金貨20枚で売られている事になる。
そんな高級食材をステーキだなんて、セラフィーナも食べたいに決まっている!
「良いですよ。しっかりと味わって食べましょう!」
本当はアイテムボックス内で調理するのが手軽なのだが、折角なので鉄板焼き用の鉄板などを食卓に付けて、焼き上げる事に。
ドラゴン肉を1人500グラム、伊勢海老の腹肉を1人500グラム、他にニンニクスライス、エリンギ、サツマイモ、かぼちゃなどを用意する。
そして熱した鉄板に油をひき、ドラゴン肉に塩胡椒を振ってから焼き上げる。
適当に焼けたらひっくり返してブランデーをかけてフランベをして鉄製の蓋を被せる。
「「「「「「うわっ!」」」」」」
燃え上がる炎に驚きながらも手際良く調理していく様にエルミたちは感動をする。
焼き上がる前に野菜も炒めて、それと一緒にドラゴン肉をお皿に盛り付けた。
「うーん!この香り、最高!……ジュンイチは一緒に食べないの?」
ピルッカたちは出されたらすかさず箸が伸びたのだが、ピルッカは淳一に配慮を示したのだ。
ああ。俺の分も一緒に焼いているから食べながら作るよ。
俺はそういうとき伊勢海老を焼き始めた。
バターと醤油を使って焼き、最後にフランベ。
ふっくらと焼き上がった伊勢海老の腹肉を1口大に切ってお皿に盛り付けていく。
「ジュンイチ!美味しいよ!」
「俺も料理ができれば…モグモグ…代わりに作るのに!」
「ジュンイチ様にばかり作らせてしまって……申し訳ありません!モグモグ」
「ダーリンがこんなに料理上手だとは……んー幸せ!」
「お兄ちゃん!美味しいよ!」
「お兄様。絶妙な火加減といい味付けといい、幸せです!」
彼らが美味しそうに食べている間に、最後はガーリックライスだ。
ニンニクスライスを油で炒め、十分に炒めることができたら、余計な油を取り除いておく。
コカトリスのスクランブルエッグも作っておく。
土鍋ご飯とニンニクを一緒に炒め、それにスクランブルエッグを加え、胡椒と醤油、そして刻み分葱に青じそと白胡麻を加えて仕上げに軽く炒めて出来上がりだ。
それをお茶碗によそう。
ニンニクの暴力的ともいえる香りが彼の鼻腔を刺激して、ガーリックライスも好評のうちに食べ尽くした。
最後に剥いた梨を食べて食事を終える。
「ドラゴン肉、最強ですね!」
「俺は伊勢海老の腹肉も捨てがたい!」
「最後に出たガーリックライス、忘れられない味だわ!」
「お兄ちゃんが作ってくれるなら何でも最強です!」
「お兄様、私はこんな食事ができて幸せです!」
「今日の食事だけで1か月分の給与が消え去っちゃうわ!」
梨を突きながら、明日について話し合う事にした。
何せ明日、ようやく4日目になるのだ。
セラフィーナは一教師として、先に実習を終えさせる事はできないのだ。
「セラフィーナ。それでは俺たち4人で職業ギルドに登録に行くと言うのはどうかな?」
「そうね。初級部でもギルド登録はできるから……そうね。私が引率してギルドに行きましょうか!」
「「「やったー!ギルドに行けるぞ!!」」」
エルミ、ピルッカそしてエレオノーラは飛んで喜んだ。
何せ、この国では職業ギルド登録は大人への第1歩になるのだ。
明日は王都職業ギルドに討伐部位や魔核、そしてドロップ品を持っていく事になったのだった。
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